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安田善次郎 果報は練って待て

書名:安田善次郎 果報は練って待て
著者:由井 常彦
発行所:ミネルヴァ書房
発行年月日:2010/9/10
ページ:368頁
定価:3000円+税

1969年全学連が立てこもる東大安田講堂で一躍有名になった。安田講堂を寄付した人という位しか興味がなかった安田善次郎の伝記です。明治期の大実業家安田善次郎の生涯を膨大な日記、手控を詳細にに分析して彼の足取りを克明に描いている。

明治期の実業家として渋沢栄一、大倉喜一郎、浅野総一郎など数々いますが、安田善次郎も殆ど明治政府と密接な関係をもって今だったらインサイダー取引のような政府情報、政府資金、人材を投入して自分の事業(本人はそう思っていなかったかも)を拡大していくそんな姿が見えてきます。西洋の国々追いつけ、富国強兵のためには官も民も一体になって突き進んでいった。そんな中で実業家、銀行家として活躍した安田善次郎です。

本人の才能もあったでしょうけれど運も大きく、その時代に生まれたことがこんな人を作った。そんな感じもします。仕事、一族のことには熱心、従業員は手足、どんどん辞めていく。人を育てることは下手な人、自分で何でも出来るから人に任せられないそんな場面が色々出てきます。今ならブラック企業の代表でしょう。

金融・経済界に君臨して銀行王として大成した一方、跡継ぎには恵まれず,晩年は暗殺されるという不幸な生涯。栄花盛衰を地でいくような生涯です。

安田善次郎(一八三八~一九二一)実業家・銀行家。日本橋の両替店「安田屋」から金融業を成長させ、一代で安田財閥を築いた安田善次郎。金融・経済界の発展だけでなく、東京大学安田講堂の寄贈など社会事業にも貢献した銀行王の知られざる生涯を、厖大な日記・手控を駆使し克明に描き出す。