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本に出会う

華の碑文 世阿弥元清

書名:華の碑文 世阿弥元清
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1997/4/7
定価:3600円+税

足利義満、義持、義教ら歴代の将軍に深く関わりつつ生きた観世家、観阿弥、世阿弥が能を完成させていく過程と室町幕府の不安定な政治情勢、細川、赤松氏などの台頭、南朝と北朝の統一。そんな中を生きた世阿弥。弟元重の言葉を借りて物語は進む。芸は人につくものその人が亡くなってしまうと芸も継承されない。しかし世阿弥は100年、500年先にも残る能を目指した。元重の息子は才能のない凡人。でも凡人でも努力を怠らないならば世阿弥の能は引き継げると。才能のないもは継続のみ才能のあるものはそれぞれ工夫する。そして永遠に能を続けていけるエッセンスを残した。観阿弥の母は楠木氏(楠木正成)の出。世阿弥にも楠木の血が流れている。でもここに出て来る楠木の子孫は南朝方から北朝方の裏切って、また南朝方にと右往左往するちょっと恰好の悪い登場の仕方。観阿弥、世阿弥にとって迷惑な親戚という役どころになっている

秘すれば花、秘さらざれば花にあらず「風姿花伝」世阿彌

書名:終焉
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1997/10/7
定価:3600円+税

60才になってから、大岡越前の推薦で石見の銀山の代官として赴任する井戸平左衛門。前任者が不祥事を起こしてその改め役として老骨にむち打って、饑饉に立ち向かう。領民のことを一番に考えて行動する。赴任中に跡継ぎの息子の死。体には癌腫に冒されながら、3年つづきの饑饉、ようやく今年は稲が実ったところに蝗の大群、一瞬にして饑饉。そこで御倉米を井戸平左衛門の独断で放出してしまう。その後自決。そこで物語は終わる。テレビでは大抵代官というと悪徳商人と結託して領民を苦しめるのが相場。でも実際は当時の日本人はもっと真面目で井戸平左衛門のような人はいろいろなところに居たのでしょうね。