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本に出会う

等伯

書名:等伯(上)
著者:安部 龍太郎
発行所:日本経済新聞社
発行年月日:2012/9/14
ページ:350頁
定価:1600円+税

書名:等伯(下)
著者:安部 龍太郎
発行所:日本経済新聞社
発行年月日:2012/9/14
ページ:369頁
定価:1600円+税

能登七尾出身の絵仏師長谷川信春(等伯)の生涯を描いた作者の第148回直木賞受賞!、現時点での最高傑作!武家から商人(紺染め、絵仏師)へ養子に出された信春、養父母が亡くなってから、妻と子供を連れて絵を極めるために都へ出て行く。時代は戦国時代の世、様々な悲劇、身近な者の死、いろいろな障害に遭いながらひたすら絵に打ち込む。どんなめにあっても真実を見るのが絵師。

あらゆる苦悩の中から自分の絵に到達する。「松林図屏風」を生み出した。法華宗を信じながら大徳寺の和尚との禅問答、「何故、生きることはこんなにも苦しいのか」を地でいくような内容、能登、敦賀など北陸の祭り、現地に何回も足を運んで取材しながら等伯という人を少しでも深く理解しようとしている。
京都東山七条にある知積院には長谷川等伯親子の作品がある。狩野派とは違った画風、狩野派は永徳の後も探幽など後に続く人達を育てているが、1人傑出した天才の長谷川等伯はその後に続く人には恵まれなかった。だから余計目立って突出していた才能だったのだろう。
この小説には当時の有名な人々、武家、公家、僧侶(特に法華経)、茶人などが次々と登場してくる。これも作品に彩りを添えている。面白く読んだ。今年の1月東京江戸博物館で、女優野際陽子、加賀屋の社長、安部 龍太郎の講演でこの等伯の生まれた北陸(加賀、能登)を語っていた。そんな話も作品を読みながら風景を思い描いていた。