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本に出会う

平家

書名:平家(上)
著者:池宮 彰一郞
発行所: 角川書店
発行年月日:2002/11/30
ページ:394頁
定価:1800 円+税

書名:平家(中)
著者:池宮 彰一郞
発行所: 角川書店
発行年月日:2002/11/30
ページ:383頁
定価:1800 円+税

書名:平家(下)
著者:池宮 彰一郞
発行所: 角川書店
発行年月日:2002/11/30
ページ:384頁
定価:1800 円+税

平清盛と後白河法皇が主役、あまりにも先が見えすぎた傑出したリーダー平清盛、平家一門の者、子孫達も理解出来ない孤高の人、そんな清盛を一番良く理解していたのが後白河法皇という。ちょっと意外な視点。平安末期律令国家も藤原氏一族の支配よる体制に制度疲労が蔓延し、ガチガチに凝り固まった制度運用、荘園支配が確立し、税も貴族、藤原氏に集まり、国家財政は極貧になって天皇、上皇の采配の余地は殆どなくなっている。

それを院政で何とか変えようとした後白河以前の天皇、上皇でも藤原氏の支配は変わらない。そこに登場した清盛は院政を確立、そして藤原貴族から平氏一門へと官僚を順次入れ替えていく。でも清盛の意図は誰も理解しない。南宋との貿易、工人、技術の導入を図り、国を豊にすることを意図した清盛、それも国家事業とせず平家の事業とする。

官に任せるととんでもないことになると。奈良・京都の仏教、神社勢力から離れる為に厳島神社を平家の鎮守として後白河法皇の御幸を請う。変化を良しとしない既存勢力からの隔離の為の福原遷都、目指すところは壮大で、誰もが考えもつかなかった理想郷を早急に求めた清盛、でもそれは早急すぎた、だれもついてくる者がいなかった。後継者の育成も出来なかった。そしてこの小説ではその後継者を義経に求める。それも後白河法皇も清盛の意志を継いで義経の支援もする。しかし歴史は思い通りには動かなかった。

おごる平家は久しからず、とか極悪人清盛とかとかく悪評の多い平家、清盛、これは次代の鎌倉政権、藤原氏九条兼実などがとかく全て悪い話ばかりをでっち上げた。歴史の一般論、前世の政権、人物は全て悪の方程式。しかし本当は最初の武家政権を作ったのは頼朝ではなく、清盛。また辺鄙な都としては適地ではない鎌倉という東の果ての狭い狭い場所に幕府を作った頼朝という嫉妬深い、自分より能力在る者は絶対許さない、偏狭な性格の人物に何故か、次の政権が行ってしまった。清盛の国家、民を思う壮大さとは全く違う。源氏一族すら纏めることが出来ず、北条に乗っ取られてしまう。諸行無常とは平家だけではなく、源氏にもどうようのこと。歴史とは面白いもの。

新聞連載小説ということで、繰り返し人物、事件など説明が重複して出てくる。ちょっとうっとうしい感じもする。また物語の場面、場面で吉川英治の「新平家物語」と同様なシーンが出てくる。勿論流れは違うが。また現代の政治、世相を取り込んで作者の皮肉、愚痴が所々に出てくる。これも善し悪しか。

本書より
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「人ノ食ヲ食セシ者ハ人ノ事ニ死ス」
人から食を分け与えられた者、その人のために死すべきである。

「人は働いて報酬を得る。当たり前の事だ。だがな、それは在野の言う言葉だ。公の仕事、即ち官の仕事に携わる官人、官僚は違うのだ。」
「よく考えてみよ。官は物を造らぬ。人の衣食住に法を以て制限するが、それらを一片たりとも生み出すことはない。彼らが職の代償として得るものは、在野の人が稼ぎ出す職の一部を食の一部を分かち納めた税なのだ。それを考えたことがあるか」

「よいか、税を納むるは、国民(くにたみ)の義務だと言う。確かに義務である。税収なければ国は成り立たぬ。・・・だがな、喜んで納めると思うなよ。割り当てられる税の半分、四半分でもあれば、妻や子に衣服を購ってやりたい。疲れ休めに酒の一杯も欲しいと思うのが人の情けである。それで言うのだ。人の食を分けられた者は、その国民(くにたみ)のために死すべきである、とな」

「報酬の無い仕事は奴隷の仕事だ」