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ジャニー・ボーイ

書名:ジャニー・ボーイ
著者:高橋 克彦
発行所:朝日新聞出版
発行年月日:2013/11/30
ページ:321頁
定価:1800 円+税

「日本奥地紀行」イザベラ・バード、イギリスの女性探検家が明治11年日光から新潟、そして北海道の旅に同行することになった伊藤鶴吉。大久保利通暗殺事件の余韻も冷めやらぬ時期、岸田吟香の紹介でイザベラ・バード女史と出会う。英語が堪能で上野精養軒で通訳をしていた。女史は日光から新潟に、そして北海道旅行を企画していた。その通訳を探していた。イザベラ・バードの通訳として2人で日光、新潟の旅にでる。その模様を描いている。伊藤は岸田吟香、外務省から通訳兼護衛の密命を帯びていた。真実の日本の姿を見聞するために、好奇心旺盛なバードの自由奔放の振る舞いに時には厳しく、時には優しく接しながら二人の息も合ってくる。

当時の日本には武家政治が崩壊したばかり、新政府に反感を持つ者も多く、反政府勢力の魔手も迫る。英国女性に何かがあったら、政府の威信は丸つぶれ、伊藤を助けるために政府からも援助の手が差しのべられる。でもイザベラ・バードには全く内緒、そんな2人の冒険を描いている。なかなか面白い。イザベラ・バードは真の日本の姿を見るためには東京、横浜なんかでは判らない。田舎の貧しい人々に本当の姿が見えるといってはばからない。「ふんどしと腰巻き」姿の人々に本当が見える。日本の親たちは子供達をわけもなく可愛がる。こども大切にするのは将来に希望があるから、将来が暗い国では子供達を大切にしない。(できない)、今で精一杯。明治の頃の日本の将来は明るいとみていたようだ。

「日本奥地紀行」が辿った過程を描いている。「日本奥地紀行」も読んでみたい気がする。通訳の伊藤とイザベラ・バードの誤解と偏見に基づいた視点の違い、そして行き違いによる議論、なかなか面白い。