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光琳ひと紋様

書名:光琳ひと紋様
著者:高任 和夫
発行所:潮出版社
発行年月日:2012/11/5
ページ:278頁
定価:1500 円+税

『燕子花図』『紅白梅図』など絢爛豪華な作品を世に出した尾形光琳、意外と知らなかった生涯を描いている。商家の次男、莫大な父の遺産を食いつぶし、放蕩の限りをつくす光琳、その弟は兄とは全く違って真面目で、堅物、学問にも秀でた尾形乾山。この二人を対比させながら描いている。時は武士の世から商人が活躍する時代へ。いつも食べていくためのお金に困りながら、放蕩を繰り返す光琳、でも美の世界に取り付かれた絵師。

お金のために絵を描いて世過ぎをしようとするが、そんなときは気に入った絵が描けない。無心の中で素晴らしい美しい絵が描ける。狩野派全盛時代、狩野派のまねをしてみるが、何処かしっくりしない。師と仰いだ俵屋宗達の絵に魅せられていく。光琳を一言で言えば「女子(おなご)に淫し、絵に淫す」どちらも生涯やめることが出来なかった。俗物にして天才絵師・尾形光琳。非常に人間くさい光琳、また日々の暮らしの中でお金に困っている姿、女に悩む姿など光琳の絵からはうかがい知れないことを描き出している。なかなかの力作です。