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朱の丸御用船

書名:朱の丸御用船
著者:吉村 昭
発行所:文藝春秋
発行年月日:1997/6/25
ページ:205頁
定価:1238 円+税

天保元年(1830年)志摩半島の大王崎・波切村沖で幕府の御用米を積んだ千石船が難破した。翌日、波切村の漁師が漂流する御用船を見つけて、積み荷の御用米を村総出で隠匿した。波切騒動(なきりそうどう)と言われる事件を元にした長編小説です。

潮岬、大王崎は複雑な海岸線と岩礁、強い季節、黒潮の早い潮流などで海難事故が絶え間なく起こっていた。海の難所。この御用船の船長は御用米を停泊する港で、買い手を見つけて売りさばき、その後、嵐の中船出して、適当なところで遭難に見せかけて逃げた。その船に積んでいた御用米を隠匿した村人たち、どちらも悪です。ある役人の勘によって事件の全容が解明されていく。実際の事件にひとりの漁師を主人公にして物語として読み応えのある小説になっています。