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五瓣の椿 山彦乙女 山本周五郎長編小説全集13巻

書名:五瓣の椿 山彦乙女 山本周五郎長編小説全集13巻
著者:山本周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/3/25
ページ:571頁
定価:1800 円+税}

「五瓣の椿」「山彦乙女」の2作品が収録されている。「五瓣の椿」は
日本橋の薬種屋「むさし屋」の一人娘、おしのは父喜兵衛が、妻のそのに死ぬまでに一言言いたかった。といって死んだ。その後父とは全く血縁がなくて、母そのの不倫で生まれたことを知る。父の無念さを悟ったおしのが、淫乱の母と男たちを「御法では罰することが出来ない罪」を自らの手で裁いていく決意をする。男との刺殺死体が発見される。その枕元には赤い山椿の花びらが一枚落ちていた。若い娘が一途に思い詰めた「罪と罰」。

「山彦乙女」は綱吉、柳沢吉保の時代。武田家の再興を目指す娘登世、その妹花世、そうした時代の動きには頓着しないで、出世や権力より人間らしい生きかたを求める安倍半之助を対称とした作品。旧武田家の財宝、隠し財産などを巡って冒険小説的な面もある。

山本周五郎の作品は「人間はみんな生きることが下手だ。どんなに幸せそうに生きていても、生きることが下手だ。生まれてから死ぬまで、誰もが下手で、下手なまま生きてゆくのだ。」という不細工な生き方を頑なに守り続けている人々を影から応援しているような作風です。