「市民参加と社会活動」の研究


                                      Tony Laszlo
グループ参加者:野水、嶋木、飯牟礼

●「世界の人口移動と新の社会凝集」

人間界においての経済問題が中心に論じられた80年代の国際会議と対照的に、近年の
会議では国家、都市や共同体に区切られている人間そのものが大きくとりあげられてい
る。その代表的なテーマとして、1995年国連世界社会開発サミット、1996年国
連ハビタット II、1997年欧州都市と地域のサミット、1997年第二国際都市会
議などで議論されてきた「社会凝集(social cohesion)」があげられる。

たとえば、国連政策調整・持続可能な開発局(DPCSD)の「発展のためのアジェンダ」
という1996のワーキング・グループでは「多様性を認識し、大事にしながら社会凝
集を養うこと」の重要性が強調された上で、「あらゆる人権と基本的自由の尊重、差別
撤廃、すべての人民の参加と機会の平等」が促進されてきた。

同じように、「ハビタット目標および原則」(1996)は「市民的意識、市民参加の
激励、すべての人民の決定過程への参加」などの重要性を訴えながら、社会の中の「す
べての人民、家族、コミュニティとの間の協力が社会凝集の基本である」と提言してき
た。

各社会では、そこのすべての人民が構成員として扱わなければならないというのが「社
会凝集」議論の重要な点である。

「なぜ今?」

国際会議の拠点をこのテーマに変えたのは何か。それは、グローバリゼーションに伴う
世界各地の人間移動と多国籍化である。戦争や迫害を理由に「強制移動難民??」とな
り、国籍国を離れて暮らしている人の数が1996年で5千万人へと昇った。よりよい
生活を手に入れたい、身内と一緒に暮らしたい等、その他の理由で国籍国外に暮らして
いる人はさらに、約1億人がいる(生地主義を導入していない国に生まれ、国籍を住む
国家と異にしたり、無国籍者となったりする人もこの数の中に入る)。強制移動とその
でない移動という、この二つのグループを合わせて計算すると、世界中で約40人に一
人がいわゆる「外国人住民」であることがわかる(Oakley、1996)。これは10年
前の○%の増加である。
「人間はなぜ動くのか」という従来の問の代わりに「動かない人は果たしてどうして動
かないのだろうか」と、逆説的な議論(Hammar、1997)が登場するの無理はなく、
むしろ自然のことである。

「民族国家に含まれた神話」

国境を越えた人間移動は新しいことではないとは言え、これほど政治・経済に影響及ぼ
す、瀰漫としたものはかつてなかった(CastlesとMiller、 1993)。この課題が国
際会議に登場するようになったわけはそこにある。人間移動とそれによって作られてき
た世界各地の多国籍社会は、民族国家パラダイムの抱えている問題を強調し、無視でき
ない存在にしている。

概念上では、民族国家は単一の社会的、文化的そして政治的な統一体で、その文化、政
治的国境や機構、そしてその構成員の総合的アイデンティティーが彼ら一人ひとりの姿
を表している。(Anderson 1983)。

民族国家の発想では、社会の構成員は皆、「国民」である。構成員との間の「社会凝集
」はテルニンの「ゲマインシャフト」やデュルクハイムの「物理的団結」に表されてい
る。つまり、その国民は感覚、経験、アイデンティティー、精神的コミットメント、価
値観などを共通し、頻繁にかつ物理的に顔を合わせるものである(Vertovec、1997
)。

しかし、多数派と異なる、独自の言葉、習慣や歴史を持った前記にて定義された「国民
」でない人がどこの民族国家にも存在する。すなわち、民族国家という概念自体にはそ
もそも、神話が込まれており、想像上のものに過ぎない。(CastlesとSpoonley、19
97)。

今まで、「構成員=国民」という概念を維持するために、それぞれの民族国家が社会内
に居住する少数民族や外国人住民を社会の構成員でない者として扱ったり、あるいは彼
らを(少なくとも形上)統一体と同じ素質を持つ者として同化させようとしたりしてき
た。

しかし、民族国家の概念が持つこの神話がとうとう無視できなくなってきた。今、それ
をさらけだしているものが二つある。一つは、まさに外国人住民の急増である。もう一
つは、国連をはじめ、多くの国を連結させている国際組織と「普遍的な人権」」を唱え
ている国際協定である(Soysal、1994)。

各国家は、国民だけでなく、すべての人民が人権を持つ社会の構成員であること
を認めざるをえなくなってきた。そして、彼らを含む「新の社会凝集」が要求さ
れている。

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民、民、民

●外国人住民の構成員としての立場を考える前に、日本においての
「人」の分離を確認する必要がある。

まず、住民、市民、国民と人民の定義を確認したい。

住民 = 特定の地域に住所を有する者及び法人 。
地方公共団体(自治体)の主権を所有する者
(地方自治法を参照)

市民 = 国際法では「特定の地域において、政治に
参加できる者」 (日本では法的用語にはなっていない)

国民 =特定の国家の国籍を所有する者

人民 =国際法では「特定の地域にいる者」(日本では
法的用語にはなっていない)

●人の分離において、誤解されやすい点

1)
*市民はただ、「市」に住む住民である

村民、町民、県民と並んで、○○市の住民に当たる者が「市民」と
呼ばれている。この場合の「市民」は前記に定義されている
「市民」とは別もので、住民を意味する。


2)
*住民は「自治体のサービスを受ける者」で市民は「積極的に市政などに参加する者」である。


数多くの自治体職員がこのような考え方を持っているようである。その大きな原因は
自治体役所で参考にされている書物とそれをもとにした指導だと思われる。


3)
*国民は必ず市民である

国籍を所有しても、政治に参加できるとは限らない。実例として、米国のサモア属領に生まれた者が
あげられる。彼らは国籍が与えられているが、市民ではないとされている。


4)
*市民は必ず国民である

国籍を所有してない者も市民になっている場合がある。実例として、スウェーデンや
デンマークにおいての外国人住民があげられる。彼らは地方参政権が与えられているので、
国籍を持たない市民となっている。

さらに、EU市民という存在が著しい例である。EU諸国のどれかの国籍を持っている者は
その他のEU諸国においての地方参政権を与えられている。

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            ○○市市民提案条例(案)      野水 清隆

 (目的)
第1条 この条例は、本市の政策に関する市民の提案権を確立し、その提案に
 ついてなんびとも参加できる検討の機会を保証することにより、市民の意思
 と創意に基づく政策形成の推進を図り、もって市民自治の進展に資すること
 を目的とする。

 (定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各
 号に定めるところによる。
 (1) 政策 本市が予算を支出し、又は職員に業務を処理させることができる
  事務又は事業をいう。
 (2) 市民 次に掲げる者をいう。
  ア 本市の区域内に住所を有する自然人及び法人(次のイにおいて「住民」
   という。)
  イ 住民を構成員に含む任意の団体及び集団
 (3) 担当機関 この条例により提出された提案又は対案に関する政策を担当
  すべき本市の執行機関又は議会をいう。

 (運用上の注意)
第3条 この条例は、市民の政策提案の一手段を確立するものであって、市民
 のすべての提案、提言又は要求がこの条例に基づく提案によって行われなけ
 ればならないものと解釈し、及び運用してはならない。

 (提案)
第4条 市民は、この条例の定めるところにより、本市の政策に関する提案を
 行うことができる。
2 提案は、市長に対し、提案書を提出して行うものとする。
3 提案書には、次の各号に掲げる記録媒体を使用することができる。
 (1) 紙(点字を記載した紙を含む。)
 (2) フロッピーディスクその他の電子記録媒体(電子メールを含む。)
 (3) 録音テープ
 (4) 画像フィルム
 (5) 前各号に掲げるもののほか、第三者が読み取り、又は再生することがで
  きる記録媒体

 (提案の公表及び公開)
第5条 市長は、提案を受理した日から10日以内に、その提案に関する次の
 事項を公表しなければならない。
 (1) 提案者の氏名(提案者が法人、団体又は集団(以下「法人等」という。)
  であるときは、法人等の名称及びその提案に関し法人等を代表する者の氏
  名)
 (2) 提案の要旨
 (3) 提案を受理した日
 (4) 提案の担当機関の名称
 (5) 提案について第8条の規定による市民会議を開催する日時及び場所
 (6) 前各号に掲げるもののほか、市長が適当と認める事項
2 市長は、前項に定める公表を行ったときは、公表と同時に提案を公開し、
 縦覧に供さなければならない。

 (対案の提出)
第6条 市民は、他の市民が行った提案に関し対案を市長に提出することがで
 きる。
2 対案の提出は、対案を提出しようとする提案に関し第8条の規定による市
 民会議が開催される日の1月前までに、対案書によって行わなければならな
 い。
3 第4条第3項及び前条の規定は、対案に準用する。

 (意見の提出)
第7条 なんびとも提案又は対案に関し、意見を市長に提出することができる。
2 意見の提出は、意見を提出しようとする提案又は対案に関し次条の規定に
 よる市民会議が開催される前日までに、意見書によって行わなければならな
 い。
3 第4条第3項の規定は、意見の提出に準用する。

 (市民会議)
第8条 市長は、受理した提案、対案及び意見並びにそれらに対する担当機関
 の意見及び方針を参加と公開のもとで検討するため、提案を受理した日から
 3月以内に市民会議を開催しなければならない。
2 市民会議は、平日の夜間又は休日に開催する。
3 市民会議を開催する日時及び場所は、提案者と市長が協議によって決定す
 る。

 (市民会議の出席者及び傍聴者)
第9条 次に掲げる者は、やむを得ない理由がある場合を除き、市民会議に出
 席するものとする。
 (1) 提案者(提案者が法人等の場合は、その提案に関し当該法人等を代表す
  る者。以下同じ。)
 (2) 対案提出者(対案提出者が法人等の場合は、その対案に関し当該法人等
  を代表する者。以下同じ。)
 (3) 担当機関を代表する者
2 次に掲げる者は、市民会議に出席することができる。
 (1) 意見提出者(第7条の規定により提案又は対案に関し意見を提出した者
  をいう。以下同じ。)
 (2) 出席することを事前に市長に通知した者
 (3) 担当機関の職員
3 なんびとも市民会議を傍聴することができる。

 (市民会議の議事及び運営)
第10条 市民会議の議長及び副議長は、公募により、又は市民のうちから市
 長が選任する。
2 市長は、受理した意見書をすべて市民会議に提出しなければならない。
3 次の各号に掲げる者は、市民会議においてそれぞれ当該各号に掲げる会務
 を行うものとする。
 (1) 提案者及び対案提出者 自己が提出した提案又は対案について説明し、
  出席者の質問に答えること。
 (2) 担当機関を代表する者 次に掲げる会務
  ア 提案又は対案に関する政策の実施状況等を説明し、及び必要がある場
   合には資料を提出し、出席者の質問に答えること。
  イ 提案又は対案に関する担当機関の意見及び方針を提出し、その説明を
   行い、出席者の質問に答えること。
4 市民会議の出席者(提案者、対案提出者及び担当機関の代表者を含む。)
 は、提案者、対案提出者又は担当機関の代表者に対して質問し、若しくは意
 見を述べ、又は出席者相互で討論することができる。

 (複数回にわたる市民会議の開催)
第11条 提案者又は対案提出者は、市民会議での検討が尽くされていないと
 判断するときは、提案又は対案を引き続き検討するため、時期をあらためて再
 度市民会議を開催することを市長に請求することができる。

 (提案及び対案に対する措置の決定等)
第12条 担当機関は、提案及び対案に関する市民会議の議事が終結した日か
 ら1月以内に、提案及び対案に関する具体的な措置を決定し、当該措置の決
 定の理由を明示してこれを公表しなければならない。
2 担当機関は、提案者、対案提出者及び意見提出者に前項の措置の内容及び
 決定の理由を通知しなければならない。

 (説明会又は討論会)
第13条 提案者、対案提出者又は意見提出者は、担当機関に対し、前条第1
 項の措置の決定に関する説明会又は討論会の開催を請求することができる。
2 前項の説明会又は討論会の運営に関し必要な事項は、説明会又は討論会の
 開催を請求した者と担当機関とが協議の上、その都度定める。

 (措置の実施状況の公表等)
第14条 担当機関は、第12条第1項の措置の実施状況を公表しなければな
 らない。
2 なんびとも、担当機関に対し、第12条第1項の措置の実施状況に関する
 照会又は質問を行い、説明又は書面による回答を求めることができる。

 (記録の整備及び公開)
第15条 市長及び担当機関は、この条例に基づき提出された提案、対案及び
 意見並びに市民会議の記録その他の資料を整備してこれを公開し、常に縦覧
 に供さなければならない。

 (委任)
第16条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、
 市長が規則で定める。

   附 則
 この条例は、平成○年○月○日から施行する。

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(以上)

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