銀次郎物語 第七章 −引退 そして−


 銀次郎は短期放牧に出され、その後のレースに備えていたのですが、ある朝、いつものように馬体をチェックしていたところ、銀次郎の脚に外傷があるのを発見しました。どうやら寝違いをおこしていたようです。
 馬は寝るとき横になります。そして、少し寝ると立ち上がり、ぶらぶら歩いたり草などをつまんで、また横になります。横になったり寝返りをうったときに、馬房の壁などが邪魔になり、立ち上がれなくなる場合がたまにあります。これが寝違いです。
 寝違えたとき、馬は何とか体勢を戻そうと脚をバタバタ動かすのですが、すぐに体勢が戻れない場合などは更に激しく動き、立ち上がろうとします。馬が立とうと暴れて壁を蹴る音が、真夜中の厩舎にけたたましく響き、馬房の近くに部屋がある牧場の従業員などは目を覚ませ、助けに行くことになります。助けるといっても馬の尻尾などを引っ張って、壁から離してやればあとは自力で立ち上がれます。また、人間が到着する前に馬が自力で立ち上がれる場合もあります。
 寝違えてもすぐに立ち上がることができれば問題はないのですが、言いかえればそれは寝違えたうちに入らないと言ってもいいでしょう。馬が寝違えて立ち上がろうと脚を激しく動かすときに、脚をぶつけて怪我をする場合などが多々あるのです。銀次郎の馬房は従業員の寮とは少し離れたところにあったので、物音には気付きませんでしたが、恐らく寝違いのために両脚を傷つけてしまったようです。
 美浦トレーニングセンターに戻る直前におこったアクシデント。時間に余裕はありません。予定通りに美浦に戻したとしても、運動量を少なくしたりするでしょう。するとレースに復帰するには少し間隔があいてしまいます。何とも不運な出来事です。そして翌日、銀次郎は予定どうりに美浦トレーニングセンターへ戻っていきました。一週間の短期放牧が終わりました。脚に傷を負うという結果だけを残して。
 銀次郎が美浦へトレーニングセンターに戻り、翌日調教師から牧場に電話がありました。内容は両前脚が腫れているということで、大変怒っていたようです。馬運車に乗せるときには腫れはなかったようです。私も今は牧場を辞めてしまっているので詳しいことはわかりません。それが8月下旬でした。
 そして1999年9月5日。銀次郎は中央競馬会より引退しました。残念という意外にありません。乗馬として福島県のある牧場に行くようでした。
 出来事が起こってから何を言っても仕方がないのですが、思うことはいろいろあるわけです。引退せざるを得ないような脚の腫れだったのか。寝違いが原因で後日脚が腫れたのか。1週間放牧に出す必要があったのか・・・・・。私には何もわかりません。最後まで元気にレースで戦って欲しかったのですが、何だかやるせない気持ちのまま、銀次郎は引退してしまいました。残念ですが、お疲れさまでした。
 さようなら、銀次郎。
 

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この物語はフィクションであり、実際の馬、人物、団体等とはたぶん関係ありません。
写真と本文はたぶん関係ありません。

 管理人の不手際でこのページのアップがされていませんでした。ご迷惑をおかけいたしました。
 当初はこの先も話を続ける予定でしたが2000年夏までに更新する情報が得られず、現在は管理人の時間に余裕が無くなったため、ここで終わりとさせていただきます。
 本来ならこの先、多分死んでしまったであろう可能性のある銀次郎を追い、そこまでも書くのが筋と思っていましたが、結局何ら他の競走馬の物語と変わらなくなってしまいました。馬にかかわる者として、できる限りの事を競馬ファンの方に知って頂こうと思っていましたが、ある意味一番肝心なところが抜けてしまいました。深くお詫びいたします。
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