韓国旅行記 【韓国新正月旅行記】 2/5(全5話)


1998年12月31日(水)



01韓国家庭の朝食

 朝、電話の音で起こされた。母親からの電話で、朝食をとりに来いというものだった。一旦、階段に出て3階に上がり、さっきまでいた部屋の真上の部屋を訪ねる。どうやら、部屋をいくつか借りているらしい。ドアを開けると小さな犬が2匹飛び出してきた。その犬をあやしながら中に入ってみると、ホン君の母親が台所で忙しそうにしていた。

 その母親に挨拶をする。日本で育っただけあって完全に日本人の日本語だった。そして挨拶もそこそこにテーブルにつくように言われ、用意された朝食をとった。煮物のようなものと、スープが中心だったのだが、何とも言葉では表現できない(見たことのない)料理だった。これが韓国の家庭料理なんだ。

 料理を食べ終わり、しばらく談笑したあと、再びホン君の部屋に戻った。ホン君もいろいろ予定があるだろうから、そろそろお暇しなければならない。

 ホン君に近くのバス停まで送ってもらい、彼とはそこで別れた。バスは漢江を渡り、鍾路まで行く座席バスだった。バスに小一時間揺られて、見覚えのある鍾路に着いた。



02カンファジャンヨグアンへ

 バスを降りて、カンファムンの方に向かう。定宿であるカンファジャンヨグアン(光化荘旅館)に向かうためだ。恐らく知り合いが何人か宿泊しているはずなので、シェア出来るかも知れないのだ。シェア出来れば宿泊費は半分で済む。これはお得だ。

 イスンシン像下の地下通路を抜け、ハンバーガー屋の横を抜けていくとヨグアンが見えてきた。いつものたたずまいだ。階段を上がるといつものおじさんが座っていた。おじさんに日本人が来ていないかどうか聞いてみると、やはり数名泊まっているようだった。しかし、今部屋にはいないとのこと。どうしようかと思っていると、なんと韓国ポピュラー音楽学会のYUKI会長夫妻が現れた。広島在住の韓国マニアだ。今から大邱へ移動するらしい。ちょうど荷物をまとめたところだそうだ。残念だが飛行機の時間もあって早々に出かけてしまった。

 YUKI会長の情報によって、「DEKOさん」や「くらくらさん」が宿泊しているらしいことが分かった。とりあえず「くらくらさん」の部屋に荷物をぶち込んで置いた。それから名刺をフロントに預けて、日本人が来たら見せてもらうようにお願いしておいた。

 さて、付き合ってくれる人がいないわけだから、今日は一人でぶらぶらすることにしよう。もうお昼近くになっていたので、どこかで食料も調達しなければならない。しかし、まずは帰りのチケットを買っておかねば。そう思って、鍾路にあるディスカバリー旅行社を訪ねることにした。



03帰りのチケットを購入

 ディスカバリー旅行社は市庁の裏手あたりにあって、日本語の通じる旅行会社だ。(ただし僕が行くと、韓国語の人がでてくる(^^;)大韓航空やアシアナ航空などのディスカウントチケットを扱っている。予約だけ入れておき、ここで発券するとかなりの割引が可能なのだ。

 旅行社を訪ねて手続きをし、チケットはあっさりと発券できた。帰りの足は確保された。

 さて発券もできたことだし、かねてからの念願だった、銀行の口座開設をしてみることにした。あらかじめホン君らに「韓国で比較的安全な銀行はどこ?」と聞いておいたので、開設する銀行はもう決めてあったのだ。クンミンウネン(国民銀行)だ。

 ディスカバリー旅行社の女の子に、クンミンウネンの支店が近くにあるかどうか聞いてみたら、歩いて2〜3分の所にあることが分かった。そこで開設することにしよう。



04韓国の銀行に口座を開設

 ディスカバリー旅行社のビルを出て、言われた方向に歩いていくと、その支店はすぐに見つかった。中に入ると、カウンターは客でごった返していた。かなり繁盛しているようだ。とりあえずは当面の金を確保するために、円をウォンに替えておこう。その後に口座開設だ。

 2階にある両替担当のカウンターに行って、まずは両替の依頼をした。そして担当のおじさんに、

「口座開設をしたいんですが、どうしたらいいんでしょう?」と尋ねてみた。

「ウォンでですか?」

「ええ、そうです」

「じゃ、その預ける分もウォンに替えられますか?」

「ええ、そうします」

 銀行に預ける分のウォンもここで交換し、おじさんにつれられて1階の「相談コーナー」に移動した。中年の男性行員が相手をしてくれた。

「では、まずこの書類に必要事項を記入して下さい」

そういって渡された書類に記入していく。そんなに難しい単語もなく、埋めていくことが出来た。名前はアルファベットで登録することにした。その紙を渡すと、おじさんは口座開設に関する説明(韓国語)を始めた。ほぼ問題なく理解できたが、一つだけよく分からない単語がでてきた。「チクプルカードゥ」(右写真)というものだ。「カードゥ」は「カード」のことなので、何かのカードのことなのだが、よく理解できなかった。話によると「キャッシュカード」でもないし「クレジットカード」でもないらしいのだ。なんじゃそりゃ? 「キャッシュカード」は必要だが「クレジットカード」は必要ないし、これはいったい何なんだろう。その「チクプル」という単語を辞書で引いてみたけど、載っていなかった。話の内容を聞くと、限りなくクレジットカードに近いものだった。でも何か違う・・・・。

 困っていると、「チクプルカードゥ」パンフレットを渡された。それをよく読んでみると、何となく理解できてきた。どうやら使い方としてはクレジットカードと同じように、現金を払わずそのカードだけで支払いできるのだが、クレジットカードとの違いは、「そのお店」と「銀行」がオンラインで結ばれていて、その都度、口座から引き落としがおこると言うことだ。本人はサインの替わりに、店に備えられている「暗証番号入力機」に暗証番号を自ら入力するのだ。すると、買った分だけ銀行の口座から即引き落とされるという寸法だ。

 もう一つクレジットカードとの違いをあげるとすると、口座にお金がなくなった時点で、買い物ができなるということだ。最近のクレジットカードはそういう場合、自動的に融資される(らしい)。というとても便利なカードで、キャッシュカードも兼ねており、年会費などもいらないことから早速作ってもらった。書類にあらかじめ持ってきたはんこを押すと、手続きは完了した。そしてすぐに通帳と「チクプルカード」が渡された。なんだか本当にあっけなくできた。

 あとで韓国人の友達に「チクプル」って、どういうニュアンスなの?と聞いてみたのだが、カードの内容からして「チクチョプ」(直接)と「チブル」(支払)の合成語じゃないかということだった。つまり「直払」(チクプル)ということだ。韓国では広く使われている単語かも知れない。

 そのあとCD屋とか本屋などをぶらぶらして、夜になった時点でカンファジャンヨグアンに戻った。



05再びカンファジャンヨグアン

 部屋に戻ると、くらくらさん、ぼんちゃん(女性)DEKOさん(右写真)じゅかんちゃんらが部屋に集まって酒盛りをしていた。この中で日本人なのはくらくらさんと、DEKOさん。あとのぼんちゃんとじゅかんちゃんは韓国人だ。早速挨拶して輪の中に加わる。しかし既に焼酎を何杯も飲んでいた、くらくらさんと、じゅかんちゃんはすっかりできあがっていた。じゅかんちゃんは会ったことあるのに、「どこかであったこと会ったっけ?」などと大ボケをかます始末だ。

 そのうち、DEKOさんとぼんちゃんが引きあげていき、残った連中でテレビを見ながらさらに酒盛りが続いていった。今日は大晦日なのでテレビの番組もそれらしい中継をしていった。ちょうど鍾路のあたりを中継して多のだが、異常に人が集まっている様子が映し出されていた。するとそれを見ていた韓国人のじゅかんちゃんが、

「そろそろ除夜の鐘を聞きに行きましょう」

と言いだしたのだ。

「除夜の鐘???」

 じゅかんちゃんの話によると、鍾路の交差点、つまりYMCAよりも西寄りのパパイスの横に「ポシンガク」という鐘楼があるのだが、そこで鐘が鳴らされると言うのだ。そう言えばそんな建物があったなぁと、思いめぐらせてみる。テレビでやっている中継は、まさにそれだったのだ。それはぜひ行かなければならない。個々から歩いて10分もかからない位置にあるのだ。



05ポシンガクの除夜の鐘

 早速、ヨグアンをでて鍾路の方に向かう。するとなんと驚いたことに、イスンシン像の前、郵便局のあたりからあの巨大な「鍾路」が歩行者天国になっていたのだ。(右写真)これはすごい。韓国人たちもみんな思い思い連れだって鍾路の「ど真ん中」を歩いていく。すると前方の交差点の向こうに、ポシンガクが見えてきた。

 そのポシンガクのある交差点は、既に人で埋め尽くされていた。(下左写真)そして仮装している人や歌を歌っている集団など、パフォーマンスも展開されている。じゅかんちゃんによると、彼らは大学生で、毎年現れるそうだ。これは楽しい。そして、それにまけないぐらい大量の警察官がでていた。そして怒号と喧噪の中、除夜の鐘が鳴り始めた。拍手がわき起こる。

 僕らははぐれないように「ポシンガク」(下右写真)の方に近づいていく。確かに大きな鐘が2階にぶら下がっていて、数人で鳴らされていた。そしてそれが何回か鳴らされたあと、新年となった。どうやら韓国の除夜の鐘は108回ではないらしい。みんなで「セヘ ポンマーニ パドゥセヨ」(韓国の正月の挨拶)と言い合って、ヨグアンに戻ることにした。

 

 帰り際に「ポシンガク」に近づいてみたが、警察官でがっちりガードされていた。今度来ることがあったら、もっと早めに来て近くで見てみようと思った。

 実はこのイベント、ソウルではかなり有名らしい。そう言えば昨日の「チョルリアンの日本語同好会」の連中も、そんな話をしていた。僕は全く知らなかったので、よく分からなかったのだが(もちろん韓国語だったので、それもある)、正月ソウルで過ごす機会のある方は、一度来られると面白いと思う。ガイドブックやテレビなどでも取り上げられたことがないイベントだ。

  戻っているうちに歩行者天国は解除されていった。再び鍾路に車が走り出した。今までの喧噪が嘘のように普通のソウル・鍾路に戻っていった。

 ヨグアンに戻り、少し話をしたあと眠ることにした。結局、くらくらさんと部屋をシェアする事になった。・・・明日は元旦だ。

(第2話終了/全5話)