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〜 ブラジルの宗教美術 〜


   現在、東京国立博物館で西本願寺展が開催されています。普段なかなか見ることのできないものが沢山あり、私も非常に興味深く拝見いたしました。

 翻ってブラジルの宗教美術に目を向けてみますと、ブラジルへのヨーロッパからの移民が本格的にはじまった16世紀以後のものに限られます。

 ただ、今回の本願寺展にも見られます様に日本の宗教美術は木製、又は掛軸や書物のような紙製の物が多いのに対し、キリスト教の宗教美術は石製であったり、絵画にしても天井画に代表されるように建物に直接描いてある事も多く、季節や風土、考え方の違いなどによって、なかり違いがあると思います。

 ブラジルの中部、山に囲まれたオーロ・プレットという街には、ブラジル創世記の建築物が多く残っており、街そのものが美術館の様な雰囲気をもっています。

 先述のように天井画は建物に直接描いてあるので、その部分を修復するにあたっては、現場で作業をする事が多かったようです。その場合、修復する現場を直に見る事が出来、また実際に触る事も出来るので、美術品との距離の近さを感じさせられたものでした。

 絵画や彫刻など、宗教美術に属するものは美術品としての価値は勿論の事、信仰の対象としての役割を現在も継続してる事を考えれば、作られた当初の意味というものが、そこに住む人々とともに歩んできた事が分かるような気がしました。

 ただ、大きな街では、文化財保存の意味から、そういったものととの距離が段々広がり、天井画等建築物に付いたものは別にして、移動可能な彫刻などは、普段見る機会が無くなって来ています。そのような文化財との距離が非常に遠くなってしまっている事は残念ではあります。

 ブラジルで、初めてお寺に来られるような、特に日系人以外の方は、まず本堂の荘厳に眼を見張り、それを通して教えへ興味としていったような気がします。

 無論真宗においては、礼拝の対象は名号だけで良いと言えばそれまでなのですが、荘厳の一つ一つが、教えともに歩んできた人々の思いを語っていると、以前には全く仏教に興味を持っていなかったキリスト教徒も感じたのかもしれません。


                                              寺田 崇裕



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