A: 戒名・法名の字数についてのご質問ですが、まず戒名と法名の違いをご説明いたします。
戒名とは自力聖道門(自分の力で悟りを目指す宗派)の方々が出家の際に、今後守ろうとする「戒律」を師から授かったときに付けてもらう仏教徒の名前を言います。
法名とは私たち浄土真宗に代表される仏教徒の名前の呼び方ですが、浄土真宗は出家して戒律を守り、自らの力で悟りを目指す宗派ではありませんので戒名という呼び方はいたしません。法(教え)を聞く者の名前ということで法名と言います。
浄土真宗の法名は、釈尊(お釈迦さま)の釈の一字をいただいた、釈○○という名前ですが、法名は生前に帰敬式(おかみそり式)を受けて、ご門主よりいただくのが本来の姿です。法名をいただくことによって生前は仏教徒、特に浄土真宗の門徒としての意識が深まり、亡くなってからは家族が故人を仏様と受け止めてゆくご縁となります。
問題の字数ですが、浄土真宗は釈○○といういわゆる二字法名です。10年ほど前までは女性にだけ尼という字が付けられておりましたが、現在は男性も女性も二字法名に統一されております。
二字法名のほかに○○院という院号がつく場合がありますが、院号は宗派やお寺に貢献のあった方に贈られるものです。現在は財施(お金による布施・寄付等)をされた方にお扱い(お礼の品)の一つとして院号が下付されておりますが、私の個人的な考えでは貧富や家柄といった差別に利用されるおそれがありますので、浄土真宗はすべて二字法名に統一した方がよいのではないかと思います。
そのほか、戒名や法名の下に居士や信士、大姉や信女といった位号を付ける宗派もありますが、浄土真宗では一切付けません。これら位号は差別に結びつくものだからです。
浄土真宗寺院でも他宗派の影響を受けて過去の一時期から位号を付けている寺院があります。しかし、それらの寺院のほとんどの住職は正しい二字法名に直したいと考えておられいるようですが、過去の遺物は思うように改められないのが現実のようです。
それは、ご質問のように「戒名・法名は字数が多い方が良い」と考えておられる方が大勢いるからです。
戒名や法名の字の数と故人の成仏はまったく関係ありません。むしろそのような迷信に振り回されて字数が多い方が良いと考える私たちの姿勢に問題があります。逆にそれら迷信に潜む差別性を見抜く目を持ちたいものです。
私たちは阿弥陀如来の平等施一切(すべての者に等しく功徳を与えたい)の心をいただく浄土真宗の門徒です。徹底した平等意識を持ち続けられた親鸞聖人の流れをくむ者として、ご質問のような考え方を持つ人には毅然とした態度で臨んでいただければと思います。
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回答者: 橋本 正信
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