仏教ちょっと教えて 




064 門徒と檀家はどう違いますか?


Q:浄土真宗の人を門徒と呼びますが、檀家とどう違うのでしょうか。


A: お答えいたします。
 門徒とは「一門の徒輩」ということで、仏教各宗派でも使われておりましたが、現在は浄土真宗の信者を指す言葉となっております。
 檀家とは、梵(ボン)語のダーナパティという言葉から生まれたもので、元の意味は布施をする人のことです。

 日本では鎌倉時代以後に使われだした言葉で、信者の所属する寺院を檀那寺と呼び、寺に所属する者を檀家と呼んで世襲的に寺院を維持する体制を作りました。

 檀家という言葉が広く使われだしたのは江戸時代からで、宗旨人別帳、あるいは宗門改人別帳と呼ばれるものを寺院が作成し、管理する制度(いわゆる檀家制度)が徹底されたためです。

 江戸幕府は1660年以後、寺院に対して、檀家の各人がキリシタンでないことを証明し、檀家の武士や庶民の家の戸主・家族・奉公人・出入りの行商人などについてもその名前、年齢、所属の寺などを記した戸籍台帳のようなものを備え付けるよう命を下しました。

 寺院はこの台帳を元として、個人が自分の寺の檀家でありキリシタンでないこと、また、檀家の者の住居移転や奉公・結婚・旅行などの際には、寺請証文と呼ばれる証明書を発行しました。つまり寺院は、幕府の庶民支配機構の末端の役割を果たしたのでした。

 またこの台帳は、庶民から職業の選択や、転居・結婚などの自由を奪いました。
 そして、権力者にとって権力を維持するための身分制度の徹底といった政策を実施するには有効な手段でした。

 つまり、江戸時代の寺院は権力者の側に立ち、権力を維持する道具として利用され、差別を温存する役割を担ってきたのでした。それが檀家制度なのです。

 この制度は明治の廃藩置県と共に廃止されましたが、寺と檀家の寺檀関係は残り、宗教が「家の宗教」という認識で現在も続いております。

 余談ですが、明治政府は檀家制度を廃止した代わりに、氏子制度という神社との関係を強制しました。また、それまで決して家の中にはなかった神棚を祀ることも強制し、国家神道・戦争の道を突き進んで行ったのです。

 浄土真宗は「家の宗教」から出発する教えでなく、個の救いが家の宗教となり社会一般に広まることを願っておりますので、檀家という家を単位とする言葉を極力用いませんでした。

 そして、浄土真宗の教えを信仰する者すべてが、寺でなく宗門の大事な個であるという意味で「門徒」と呼んできたのです。門徒の門は宗門・一門の門という意味です。

 どの言葉もそうですが、特に檀家という言葉の裏には重く悲しい歴史があります
 私は江戸幕府の封建制と、差別である身分制度を象徴する言葉が「檀家」であると考えております。

 何も知らずに檀家という言葉を使っておられたなら、これからは使わないようにしましょう。特に浄土真宗の方でしたら、「門徒」という立派な言葉があるのですからなおさらです。




回答者: 橋本 正信 


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