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009 岐阜別院の老人ホーム建設に関わる
補助金不正受給事件について

   岐阜別院の老人ホーム建設に関わる補助金不正受給事件は、宗門関係者のみならず、社会福祉関係者にも大きな衝撃を与えました。3億8千万円という金額もさることながら、本願寺直属寺院を舞台とした犯罪であり、建設時の輪番が逮捕されるという本願寺派として前代未聞の不祥事です。

   はたしてこの事件は、N輪番の個人的な資質により引き起こされたものなのでしょうか。

   近年の傾向として、輪番職に就きますと、目に見える実績を残すことが大義であるような傾向があるように思えてなりません。建築や修理、そして墓地の造成など。それが結果として別院にとって経済的によい方向に進んでいるかどうかは分かりませんが、西山別院のように事業の失敗の話も聞こえてきます。もし、本願寺の体制の中にこのような事件を引き起こす素地のようなものがあるとしたら、きっぱりと清算しなければなりません。

   今回の事件は、福祉関係者に与えた影響も計り知れないと思います。先だっての厚生省の事務次官がらみの事件で、社会福祉法人に対する風当たりがきつくなりました。そしてまたこの事件です。

   社会福祉事業は、ぼろい金儲けのできる仕事のような印象を社会に与えてしまいました。しかし、社会福祉事業は、公共団体の委託を受けて運営する事業であり、民間事業とは言っても経費のほとんどが公費です。したがって毎年の監査は厳しく経理はガラス張りでなければなりません。職員であれば給料はもらえますが、うまい事業収入などはありません。いわば、公設民営に近いもので、人事や事業運営の面倒くさい部分だけ任せられて、財布は実質的に公共機関に握られているようなものです。しかしだからこそ施設の建設に手厚い補助が受けられるのです。

   お寺が福祉事業に関わることはよいことだと思います。全国には福祉事業をおこなっているお寺がたくさんあります。しかし、今回のような事件が起きると、福祉に対するお寺の前向きな考え方さえ、誤解されて受け取られかねません。今後の徹底した捜査に期待します。

   ついでにもう一言。地元無視の本山の人事がこのような事態を起こした原因の一つといえると思います。短期で入れ替わる人事は、責任感の麻痺につながり横暴がまかり通る結果になっているのではないでしょうか。また職員のやる気をそいでいることも事実です。たとえば東京のK学園、園長がここ3年で何人替わったでしょうか。いい笑いものになっていることに本山は気づいているでしょうか。


         (1998年7月 Sho)

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