9月18日、第18回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要に参拝しました。
この法要は1981年にご門主の意向を受けて、国立の千鳥が淵戦没者墓苑を会場に始まり、以後毎年9月18日に厳修されています。第14回までは、ご門主(一度だけ前門様)のご親修でした。法要では、宗門が戦争に積極的に協力してきたことを反省し、戦没者の定義を広げて、日本軍の戦死・戦病死にとどまらず、戦災死、そして日本の軍隊により犠牲になったすべての人々を含めて追悼すると位置づけて、宗門として、内外へのメッセージを持った行事でありました。
しかし、終戦50年を終えた3年前の唐突な規模縮小(宗会で予算化されていたにもかかわらず)から後、法要が形骸化する傾向にありました。3年前の法要の折り、当時の松村総長が挨拶の中で述べた「思いがけない大勢のご参拝」との言葉は、印象に残っています。参拝者の思いと主催者の思惑との差が如実に現れた言葉でした。
本願寺派を代表する現職の総長という立場で、前述のとおり公的に認知されていない未包括寺院の行事に出席したことは、認識不足であると批判されてもいたしかたないのではないか。総長は、そのような事情を全く認識せず宗会議員仲間として訪問したのだと推察する。しかしその行動は軽率の批判を免れないものと思われる。
この法要は、宗門が対外的に意志を表明する唯一の恒例行事でしたので、多くの教区から復活を要望する建議が提出されました。東京教区は、三年連続して千鳥が淵に関する建議を提出してきました。(1997年度建議は『宗報』5月号に登載されています)
そして、この度、建議が取り上げられ、今年から全戦没者法要を始められたご門主の意を体した形態に復することとなったのです。今年度変更(復活)になった主な事項は、次のようなところです。
1.本山の東京出張所(築地別院)が所管していたものが本山直接(総局公室)の所管となった。
2.築地別院が勤めていた導師・結衆を、導師を総長が勤め、結衆を各教務所長が出勤することとなった。
3.関係国大使館と政界等に案内を復活する。
ご門主の親修や、前日の集いは復活していませんが、宗門として、責任を持って継続する意志を示されたことは喜ばしいことです。
ただし、今年の法要は、前年まで規模縮小(なし崩し的廃止)の意図の見える法要であったことと、あいにくの雨模様から、参拝者の出足が心配されました。
しかし、千代田女子学園のオーケストラや合唱団の参加などの工夫も見られ、ある程度の参拝があり来年へ向けての希望が得られたような気がしました。
ちなみに今年参拝くださった来賓は、カンボジア・スリランカ・ミャンマー・フィリピンの各大使、政党としては民主党と共産党、そして築地聞信会等に所属する多くの国会議員の方々でした(代理がどのくらいいたかは私には分かりません)。対外アピールの評価は分かりませんが、3年のブランクを埋めるには何年かかかると思った方がよいでしょう。
ただ気になったのは、「全戦没者」という言葉で主張する、「敵味方を越えたすべての戦争犠牲者」という視点が語られなかったことです。
運営上多少の問題があったとしても、蓮如上人500回遠忌法要中にもかかわらず積極的に取り組まれた総局に敬意を表したいと思います。今後、この法要を通じ、宗門をあげて非戦の願いを内外にアピールしていくことを望みます。
(1998年9月 Sho) |
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