僧侶向けページ


このページは、僧侶向けのページです



 013  少年教化を考える

   1.子供たちを取り巻く宗教の状況


 近年の宗教状況はますます既成教団にとって厳しい状態になってきていると思います。それは、新しく生まれた宗教が、以前のように個の中での棲み分けという形で既成教団との共存を図ることをしなくなってきたからです。
 今までは新興の宗教団体がどのような指導をしていたかは別として、多くの家庭で神棚と仏壇が併存していることに何の疑問も持たないように、個の中で家の宗教と個人の信仰が併存していました。そのことに既成教団(もちろん我が本願寺派も含めて)は安心し、旧来の家制度に立脚した墓地(ご先祖様)があることだけを頼りに、宗教本来の教化活動に本腰を入れず惰眠をむさぼってきたのではないでしょうか。
 ところが、周囲を見回すと、統一教会に息子が入ったためにいつの間にか家屋敷も失う者、新興宗教に子供が入ってしまい墓地を継承する者がいなくなり寺に相談に来るお年寄りなど、最近の様相は明らかに以前と違ってきています。近年新興の宗教に入信する人は、宗教に没入する度合いが異なり、家族や周囲の人々の意見など入り込む余地はありません。そしてそのような宗教に入る人々は、皮肉にも、戦前の神道国教化政策の下で築き上げられてきた重層信仰の影響を受けていない若い人々であることに注目しなければなりません。



  2.親から子に伝わらない時代


 「先に生まれんものは後を導き、後に生まれんひとは前を訪へ、連続無窮にして、願はくは休止せざらしめんと欲す。無辺の生死海を尽くさんがためのゆゑなり」
 親鸞聖人が『本典』後序に『安楽集』のこの御文を引用されたその願いが、今崩れていくかも知れません。僧侶門徒にかかわらず、墓地(家制度)を絆に、親から子、子から孫へと自然に伝わっていくと信ずる気楽さは、もう通用しないのです。すでに、努力をしないと伝わらない時代になっているのです。今こそこの聖人の願いを切実にとらえ直していかなければなりません。



   3.子供たちになにを伝えていくか


 子供たちになにを伝えていくか。このテーマは、淨土眞宗の私たちにとりまして、意外に難しいのです。淨土眞宗のみ教えを伝え、淨土眞宗の信に生きる喜びを伝えていけばよいのですが、いざ家庭でと言ってもふさわしい言葉はみあたりません。「他力本願」「悪人正機」「往生浄土」などの意味合いは、どれもある程度の人生経験が備わってはじめて深くうなずけるものとなるのでしょう。
 私たちは、子供たちに伝える言葉を育てる努力を怠ってきたように思います。
 早急に、子供の年齢に応じた淨土眞宗のみ教えを、どこでも誰でも同じように伝えていける形を作り上げねばなりません。



   4.少年教化に宗門の総力を傾けよう


 努力をしないと伝わらない時代であることを肝に銘じ、少年教化に宗門の総力を傾けていかなければならないと思います。社会環境は、旧来の日曜学校などの子供会形式を受け入れにくくなっています。多方面からのアプローチが必要ですし、また、宗門自体が子供たちの環境に常に関心を示し発言していくことが大切であると思います。

        (1998年11月 Sho)

僧侶向けトップページに戻る