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018 超法規発言について

   4月10日付けの『中外日報』に、本派宗会について論評した「記者の目」という記事が掲載されていました。その冒頭に、

本願寺派宗会議員らの間では「六月臨宗説」が既定の方針として政治日程の中に折り込み済み。臨宗の表向きの議題は御影堂修復に関することのようだが、真の議題は“超法規発言”問題の決着にあることは衆目の一致するところ。

とあります。ごく少ない宗会の情報をたよりに、宗門の情勢を知ろうと努力しているものにとっては、一般僧侶は「衆目」にも入らないのかという苛立ちをさえ覚えます。

   
今の宗会がやらなければならないことは、はっきりしていると思います。宗門の抱える事件(例えば北山別院墓地造成計画事件など)の全容の解明と、責任の明確化とそれに伴う適切な処置を講ずること。そして、再発の防止。それは総長の所信表明でも明らかです。

   
ところが、宗会では解決すべき問題を後回しにして手続き論に終始しているように思えてなりません。たしかに行政に携わるものが、根拠規定がないとは言え「超法規的な処置」と答弁したことは不適切なのかもしれません。しかし、度重なる不正が発覚した事業を中止させるためとった前総局の処置(御認許の取り消し)は正しかったと考えられます。しかも、その総局は責任を取って総辞職しています。

   
中外日報には、出口議員が、「御認許取り消しの法的根拠を示せ」と主張しているとありますが、その主張の意図が奈辺にあるかはよくわかりません。聞くところによると、平成8年の墓地造成偽装報告と御認許申請時の輪番は、出口議員の実父とのこと。好意的に解釈しますと、実父だけが悪いのではなく、その背景にはもっと大きな黒幕が存在し、中止の手続きにも法的に欠陥があることを指摘したかったのではないかと思われます。

   
いずれにしましても現宗会には、事件の真相を明らかにしなければならない責任があると思います。“超法規的発言”問題という、中止の過程で発生した手続き論に多くの時間を費やすことは、問題のすり替えとしか言えないのではないでしょうか。

   
『中外日報』の記事によると6月臨宗によって決着を図るとのこと。記事の中の政治決着がどのようなものか記事からは窺い知ることはできませんが、何らかの形で英断が下されないと膠着状態の打開は図れないのではないでしょうか。本当の責任の所在の明確化に向けた事件の解明が、飛躍的に進む決着であることを望みます。

   
肝心なところは秘密会で知らされず、漏れ聞こえてくるところは、政治的駆け引きでは宗会に対する不信感は増すばかりです。宗会は情報開示にもっと力を入れ、宗会における個々の議員や会派の動きがわかるようにすることがますます必要になってきていると思います。

   
衆人環視の宗会であることを個々の宗会議員に認識していただくことが、今最も大切なことだと思います。その意味でも、宗会の動きと責任能力に注目しましょう。

                         無憂樹




            『中外日報』記事

記者の目 
  「政治的決着は自殺行為」

          臨宗で「超法規」決着

   ●本願寺派宗会議員らの間では「六月臨宗説」が既定の方針として政治日程の中に折り込み済み。臨宗の表向きの議題は御影堂修復に関することのようだが、真の議題は“超法規発言”問題の決着にあることは衆目の一致するところ。

    北山別院は、大谷光真門主の認許を得て葛檮纉d鉄から約一千坪の山林を購入、京阪と共同で竃k山墓苑を設立し、購入地に約二千基の墓地を造成、販売する計画を立てた。しかし、元輪番が無認許で竃k山墓苑の債務を保証していたことや“架空墓地”の偽装工作などが発覚、昨年十一月、総局は別院の意向によらず計画の中止を決定、光真門主に当初の認許の取り下げを求める異例の認許申請を行なった。

    「直属寺院規程」は、認許事項は別院の報告等を受け総局が判断し門主の認許を得るという手順が定められているが、昨年十一月の認許取り下げは明らかな法規違反。この点について第二百五十三回臨時宗会で出口湛龍議員(翔朋会)が「ご認許取り下げの法的根拠を示せ」と追及、これに対し総局側が「超法規的措置として行なった」と答弁。しかし、総局の執務はすべて宗門法規の裏付けが必要で、当然、超法規的措置の発動などは認められていない。

    今年二月の第二百五十四回定期宗会で再び“超法規発言”問題が再燃、総局は“超法規発言”を撤回、豊原大成総長は「ご認許取り下げについての法規はない。緊急事態であり総局、総長の判断で決めた」と述べ、高度な政治性を有する行政府の行為は司法審査の対象とすべきではないとする統治行為論に解決の糸口を見いだそうとした。しかし、計画中止が人命に直接関わるような危険性をはらんでいたわけではなく、この定宗でも“超法規発言”問題は解決に至らず、予算案審議を優先させるため豊原総長と北條成之議長にこの問題の扱いを一任した。

   法体系の見直し必至

    ▽“超法規発言”問題は立法府の宗会、そして法規に基づき行政を担当する総局の存立基盤に関わる重要な問題。六月に招集される臨時宗会では、昨秋来の懸案に終止符を打つため、総局改造をも視野に人れての解決に向けた政治的駆け引きが行なわれるもよう。

    しかし「門主不答責」、つまり門主の認許を得る事項に誤りなどあってはならないとする宗門独特の法理念により、門主の認許事項を取り消すための法的根拠が無いという現行の宗門法規の欠陥を抉り出したこの問題の抜本的な解決は政治決着とは全く無関係。また、元輪番らに有罪判決が下った岐阜龍谷会事件では、設立母体の岐阜別院の輪番(当時)が無認許で龍谷会の設立資金として一億円の借り人れを行なっており、「門主の認許事項に誤りがあってはならない」とする従来の通念は崩壊しつつある。

    臨宗ではそれらを充分に弁え現行の法体系の見直しをも視野に入れた議論が必要。政治的決着で事足れりとするならば「総局、宗会の自殺行為」と批判されても仕方がなかろう。また、“超法規発言”問題はあくまで北山問題の一部であり、数々の違法行為の積み重ねにより「超法規的借置」が発動されざるを得なかった北山問題の解決が、この問題にすり替えられてしまうことも危倶されている。

(中外日報 1999.4.10)

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