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053  『寺院名簿』返還呼びかけ


長野教区で『寺院名簿』返還呼びかけ

   先頃改版され、全寺院に配布されました本願寺派の寺院名簿について、ポストエイオスでは「『寺院名簿』刊行に思う」(3月1日更新記事)で問題性を指摘しましたが、長野教区では教区を挙げて明確な意思表示をするために特徴的な運動を展開しています。

   
長野教区基幹運動推進委員会は、差別性の指摘されている『浄土真宗本願寺派寺院名簿』を返還することを教区内全寺院に呼びかけています。4月7日付けの『中外日報』には、すでに110カ寺のうち35カ寺が返還に応じたと報じられています。

   
以前から本願寺派では、宗門内から類聚制度に対する差別性を指摘する声が常に発せられています。しかし宗門行政側からは、僧班・寺班は本人の申告により変更(昇進のみ)が可能な制度であり差別性はないとの説明や、本願寺派の財政を支える重要な制度であるという点を根拠に改善の方策が講じられることはありませんでした。

   
ただし、宗派発行の寺院名簿に僧班・寺班が記載されていることについては、それが差別的意図により利用されていることが指摘されており、中央基推委等では行政側からも改善を検討している旨の発言が度々なされています。前回の寺院名簿発行の折りには、今回は間に合わないが次回の改訂には検討する旨の説明があったことを記憶しています。ところが今回の発刊に際しても全く同様の説明がなされたとのことであります。怠慢というより意図的と判断するよりほかはないのではないでしょうか。

   
宗門内の多くの反対を押してまで、寺院名簿に僧班・寺班を記載する意図は奈辺にあるのでしょうか。宗派は、僧班・寺班を運用するにあたって寺院名簿に記載した明確な理由を明らかにすべきであると思います。

   
今回の長野教区の行動は、宗門に対し確実に一石を投じたと思います。


無憂樹 (2001.4.16) 
参考資料
(『中外日報』 2001年4月7日)
  本願寺派長野教区基推委
   『寺院名簿』返還呼びかけ
     教区内百十ヵ寺に 寺班・僧班記載に抗議

 浄土真宗本願寺派(蓮清典総長)の長野教区基幹運動推進委員会(会長=川那部好晴教務所長)は、昨年末刊行の『浄土真宗本願寺派寺院名簿』(以下「寺院名簿」)に、差別制度との批判の強い「類聚制度」に基づく寺班・僧班が記載されたことに抗議、教区内百十力寺の全寺院に名簿の返還を呼び掛けていたが、先月末までに返還を申し出だ三十五カ寺の名簿を宗派当局に送付する。
 同教区基推委は「校正の段階で寺班・僧班については削除を甲し入れていたが、その要望が聞き人れられなくて残念。今回は一回目の返還であり、最終的には全寺院の名簿を返還したい」としている。

 本願寺派の『寺院名簿』は、住職、坊守など僧籍を有する寺族、衆徒の名称と当該寺院の所在地(住所)、電話番号、FAX雷号などの必要事項を記載。また、類聚規程(類聚制度)に基づく各寺院の寺班と各僧侶の僧班も記載されている。
 本願寺派では、戦前まで僧侶をその身分等級などに基づき連枝、準連枝から平僧まで十九に分けた堂班制度があり、「封建的階層的差別序列を厳しく保持してきた堂班制こそ差別の元凶」などと批判されてきた。
 戦後に導入された類聚制度は「宗門意識の昂揚を図り、宗門護持の懇念を厚くするため」、一般寺院や僧侶に顕座から列座までの八座(各座に七席の区分がある)からなる寺班、僧班を設け、本山や直属寺院での法要に出勤する僧侶の着座位置の基準とした。
 しかし、類聚制度は堂班制度を“下敷き”として制定されており、その差別性を完全に払拭するには至っていない。
 また寺班、僧班は各寺院や僧侶に課せられる賦課金の算定基準の一つで類聚制度は宗門財政と密接に関係し、類聚の変更は懇志上納額を基準として行なわれることから「売官制度」としての側面も持つとされる。
 このためこれまでも「寺院名簿』の改訂版が刊行されるに際して、同朋運動に携わるグループやや各教区から寺班・僧班を掲載せぬよう度々要望や建白書などが提出され、長野教区基推委は昨年八月に宗派当局(寺院名簿編纂委員会委員長)に『寺院名簿』における類聚の取り扱いについての要望を提出。

  差別的な類聚制度

 「堂班制度の主要な部分を、再び引き継いだ類聚制度は、率直に申し上げて、その差別性ゆえに宗門の宗風にはなじみません」とし、また、類聚制度の廃止を求める建白書が複数の教区から提出されていることに言及、「類聚(寺班・僧班)の記載中止は宗門世論となりつつある」と訴え、校正の段階では寺班・僧班の部分に棒線を引き削除するよう指示してゲラを返却した。
 しかし、昨年末、宗派当局は従来通りに寺班・僧班を記載した『寺院名簿』の改訂版を全寺院に無料で配布しでおり、同教区基推委は今年一月の会議で「類聚の記載中止を求める運動を契機として、類聚制度を問題とすること」を再確認。
 教区内の全寺院(百十カ寺)に寺班・僧班が記載された『寺院名簿」を返還するよう呼び掛け、先月未までに全体の三分の一に当たる三十五カ寺がこれに応じて『寺院名簿』を返還することを決めた。
 基推委は「窓口の庶務部に宛てて文書で返還することを伝えた。最終的には全寺院に『寺院名簿』の返還について理解と協カをお願いしたい」と運動の徹底に強い意欲を示している。
 なお、宗派当局は「まだ送り返されてはきていない。対応は今後検討してゆく」と『寺院名簿』の返還という“異例の事態”に当惑している。

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