北山問題で刑事告訴されていた元輪番と元副輪番について京都地検は、昨年の暮れに不起訴の決定をしました。従いまして当問題が刑事事件として審理されることはなくなりました。
しかし、この事件の処理が終わったわけではありません。刑事事件の背任罪には相当しなくても、北山問題で明らかになった事実は宗門への信頼を失墜させるに充分なものでした。今回の京都地検の決定は、宗門の問題は宗門で解決せよとの判断が下ったと解釈すべきと思います。
総局が、刑事告訴を決断したことが、問題の解決への宗門の動きを決定づけたのは事実です。その判断に誤りはなかったと思います。ここで躊躇する必要はありません。
今回の事件が刑事罰に相当しなかったとしても、宗務員の服務規程に抵触しますし、また僧侶としての道義的責任も問わなければなりません。ここで宗門に、事件当事者たちの宗教者としての責任が問えなかったとしましたならば、それこそ本願寺派の社会的信用はますます地に落ちてしまいます。
無憂樹(2002.1.16)
資料
(中外日報 2002.1.8)
本願寺派「北山問題」
元輪番を不起訴処分 京都地検
京都地方検察庁は、昨年末、浄土真宗本願寺派(武野以徳総長)の本願寺北山別院の墓地造成問題(「北山問題」)で二億円の無認許債務保証を行なったとして昨年八月に同別院により背任罪で刑事告訴された元輪番を不起訴処分とした。
犯意認定困難と判断か
二億円の無認許債務保証
この元輪番は、在職中の平成九年三月、墓地造成事業推進のため北山別院と葛檮纉d鉄が協同で設立した竃k山墓苑が大和銀行から二億円を借り入れるに際し本願寺派の法規に違反し、門主の認許を得ずに債務保証を行なったとされる。
その後、この二億円の債務は焦げつき、大和銀行は一昨年十月に北山別院等を相手取り二億円の債務履行と延滞利息の支払いを求めて大阪地裁に提訴し、現在も係争中。
北山別院は昨年八月、この元輪番を背任罪で京都地検に刑事告訴、続いて翌九月には元輪番とともに直接、債務保証に関与したとされる元副輪番も同じく背任罪で告訴した。
不起訴処分が北山別院および宗派当局に通知されたのは昨年十二月二十六日。
同月二十八日に武野総局は局議を招集。「不起訴の理由を検察側に明らかにするよう求めた上で今後の対応を決める」など、当面の方針について協議した。
反社会的集団の関与解明困難に
宗政への動揺起こらぬ?
今回の告訴について法律専門家らの中には「債務保証はあくまで墓地事業推進を前提として行なわれたものであり、犯意の認定が困難」と危慎する向きもあった。
しかし武野総局は「関係者のほとんごが自らの責任を回避しており、宗内の調査では二億円の金の流れを解明することは困難。問題をうやむやにせず宗派の社会的責任を果たす」と告訴に踏み切った。
告訴は、宗会のほぽ満場一致の賛同のもとに行なわれた。今回の不起訴処分が直ちに宗政に動揺をもたらす可能性は薄いと思われるが、宗内の一部には「告訴は個人の人権にかかわること。もっと慎重に対応すべきではなかったのか」と総局の対応に批判的な意見もあるようだ。
これに対し総務の一人は「債務保証は宗門の法規に違反して行なわれており、告訴はそれに基づいた措置。起訴・不起訴は検察の判断だが、検察も告訴状は受理しており告訴そのものが誤った行為だっだとは思わない」と語っている。
なお、今回の不起訴により、告訴の目的であった二億円の金の流れや墓地造成計画への反社会的集団の関与の実態が未解明のままで“闇”に葬り去られる恐れがあり、宗派当局が今後これらの点についてどう対応してゆくのかが注目される。
|
|