10月24日から開催された定期宗会は、武野総局の総辞職、そして、再任という波瀾の宗会でありました。
大谷本廟近接地の購入問題、総長の新たな国立追悼施設をつくる会加入問題と中央相談員休職の問題等、総局にとって難題が山積している宗会でした。総局総辞職かまたは宗会解散が予想されたというより期待されていたといった方が良いかもしれません。
結果的には、総局総辞職という形になりましたが、ご門主の指名は武野氏と普賢晃寿氏ということで、実質的に武野氏は門主の信任を受けての再任となり、第2次武野総局はより強固な信任を得たことになりました。
今回の再任劇について、現在知り得た情報の段階で分析を試みてみたいと思います。
まず、注目しなければならないことは、総辞職は期待されていましたが次期総長候補については下馬評どころか噂もなかったということです。反武野総局側には明確なビジョンがなかったということになります。
今回の騒動の中で、ご門主の言葉を両者が都合よく解釈して利用してきたという経緯があります。後にも申し上げますが、宗門が門主をこのような形で利用してしまったということは、宗派のあり方として大きな問題を残したと思えてなりません。したがってその轍を踏みたくないのですが、今回の再任のキーポイントでもありますので、敢えて、門主の武野氏指名の理由を考えてみたいと思います。あくまでも憶測の域を超えないことをお断りいたします。
今回の結果から、ご門主は、政府の新しい国立追悼施設設立の動きに対して宗門が積極的に発言していくことを望んでおられ、その動きとしての総長の「つくる会」加入も支持しておられると推察されます。
7月に総長が「つくる会」加入を公表し、基幹運動中央相談員等から反対の意見が表明されるなど宗門の意志統一が難しいことが明らかになってきました。その中で、8月26日に中央相談員全員に休職の辞令が発令されるなど、宗門内の対立の構図が明確化していく中、ご門主は千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要に急遽出席を決意されました。この意味を振り返ってみますと、ご門主はそのような事態を憂慮され、総長の新しい国立施設建設を要求する内容を含む挨拶に立ち会い暗にその意志を表明することにより混乱の収拾を願われたのではないかと考えられます。
新しい国立追悼施設の問題は、宗門内に止まる問題ではなく対外的なものであり、かつ政府が動いている今でなければその意味が失われてしまう日限のある事柄です。ましてや、靖国に絡む問題を対外的に国の施策に宗門としての意見を述べることはなみなみならぬ決意です。したがって、特に比較すべき強力な対抗馬もないために武野氏再指名を選択されたのだと思います。継続性を維持することを最優先されたということでしょう。
このように申しますと、責任は反対した中央相談員側にあるかのようにとられてしまうかもしれません。しかし、その経緯を振り返ってみますともっと複雑であり、むしろ総局側の指導力のなさに混乱の原因があったと考えられます。その一つ一つの事柄をあげつらうことはいたしませんが、直情型無責任体質という一語につきると思います。新しい国立追悼施設の件について総局は宗門内を説得する能力を持ち得ていなかったのです。極論すれば総局はすでに信頼を失っていたということになります。
総局の中央相談員休職という手法は、総局自らが宗門内でこの問題について論議できない状況を演出してしまいました。そのような中、総局と反総局グループの対立は深まるばかりで、宗門内では新しい国立施設の話題は踏み絵と化してしまいました。一部に意見の異なる者への人格攻撃ともとれる動きがあったことは、共に基幹運動を推進してきた立場として非常に残念に思います。
宗門内においては、反総局グループのシンパが多数派だと思われます。しかし、結果的に判断すると、総局批判を新しい国立施設の問題に収斂させてしまったことに決定的な判断ミスがあったということだと思います。言い換えれば、大局的にこの問題を見ることをせず、批判の道具に利用したところに最大の欠陥があったということです。
今回の事態を宗門運営のあり方という視点で考えますと、総局および、宗会が責任を負うべきことを門主に委ねた結果になったことは、問題視しなければならないことだと思います。宗門の民主主義は宗会が守るべきであり、総局は門主の立場を守るべきであるのに無策のまま門主に裁定を委ねてしまいました。このようなことが繰り返されるようだと、宗門の組織は明治以前に逆戻りしてしまうことになりかねません。
第2次武野総局は、そのような意味でも非常に重い責任を背負ったことになります。先の宗会で武野総局は、新しい追悼施設の問題を論議する以前に政権の維持が困難な状態に追い込まれていたのです。武野総長は総局の宗門内での信頼回復が最優先の仕事になります。自らの直情的無責任体質を改善し、宗門内の対立構造をできるだけ早く解消し、まともな論議ができる状況を回復しなければなりません。武野総局は基幹運動の抜本的な改革を含めた構造改革を考えているようですが、信頼できない総局が機構改革に手をつけることなど私たちは真っ平御免です。
総局の専横を許さない意味でも、宗会議員諸氏に大いに期待いたします。宗会の動きには、注目し続けていかなければなりません。
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無憂樹 2002.11.05 |
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