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103  坊守に関する改訂法規に異議あり


坊守に関する改訂法規に異議あり

 「坊守については段階的に整備すべきで、その第一段階が今回の『宗法』の改訂」等との意見が委員会答申には付帯されているとのことであるが、今回改定された『宗法』『宗規』『本願寺寺法』を見る限りでは、「坊守」は呼称としか読みとることができず、坊守の位置づけを後退させたものであると言えよう。法制審議会坊守専門員会では、議論の根底となる「坊守」の共通認識はいかなるものであったのだろうか。また、当事者である坊守方の声をどれほど聞いたのかと数々の疑問が涌いてくるのである。


坊守は呼称!?
 今まで法規上措置がなされていなかった「お裏方」に関し、本願寺寺法で「住職の配偶者を坊守という」(第十六条の二)と位置づけし、これを受け、宗法で「裏方は、本願寺の坊守が当たる」(宗法第十三条の二)と法規上の措置がとられたのだが、任務の条項は見当たらない。更に付け加えて言えば、本願寺の坊守は責任役員に就任することも出来ない。
 では、一般寺院の坊守条項はどのように改定されたのであろうか。「『坊守』は寺族であって、当該寺院備付の坊守名簿に登録された者であり、登録された者は『坊守式』を受式しなければならない」となったのである。寺族、坊守の条件は細則に委ねることになっているそうだが、少なくとも坊守の性別は撤廃されたと推測できる。現行宗法では、「住職の妻」と性別が明記されてはいたもの、住職の補佐であっても「教化の任にあたる」とその任が規定されていた。しかし、改定された宗法、宗規には坊守の任は全く規定されていない。義務づけられた坊守式の定義を見ると、「坊守式は、坊守としての本分をつくす旨を仏前に誓約する儀式である」(坊守式規程第二条)とある。では、この「坊守の本分」の根拠をどこに求めるのであろうか。「任」の規定がない坊守の概念とは、その本分とは極めて不明確であり、曖昧ではないだろうか。
 更に、坊守並びに寺族代表者(坊守が複数の時は協議の上選定、また坊守不在の場合又は特別な事由がある場合は、成人以上の寺族で互選)は、現行では住職の権限外で就任していたが、改定法規では当該寺院備付坊守名簿に登録された者とあるところから、住職の意向により決定されるのであろう事が読みとれる(宗規第二十六条、寺族名簿の登録又は抹消は、住職が行う)。寺族間における一層の住職権限の強化に繋がる危惧はないだろうか。


これで男女共同参画?
 女性僧侶が増加したといえども、女性住職はまだ少数であり、更に女性住職の配偶者となると更に少数である。本願寺寺法で規定された如く、一般寺院においても「住職の配偶者を坊守という」と規定されたとしても、坊守は圧倒的に女性である。そのことを見込んで、坊守から「任」を外し、位置づけを曖昧なものにしたと言うのは過言とは思うが、いかに当事者主権とはほど遠いところで論義され、答申されたと言えよう。
 真宗教団の歴史的概念や社会的通念(『浄土真宗で、僧侶の妻』広辞苑)を改変し、性別を外し、法規上男女平等にし、男女共同参画を推進する方途として規定された『坊守規定』であろう。しかし、以上述べたように、現在の坊守から見るとあまりにも危惧されることが多すぎると思うのは私一人ではないと思う。

 宗門において、「坊守」という言葉には長い歴史と伝統があり、「住職の妻」が担ってきたのである。現行の坊守を、単に「住職の妻」から「住職の配偶者」に変更するのではなく、「坊守」は歴史的伝統的な呼称として残し、従来坊守が担ってきた任務を別途に規定する方向もあったのではないだろうか。


               

無住庵  
2004.4.1


参考

改定宗法
(寺族)
第二十六条 寺族とは、第二条の目的を遵奉し、当該寺院備付の寺族名簿に登録された者をいう。
2 寺族は、仏祖の冥加を感謝し、住職または住職代務を補佐して、この宗門及び本山並びに寺門の護持発展に努めなければならない。

(坊守)
第二十六条の二 坊守とは、前条の規定による寺族であって、第二条の目的を遵奉し、当該寺院備付の坊守名簿に登録された者をいう。
2 前条二項の規定は、坊守について準用する。
3 坊守は、坊守式を受けなければならない。
4 前条およびこの条の規定は、教会に準用する。
   (2004年3月8日公示)

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