Keyboard Mania
キートップの加工方法について解説します。
二色成型 先に文字を除いた外形部分を成型し、その後文字部分に着色樹脂を流し込みます。樹脂の色は自由に変更できるので、濃色系キートップに明彩色の文字といった対応もでき、鮮明で耐久性の高いキートップです。一時はほとんど見られなくなった製法ですが、最近になり、文字を透過発光させるために再び採用される例が出てきました。キーボード以外では、高級電卓やゲーム機のコントローラーのボタンなどでも見られます。
昇華印刷 無地のキートップに印刷物を転写します。熱と圧力がかかるので、エンジニアリングプラスチックと呼ばれるような、高耐久性の樹脂を使う必要があります。気化したインクを染み込ませるため、文字の周辺が若干滲んで見え、またキートップ素材色(一般的にはクリームやグレー色)の影響を受け、コントラストの低い印字になります。濃色系のキーボードには不適ですが、最近ではデザインが多様化し、あえて採用することもあります。基本的には高価なビジネス端末に多く採用されています。
シルク印刷 無地のキートップにスクリーン印刷またはパッド印刷を行います。耐久性を高めるために、透明なクリヤーインクを重ねて印刷したり、全面塗布する場合があります。樹脂とインクの親和性により性能が左右されますが、インクの高性能化が進み、初期の頃ほど容易に剥がれなくなりました。他の製法でも、キーの側面だけはこの方法で印刷されることが多いです。
レーザー印字 無地のキートップに、レーザーで文字を焼き付けます。新品の状態では、文字表面が少し盛り上がっています。インクではないので自由な着色はできません。一般的には白色系樹脂を黒く焼き付けますが、 最近では焼けると白くなるように樹脂を改質して、濃色系キーのレーザー印字も実現しています。
塗装+レーザー抜き加工 以前から存在している製法ですが、2020年代になりゲーマー向けキーボード用として再流行しているようです。文字のない(半)透明のキーキャップの表面を塗装した後、レーザーで文字抜き加工をすることで、バックライトによる文字照光が可能となっています。少し手間はかかりますが、日本語(小ロットであることに加え複雑な漢字やかな文字に対応)など各国キーボードへの対応も容易です。メタリック、パール調などの塗装も可能なので、ボディ全体と色調を合わせるようなモバイル用途にも採用されます。見た目からは判断できないですが、もしかするとエッチングや塗料を弾くような特殊インクなどの手法を採ったものもあるかもしれません。
分かりやすくするために、画像はやや大げさに描いてあります。
ある程度見慣れてくると、どの方式で作られたのか判別できるようになります。その他、以下のような例もあります。
二色成型+印刷 橙の部分は濃色樹脂、白の部分は透明樹脂、赤の部分は隠蔽色のインク層です。下からLED光を当てることで、文字部分だけが光る意匠になります。文字毎に成型パターンを用意する必要は無く、対応パターンの多様化を狙ったものと見られますが、製造工程が複雑になり、トータルコストは決して安くないと思われます。ノートPCなどでは、2色成型でなく単体の透明樹脂を使い、上面だけシルク印刷(またはシルク印刷したものを転写)にすることで、サイドからの弱い光漏れを狙ったものもあります。
インサート成型 薄いフィルムに裏面からシルク印刷で文字や周囲の印刷を行い、その後樹脂を注入、フィルムごと成型加工してしまう方法です。シートへの自由な加飾デザインが可能な上、表側はフィルム層なので耐久性が高いという利点があります。文字を透過色にして、透明な樹脂を流し込むことで、裏側から文字部分だけ光らせるといったことも可能になります。一般のPCキーボードでは未確認ですが、モバイル機などで見られる製法です。
インサート成型+レーザー加工 シルク印刷ではニジミやカスレといった問題が出やすく、隠蔽性にも限度があります。こういう問題を解決するため、シルク印刷を重ねて厚めに塗膜層を形成し、後からレーザーで抜き加工を行います。文字を際立たせ、よりコントラストの高い発光パターンが実現できます。
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