Keyboard Mania
2022.01.02更新
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90年代以降、コンピュータの大衆化、大量生産により、高性能で実用的なPCが過去とは比べ物にならないくらい安価になりました。しかし、PCとしての性能は年々向上するものの、スペックに表れない部材のコストダウンが進み、その影響を最も受けているのがキーボードであり、著しい品質低下がみられます。
キーボードは、人間からPCへの情報伝達手段として古くから採用され、現在なお必要不可欠な入力デバイスとして君臨している装置です。操作体系が進化し、マウスやタッチパネルなども出現していますが、これらは時代とともに、場所、時間を選ばすにコミュニケーション、エンターテイメント利用の目的としてコンピューティングする機会が増えていった結果、補完的な役割として追加されたものです。20年前、30年前に比べてPCによるキーボード入力も確実に増えている今、大事な入力装置であるキーボードにこだわってみようというのがこのウェブサイトの主旨です。
PC/AT互換機が普及したおかげで、メーカー製PC付属のキーボードから解放され、様々な選択ができるようになりました。私自身、より使いやすく、打ち心地の良いキーボードを求めて情報収集を始めたのですが、当初は雑誌などの文献を見ても内容が断片的で正確な情報が得られませんでした。それならば地道に調べていった方が良いと思い、各種キーボードを入手、評価、公開することにしました。その後、サイトを通じて皆様からの情報提供のおかげで分かったことも数多くあり、これらに基づき、良質なキーボードを選択する際にポイントとなる要素をまとめてみました。
2005年を越えたあたりで過去の情報はほぼ出尽くし、しばらく無更新状態だったのですが、いただいた貴重な情報を維持することも大切ですので、サイトを消滅させず維持してきました。面白いことに、最近ではゲームユーザー向けのキーボードを発端として、海外ユーザーを中心により高品質なキーボードを自分たちで作り上げようとする動きがみられるようになり、これがメーカーを動かすという良いサイクルが出来つつあります。興味をもってしばらく追いかけてみようと思います。
MENUスイッチの構造
キートップ文字
キートップの材質・構造
軸の形状・材質
キーボードの形状
まとめ
キーボード紹介
ビンテージ系キーボードの購入
現代の高品質キーボード
キーボードの保管
キーボード関係リンク
更新履歴
---2021.07.02---
キーボード紹介
DELL AT101にメンテナンスを追加しました
---2021.07.02---
カスタム系キーボード改め、「現代の高品質キーボード」に
Model F Projectを追加しました。
---2021.07.02---
キートップ文字の表記方法に、二色成型vs昇華印刷を追加
リンク切れの確認、文章の書き直しなど、サイト全体を
見直しました。
---2021.07.02---
久しぶりに秋葉原でキーボード調査をしたら、
ゲーマー向けキーボードに新しいキートップの製法があるのを
確認しました。
キートップ文字の表記方法、図解解説1、図解解説2を
更新しました。
---2018.11.19---
キーボード紹介のHHK PD-KB01の経過観察を更新しました。
---2018.06.16---
キーボード紹介に、Zenith ZKB-2を追加しました。
---2018.01.11---
カスタム系キーボードの楽しみ方に
互換スイッチの例を追加しました。
---2018.01.08---
キーボード紹介に、Rapoo V500を追加しました。
---2018.01.07---
キートップ文字の表記方法に、図解解説2を追加しました。
2色成型のキートップを世代別に分けてみました。
---2017.08.25---
キーボード紹介 FC-200Rのところに
キートップのカスタマイズを追加しました。
---2017.05.26---
キーボードのカスタマイズを 楽しむ流れが大きくなっていることに
気付き、興味が湧きました。メニューの現行品購入リストを、
ビンテージ系キーボードの購入、カスタム系キーボードの楽しみ方の
2つに分割しました。
---2017.03.31---
久しぶりにキーボード関連のサイトをチェックしてみましたが
多くが閉鎖されていますね。キーボードに限らず、
個人ホームページというもの自体 減る一方で
新たに作られることはまずないですから・・
現行品購入リストを全般的に更新しました。
---2016.07.18---
キーボード紹介にHHK Lite2を追加
だいぶ前に購入していたのを忘れていました。
---2015.05.30---
キーボード情報にデータ追加
DELL SK-1000RE
スイッチの構造
キースイッチを構造別に分類すると下記のようになります。それぞれのスイッチに各種反発機構を組み合わせ、打鍵感が演出されます。
スイッチの種類 反発機構 打鍵感 代表的な製品例 耐用回数 メカニカルスイッチ コイルスプリング
リーフスプリングクリックタクタイル ALPS製スイッチ使用のOMNIKEYキーボード 2000万回〜 タクタイル ALPS製スイッチ使用のAPPLE拡張T、Uキーボード リニア NEC製(実はAPLS)スイッチ使用のNEC PC-9801キーボード メンブレンスイッチ コイルスプリング クリックタクタイル IBM製のBuckling Springキーボード 500万回〜
3000万回
(構造による)コイルスプリング
リーフスプリングリニア Cherry製のG81シリーズ リーフスプリング
ラバードームクリックタクタイル Fujitsu製Peerlessキーボード コイルスプリング
ラバードーム(軽い)
ラバードームの感触Fujitsu製Libertouchキーボード ラバードーム ラバードームの感触 現行各社PCのキーボード 導電ゴムスイッチ ラバードーム ラバードームの感触 Mitsumi製のIBM-B01キーボード データなし 静電容量スイッチ ラバードーム
コイルスプリング(軽い)
ラバードームの感触Keytronic製キーボード
東プレ製Realforce3000万回〜 メカニカルスイッチ
キー毎に独立したスイッチユニットが内蔵されているタイプです。メカニカルスイッチは、ユニット内部の金属接点が接触することによりスイッチがONになるもので、これらのスイッチはCherry社やAlps社(現在はAlpsにライセンスされた別の会社)など、専門メーカーにより供給されています。正規品は品質、耐久性ともに高いですが、これを真似た低品質なコピー品も出回っているので、メカニカルだから良いとは言い切れません。 ”カチカチ”というクリック音があるものを”メカニカルキーボード”と称する場合もあるようですが、ここではメカニカルスイッチ式キーボードとは別扱いとします。
メンブレンスイッチ
メンブレンスイッチは、主に3層のフィルムから構成されます。上下のフィルムには電気回路と接点が印刷されています。中央のフィルムはスペーサーの役割りを果たし、接点はわずかに浮いた状態を保っています(スペーサーフィルムの代わりに、上下シートにスペーサーを厚盛り印刷したタイプもあります)。スイッチ自体はキーストロークと反発機構を備えておらず、多くのキーボードではお椀状のゴム(ラバードーム)が採用されています。打鍵特性を改善するために、ラバードームと金属スプリングを併用したキーボードも、わずかに存在します。
導電ゴムスイッチ
電子回路の基板上に、接点が内蔵されたラバードームが配置されたものです。古くからリモコンや家庭用ゲーム機のボタンに利用され、実績もあるのですが、ほぼ同じ性能のものがより低コストなメンブレンスイッチで実現できるようになり、一部メーカーに残るのみです。静電容量(無接点)スイッチ
基板上の固定電極と、キーの可動電極の間の静電容量の変化を検出し、ON-OFFを判定するスイッチです。物理的な接点が無いため、劣化も無く耐久性が高いです。メンブレン式同様、キーストローク、反発機構が必要となりますが、もともと高耐久性を目的として開発されたスイッチのため、これら周辺機構も相応の設計となり、結果的にキーボード全体が高品質となります。一般向けよりも業務用途で多く採用されています。
反発機構
キーボードの反発機構には、(金属)コイルスプリング、(金属)リーフスプリング、ラバードームの3種が挙げられます。2種類を組み合わせて、片方が反発機構、もう一方が打鍵感調整の役割りを担っているものもあります。例えば、ALPSのメカニカルスイッチは、コイルスプリングとリーフスプリングの2種類が使用されています。またIBMのBuckling Springという方式は、コイルばねに一定以上の力がかかると折れ曲がってクリック音が得られるという、一人二役を実現しています(この構造には感心させられます)。他方、大多数のキーボードでは、より低コストなラバードームが採用されています。
打鍵感(クリックタクタイル/タクタイル/リニア)
世の中には無数のキーボードがあり、それぞれキータッチが異なります。まるで料理の味付けのようでもあります。明確なクリック感のあるものから、全く無いもの、またその中間程度のものもあり、言葉で表現するのはとても難しいですが、下記のような用語が使われます。
・クリックタクタイル スイッチがONになったことが音と感触で認識できるもの。このサイトでは省略してクリックと呼ばれます。
・タクタイル クリック音は無いが、押下の最中に何らかの感触が認識できるもの。ソフトタクタイルと呼ばれることもあります。
・リニア クリック音も感触も無く、押し始めから押し切るまでスムーズで、全く引っかかり感の無いもの。
メカニカルスイッチは、メーカーが明確に区分していますが、ラバードームの場合は、上記タクタイルが近いものの、ゴム特有の”ポコポコ”或いは”グニュ”といった感触が目立つので、”ラバードームの感触”と表現した方が理解しやすいと思います。金属スプリングとの組み合わせで、このゴム特有の感触を低減させた商品もあります。
メカニカル式の打鍵感が良いとされがちですが、これはキーボードが高コストだった時代に設計されたことによる理由が大きいです。現在大半を占めているのは、メンブレンスイッチ+ラバードーム方式のキーボードですが、コストダウンと同時に品質低下も進んでしまったものが多く、全体的な評価が下がってしまいました。よく研究しているメーカーの製品には、ラバードームならではの素晴らしい打鍵感のものもあります。
キーを打ち切ったときの底を打つ感触、筐体の剛性なども打鍵感に影響します。また、軽く触ってみた時と、実際に文章を入力してみた時では、感想が違うことが多いです。これはスイッチがONになるタイミングや、連続で入力したときのリズム感、また本人の体調など、色々な要素が複雑に絡み合っているためです。最初は今ひとつだと思っていても、慣れると非常に使いやすくなることもありますので、しばらく使い込んでみてから良し悪しの判断をするのが良いでしょう。
また、日本語入力は、多くの国々のように入力したい文字を直接タイプするのではなく変換を伴うものであり、特にローマ字入力となると高速で連続的なキー入力が必要となります。国内では長らくリニアもしくはそれに準じたタイプが好まれてきたのには、そのような理由があるのかもしれません。国内でのキーボードやキースイッチの評価が世界的なそれとは異なる可能性があることにも留意しておきたいものです。
スイッチの耐用回数
各メーカーの資料を参考に記述したもので、相対的な比較ではありません。メカニカルスイッチの場合は接点が摩耗し、断続的にON-OFFを繰り返す”チャタリング”と呼ばれる現象や、経時による接点の酸化で無反応になったりします。メンブレンは接点が導電性カーボンなので基本的に耐久性が高いのですが、先に軸やスタビライザー部分の劣化が進み、使用に耐えられなくなることが多いようです。接点に押下圧がそのままかかる設計のものは、強く押され続けることで想定以上に消耗が進む可能性はあります。
キートップ文字の表記方法
キートップの文字・記号表記には、5種類の製法を確認しています。
種類 特徴 二色成型 キートップ全体と文字部分が異なる色のプラスチックで成型されている 昇華印刷 紙に印刷した文字をキートップに転写、熱と圧力で内部まで浸透させる シルク印刷 スクリーン印刷またはパット印刷という方法で印刷する レーザー印字 レーザー光で表面を焼き付け、焦がして文字を形成する インサート成型 フィルム裏面にパターンを印刷し、樹脂を流し込んで一体化する
二色成型
利点
- 耐摩耗性が高い(表面が摩耗しても文字は残る)
- 文字色が鮮やかでエッジが綺麗
- 多様な色の組み合わせが可能(黒に緑文字など)
欠点
- 高コスト(少量生産の場合)、仕様の変更が困難
- 漢字などの複雑な字体を表現することが難しく、省略文字になる場合がある
専用の金型が必要なため、初期費用はかかりますが、同一仕様を大量生産したり、色違いの製品を作る際には有利です。一時はコストダウンのあおりを受け絶滅しかけましたが、その後高級品の証とされたり、文字を透過させて光らせる用途のために復活しています。まれに、古い金型の使い回しなのか、激安キーボードで使用されている例が見られます。年代が新しくなるにつれ工法も変化しているようです。
昇華印刷
利点
- 工程上キートップに熱がかかるので、耐熱性の高い高級プラスチックが使用される
- 印字が浸透している上に樹脂の耐摩耗性も高いので文字が消えにくい
欠点
- 文字のエッジが滲んでしまう(浸透させるため)
- 鮮やかな色が出ない、濃色樹脂には不適(インクが浸透し、樹脂の色と重なるため)
昇華印刷タイプは材料自体が高価になるため、必然的に採用されるのは高級キーボードとなります。転写で印字できるため、納入先の専用端末ごとに異なる表記にするなどの利用方法があります。経年変化による樹脂の変色が少ないのも特徴です。
シルク印刷
利点
- 鮮明で様々な色の印刷が可能
- コストが安い
欠点
- 耐摩耗性や耐油性が低く、短期間の使用で剥離する場合あり
昇華印刷と違い、キートップ表面に文字が厚く載っているようなイメージです。爪の引っかきや、ハンドクリームなどに弱いです。耐久性を強化するために、文字の上に透明のクリヤーインクを重ねて印刷しているものもあります。濃色系キーボードに多く見られます。初期の頃よりも品質はだいぶ向上しているようです。
レーザー印字
利点
- 耐久性が高い(文字が消えにくい)
- 低コスト
欠点
- 表面を炭化させるだけなので色の選択性が無い(安っぽく見える)
当初は白色系樹脂にしか対応できませんでしたが、材料の改良が進み濃色系樹脂を焼き付けて白く印字することも可能になりました。コストが安い割りに耐久性が高いです。また、キーボード毎に印字していくので、少ロット生産にも対応しやすいです(EU圏内で有利?)。
その他
・塗装+レーザー抜き加工
・特殊インクによるシルク印刷+塗装
・シルク印刷+レーザー抜き加工
・インサート成型
近年は、文字部分を透過にして文字照光にする例が増えてきましたが、2色成型だけでなく様々な手法がとられています。写真は塗装+レーザー抜きの例です。一時期はレーザー印字ばかりになりましたが、シルク印刷の品質が向上し(低価格品では)盛り返しています。また、一部の高級キーボードでは昇華印刷、文字照光にするため塗装+レーザー抜き加工や二色成型など、目的に合わせてそれぞれの製法が選択されているようです。
もう少し詳しく知りたい方は、ミクロの世界及び図解解説1、図解解説2を、また二色成型vs昇華印刷も併せてどうぞ!
メーカーによる、キートップ文字についての解説はこちらにあります。 ※リンク切れになりました
http://magazine.fujitsu.com/vol48-4/5-4.html
コストダウンの影響は、プラスチックの材質・構造にも現れています。例えばDELLのメカニカルキーボードはモデルチェンジを繰り返しながら10年以上作り続けられてきましたが、外観こそ大きな変化が無いものの、キートップの裏側を見てみるとプラスチックの厚みや構造が違い、素材も異なるのが分かります。コストダウンと製造技術の向上は表裏一体の関係にありますが、数値的なスペックが一緒でも、感覚的にはだいぶ変化するようで、古い製品は”コツコツ”といった重厚感のある感触だったのに対し、最近の製品は”カチャカチャ”という安っぽい感じになってしまいました。
左:DELL101 右:DELL104
キータッチを決定する要素の一つとして、軸の形状・材質も挙げられます。しっかりと設計されている軸は、滑らかな動作で長く使い込んでも変化が少ないですが、設計が悪いと滑りが悪く引っかかる感じになりますし、材質が悪いと経時による感触の変化が大きくなります。摩擦力の低減を考慮したものは、軸とスライダーに異なる材料を使っているのが普通です。
--> 軸についての考察
ALPSのメカニカルキースイッチです。スイッチ自体に軸が搭載されています。メカニカルスイッチ以外のキーボードでは、筐体側に軸を用意する必要があり、各社各モデルともに多様な設計が見られます。
薄型キーボードでは軸の役割りを、”パンタグラフ機構”で代替するものが増えてきました。キーの両側にパンタグラフ状の伸縮機構が搭載され、キートップが平行に押し込めるといった優れた機構です。複雑な構造でコストもかかると思われますが、それに見合った効果もあり、薄型キーボードの主流となっています。
昔のPCカタログには、スペック表に”シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー・キーボード”というような表記があったのを覚えています。これがどのような意味を示すものなのか調べてみたのですが、各社さまざまな表現方法をしていて、正式な文献が見つかっていません。ある程度推測ではありますが、各用語を説明すると下記のようになります。
シリンドリカル
"Cylindrical"は直訳すると円筒状のという意味です(Cylinderの形容詞化)。昔のキーボードは、キートップの形状が中央に向かってお椀状(または逆ピラミッド状)に窪んでいました。現在でもスーパーなどのレジなどでこういう形状のものを見かけますが、PC用のキーボードは、多くが円筒状に窪んでいる、シリンドリカルタイプです。
Kinesisのキーボードには、一部お椀状(名称は不明)のキーが使われています。ブルーのキーがそれにあたります。白のキーはシリンドリカルです。 ステップ・スカルプチャー
"Step"は”段”という意味ですが、キーの上中下段を横から見た時に階段状になっているという意味でしょう。昔の機械式タイプライターがこの形状であったため、初期のPCはそれを模倣していました。その後入力しやすいようにさまざまな改良が行われ、指が届きやすいように湾曲させ(Sculpture: 彫刻?)、ステップと組み合わせたものが現在の標準となっています。
ステップ (1) ステップ・スカルプチャー (1) ステップ (2) ステップ・スカルプチャー (2) ステップ1は、昔のタイプライターの形状そのままで、今見るととても使いやすいとは思えませんが、70年代初めまでのコンピュータ(IBM System1、Facom230等)はこのような構造だったそうです。ステップ(2)はキートップを傾けることで段差感を出したもので、ノートPCや薄型キーボードで見られます。
改良が重ねられ、ステップスカルプチャー(1)、ステップスカルプチャー(2)のようなタイプが完成されました。キートップの形状がそれぞれの段で異なるステップスカルプチャー(2)の方がキートップの種類が増えますが、基板面を平行にできないステップスカルプチャー1の方が設計が難しく、高コストなのではないかと思われます。実際、このタイプは高級なキーボードに多いです。一部メーカーにより”カーブドスカルプチャー”と呼ばれることもありますが、ステップ構造自体は存在しますので、ここではステップスカルプチャーの一種として扱います。コンピュータの世界では20年以上もの間、”シリンドリカル・ステップ・スカルプチャータイプ”が主流となっていました。しかしながら最近では家庭用PCを中心にキーボードも薄型化の傾向があり、平面的なキーボードが増えてきています。
ステップ・スカルプチャー”風” このようなタイプも見つかりました。一見、ステップスカルプチャー(2)に似ていますが、最上段を除き全て同じ形状のキートップが並んでいます。このような設計にする意図はわかりませんが、パーツの種類を減らして組立て時の省力化を狙ったものかもしれません。
ここまで、キーボードの構造、製造方法、品質について調べてきました。しかしながら、これだけで最高のキーボードを選ぶのは困難です。 また、様々な要素によりそのキーボードが成り立っているので、どのタイプが良いと説明するのは簡単ではありません。筐体の剛性バランスなども品質に影響するので、スペックよりも実際に触ってみて(できれば長期間試用して)、好みのキーボードを選ぶのが良いと思います。
私が所有している、PC用US配列のキーボードを紹介します。PC互換機はアメリカを起源とするので、US配列のキーボードが最も多彩で、自然にUS配列を中心としたコレクションになりました。
(日本でも、早い段階でコンピューティングが進み、草創期に日本語入力方法が研究されたことにより、多様なキー配列が生まれています。ところが90年代に入りIBM方式のPC規格が一気に普及したため、それまでの配列は一掃されてしまいました。しかしながら、他国では見られない独特な配列や、一部に根強く支持されている親指シフトキーボードなどに、その歴史の深さを垣間見ることができます。)
名称 画像 コメント IBM
1391401- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
有名なIBM101キーボード。"IBM Enhanced Keyboard"とか"Model M"とか呼ばれているもので、最大生産量を誇った1391401です。87年〜95年頃まで製造され、年式により若干変化がありますが大局的には同じものです。この個体は一時期だけにみられる、白色ユニットのもので、何となく柔らかなキータッチです。
IBM 1991 Made in U.S.A.IBM
41G3576
分解画像- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
IBM101キーボードは1986年から長期間製造され、膨大な種類のP/Nがありますが、ほとんどが同等品です。この41G3576も、1391401と同じものと思われます。Unicompのオンライン販売で購入(すでに販売終了)、ケーブル脱着可能。
Unicomp Nov.1999 Made in U.S.A.IBM
42H1292
分解画像- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
IBM製Enhanced Keyboardの最終版です。1391401からの設計を受け継いでいていますが、若干のコストダウンが見られ、キーの感触が少し劣ります。ケーブル脱着不可能。
IBM 1998 Made in United KingdomIBM
51G8572- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
IBMのRS/6000用キーボードですが、普通のPCにも接続できます。基本構造は1391401等と一緒ですが、右側のCtrlキーが”Ctrl/Act”という表記になっているのと、筐体裏側にスピーカーを搭載しているのが特徴的です。ロゴプレートは旧型のグレー。
Lexmark 1995 Made in U.S.A.IBM
SoftTouch
8184692
詳細調査- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(タクタイル)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
一見、普通のEnhanced Keyboardに見えますが、なんと内部にシリコングリスが塗りこまれていてクリック感はほとんどありません。ラバードーム版のQuietTouchとも違う感触です。
Lexmark 1996 Made in U.S.A.Dell
AT101
変革
メンテナンス- メカニカルスイッチ(タクタイル)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(2)
Dellの初期モデルに付属していたキーボード。ALPSのピンク軸スイッチを採用た1990年頃の製品です。キートップに重めのPBT樹脂を使用していて、CMや映画で使われるような、コトコトといった重厚感のある音がします。丁寧に打つと気持ちの良い入力になります。
Made in U.S.A.Dell
AT101W- メカニカルスイッチ(タクタイル)
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(2)
Dellのメカニカル最後期モデルです。デザインは初期のものと同じですが、ALPS黒軸スイッチを採用し、筐体やキートップの材質も安価なものに変更されています。ABS樹脂を使用しているせいか吸いつくようなキートップの感触で、カチャカチャとした軽快な音でラフに扱えます。2000年頃まで比較的容易に入手できるモデルでしたがその後生産終了。
Made in MexicoNorthgate
Omnikey 101
おまけ- メカニカルスイッチ(クリック)
- 二色成型
- ステップスカルプチャー(2)
多くの人が指名買いするほど有名だったキーボード、NorthgateのOmnikeyです。ALPSの白軸スイッチを採用しています。筐体は裏面が全て金属で重いです。CtrlとCapsLockを入れ替えるためのキートップとリムーバーが付属しています。現在はCVT社に引き継がれ、後継品が販売されています。
Made in TaiwanFujitsu
FKB4700- メンブレンスイッチ
- コイルスプリング+ラバードーム(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
富士通製の大型筐体キーボードです。反発機構はラバードームとコイルスプリングを組み合わせた独特な構造で、軽いクリック感のある上品な感触です。LEDがキーに内蔵されているなど、随所にこだわりが見られます。Windowsキー付きも確認しています。
Made in MalaysiaDatacomp
101- メカニカルスイッチ(クリック)
- 二色成型
- ステップスカルプチャー(2)
秋葉原で売っていた4000円程度の安価品です。よく見るとキートップ形状、スイッチ共にOmnikeyと全く同じです。同じ工場で作られたものなのでしょうか?裏面にはXT/AT切り替えスイッチがありますが、ケースのプラスチックが安っぽいことを考えると比較的新しいものかもしれません。
Made in TaiwanNMB
RT8255CW
スイッチ- メカニカルスイッチ(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(2)
NMBのメカニカル最高級機種、RT8200シリーズです。同社製のスイッチはとても軽いクリック感で、日本語入力に適しています。息の長い機種で、101キーからWindowsキー付き、スペースキーが左右に分割されたタイプまでありましたが、残念ながら生産終了になりました。
Made in ThailandNMB
RT8756C
分解画像- メカニカルスイッチ(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(2)
小型で、普通のメンブレン式101キーボードに見えますが、RT8200シリーズと似たようなスイッチを採用しています。Jamecoのオンラインで購入しました。一時期好んで使っていました。
Made in ThailandNMB
RT6800W
(Olivetti)- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(1)
Olivettiブランドですが、OEM元はNMBのRT6800Wというモデルです。薄紫色の筐体がおしゃれです。見た目と裏腹にとても頑丈な筐体ですが、キーストロークが短いようで、長時間打っていると指が疲れます。
Made in ThailandNMB
RT6800
(SGI)- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
上記と同じく、NMB製造、SGIブランドのRT6800です。デザインとキー数が一部違うだけで、構造は全く一緒です。SGI向けの特注仕様なのか、こちらの方が柔らかい感触です。
Made in ThailandKinesis
Model 134PC- メカニカルスイッチ(タクタイル)
- 二色成型
- 特殊形状
独特な形状のキーボードを作っているKinesisの製品です。Model_134PCはフットスイッチ付属で、足によるShiftなどの入力操作ができ、またすべてのキーをリマップできます。タッチは軽快(Cherryスイッチ使用)で気持ちいいです。配列には慣れませんが・・・。最近のモデルは文字がシルク印刷方式になっています。
Made in U.S.A.Compaq
Enhanced3- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- シルク印刷
- ステップスカルプチャー(2)
Compaqは、Cherry、MITSUMI、NMBなどさまざまなメーカーのキーボードを採用した実績がありますが、これはEnhanced3というスタンダード品(たぶんMaxiswitch製)です。初期の頃はLEDがキーに内蔵されていたり、2色成型だったりしていたのですが、これは見た目と裏腹に製法は新しいです。某マウスサイトの方からいただきました。
Made in U.S.A.IBM 104 - メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- シルク印刷
- ステップスカルプチャー(2)
台湾で入手。どうということのない普通のキーボードですが、英語/日本語版とは違い、色鮮やかな漢字が入っていてきれいだったので、とりあえず入手しておきました。
Made in ChinaIBM 84
1393278- メンブレンスイッチ
- バックリングスプリング機構(クリック)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(1)
101をそのまま小さくしたようなデザインですが、なぜか重量は同じくらいあります。2001年Unicomp製ということになっていますが、実は88年のデッドストックのようです。キートップだけUnicompが作っている可能性があります。
Unicomp 2001 Made in U.S.ACherry
G80-1800
HAU- メカニカルスイッチ(リニア)
- 二色成型
- ステップスカルプチャー(2)
私が持っている唯一のCherry純正のキーボードです。キータッチはLinerActionと呼ばれているもので、スイッチONになるまで全くクリック感がないものです。押し始めの位置でスイッチがONになるため、底に突くまで押し切らず、キーをなでるように打つのが正解のようです。
Made in GermanyFujitsu 87
FKB8744- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(1)
富士通のFKB8700シリーズでコンパクトな英語配列のものが欲しかったので、発売と同時に買いに行きました。しかしHHKなどに比べて感触が劣り、今ひとつでした。
Made in MalaysiaNMB
RT6600
(Compaq)- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- シルク印刷
- ステップスカルプチャー(2)
NMBの有名な量産モデルです。ラバードームながら軽くて気持ちの良いタッチです。これはCompaqブランドのものですが、一時期はかなりたくさんのメーカーが採用していただけあって、さまざまなロゴのものが存在します。日本語モデルの感触が秀逸で、英語モデルは硬めの調整です。
Made in ThailandTopre
Realforce
101- 静電容量スイッチ
- コイルスプリング+ラバードーム(軽いラバードーム感触)
- 昇華印刷
- ステップスカルプチャー(2)
業務用機器のキーボードを手がけるTopreから一般向けに販売されたキーボードが、Realforceです。キーによって押下荷重が異なるのが特徴。初めて使うときは軽すぎてびっくりするのですが、慣れると非常に高速に打て、疲れません。
Made in JapanPFU
HHK
PD-KB01
経過観察- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(1)
元祖HappyHackingKeyboardです。左右のバランスが整っていて美しいキー配列ですね。富士通オリジナル品と違って鉄板入りで、しっかりした打ち心地です。キー数が少なくて使いづらいと思っていたのですが、今ではすっかり慣れてしまい、職場で大活躍しています。
Made in JapanPFU
HHK
PD-KB02- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(1)
PD-KB01はPCとUnixに対応で1996年に発売、その後97年にすぐMacにも対応したKB02にモデルチェンジし、2005年まで販売されていたロングセラーモデルです。KB01とキータッチが違うという噂を聞いて入手してみましたが、感触は全く一緒でした。
Made in 表記なしPFU
HHK lite2
PD-
KB200W/P- メンブレンスイッチ
- ラバードーム
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(2)
HHK配列を気に入ってしまったので、初代を自宅で使用し、職場用として安価なライトを導入しました。グニャグニャした押し心地で引っかかりも多く、あまり好みでなかったのですが、タミヤのフッ素グリスを塗り込んだらいい感じになりました。S表記が上下反転?
Made in ChinaPhaethon
FC200R
詳細- メカニカルスイッチ(タクタイル)
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(2)
Cherry社のスイッチを採用したメカニカルキーボードです。FILCOのMajestouchと同等品ですが、取り外し可能なケーブルなど、いくつか改良点が見られます。コンパクトで無駄のないデザインには好感が持てます。
Made in TaiwanLeopold
FC200R
Tenkeyless
詳細
カスタマイズ- メカニカルスイッチ(クリック)
- レーザー印字
- ステップスカルプチャー(2)
Cherry社のスイッチを採用したテンキーレスのメカニカルキーボードです。FC200Rを名乗っていますが、フルキー版とはブランド名が異なります。
Made in TaiwanRapoo
V500
詳細
- メカニカルスイッチ(リニア)
- 二色成型※
- ステップスカルプチャー(2)
Cherry互換スイッチを採用したテンキーレスのメカニカルキーボードです。Gaming Keyboardで流行(?)の、筐体ケースが無く、ベース金属にスイッチが直接取り付けられているタイプです。わずか2000円ちょっとでこのレベルのキーボードが入手できるとは、いい時代になったものです。
Made in ChinaZenith
ZKB-2
詳細
- メカニカルスイッチ(リニア)
- 二色成型
- ステップスカルプチャー(2)
入手困難で長らく縁がなかったZenithのキーボードです。web動画で入力音が美しく気になっていました。実際打ってみると想像していたよりタッチが重く、リニアはCherryの方がいいような気がしますが、このキーボードの最も魅力的な点は、キートップ形状が打ちやすく作られているところだと思います。
Made in Taiwanバラエティーコーナー
上記で掲載した以外のキーボードを紹介します。
ガラクタ箱?
名前のとおり、ガラクタ箱です^^
ビンテージ系キーボードの購入
2021.09.20現在
輝かしい90年代後半からの自作PCブームはどこへやら、秋葉原のPCショップは数を大幅に減らし、いつのまにかNEOTEC、クレバリーの通販サイトもなくなっていました。古き良きキーボードの多くは生産終了となっていますが、一部根強く販売され続けている製品もあります。
ここでは現在でも購入可能な、ビンテージ系キーボードを紹介します。これらは私の独断によるもので、キーボードは人により好みが異なりますから、よく検討の上ご購入することをお勧めします。また、告知なしに販売終了やモデルチェンジされることが多い世界ですので、欲しいと思ったら早めに入手されるのが良いと思います。
2009.02.22追記:残念ながらDELLのAT101WとNMBのRT6600シリーズは生産終了になってしまったようです。
2017.03.31追記:残念ながらCVT(Northgate Omnikeyの後継品を作っていた会社)のwebsiteが閉鎖になってしまっています。
2021.09.20追記:富士通のFKB8769シリーズが2020年11月20日を以て注文受付終了となりました。ネットで検索すると、KB8540(Libertouch)も既に見つからず、唯一生き残っているのはコンパクトキーボードFKB1420シリーズのみのようです。
UNICOMP
IBMの伝統的なBuckling Springキーボードです。IBMブランドの製品(最終モデル101キーPS/2:42H1292)は販売終了になりましたが、これの後継機種がUnicompブランドの42H1292Uとなり、その後UNI041X、さらにUNI0416という型番になり引き続き製造・販売されています。これ以外にも、USBモデルや104キーモデル、ブラック筐体など派生モデルが存在します。もともとIBMキーボードはIBM自身が作っていたのですが、その後プリンタ/キーボード部門をLexmarkとして切り離し、さらにキーボード技術を引き継いだのがUnicompで、IBM/Lexmark時代からの従業員がそのまま働いているそうです。IBM/UK製の42H121292は一部機構が簡略化されていましたが、Unicomp製になってからは排水機構が復活するなど、Lexmark時代に近い仕上がりとなっています(UNI041X以降は未確認)。現在は筐体を少しコンパクト化したNEW Model Mや、テンキーレスタイプのMini Mなど、オリジナル商品が登場しています。生産時期によりデザインが異なることがあり、試行錯誤している様子が見て取れます。Online Shopで直接購入できます。
CHERRY KEYBOARDS
スイッチメーカーであるCherry社のキーボードです(会社自体は何度か売却されていますがCherryブランドはそのまま残っています)。自社ブランドのG80シリーズが有名ですが、一時期コストダウンの煽りを食らい、より安価な金属スプリング+メンブレンの仕様を出すまでになりました。その後Cherryスイッチの人気復活により、スイッチのOEM供給をメインに展開しているようです(一般ユーザー向けに併せ、G80シリーズ及び商業/工業用途向けのラインナップはwin10に対応して残っています)。過去にはNeotecやShopUで取り扱っていたことがありましたが、オリジナルモデルが市場に出回ることはあまりないです。Cherryスイッチを採用した他ブランドのキーボードの方が、こだわった仕様になっていることも多いです。
KEY TRONIC KEYBOARDS
メンブレン+ラバードームのキーボードですが、とても軽く滑らかな感触で高品質なキーボードです。東芝製PCやMicrosoftのキーボードで採用されていた実績もあります。筐体の形状は小さいものからIBM風のものまでありますが、個人的には大柄のモデルの方がお勧めです。キートップの文字もなんとなく古めかしくて良い雰囲気。通販サイト ※既にキーボードの生産はしていないようです。
富士通キーボード FKBシリーズ
富士通という会社は体力があるのか、息の長い商品が多いです。親指シフトをはじめ、コンパクトキーボード、トラックボード付き、テンキーレスなど、20年近く前に発売された製品が現在でも生産中、Windows10対応の記載まであります。2007年に新発売されたLibertouchという新機構のキーボードも継続販売中、ユーザー自身がキーの重さをカスタマイズできるよう、交換用ラバーが添付されているので、Realforceのような変荷重も作れますね。一般販売店ではお目にかかれなくなりましたが、在庫さえあればネット販売店で購入できるようです。富士通コンポーネント楽天市場 ※2020年頃に生産終了となったものが多く、伝統的なキーボードはなくなりました。
NORTHGATE KEYBOARD REPAIR
純粋なキーボードの販売店ではないのですが、Northgateのキーボードのリペアサービスを中心に、ALPS系キースイッチを採用したキーボードのコレクションと販売(中古・新品)をしているサイトです。2021年7月時点でも更新されているので、ストックもあるはずです。ただしちょっとクセのあるwebsite(個人?)なので、問い合わせについてはご自身の責任でお願いします。
(中古) DELL AT101W
2000年代まで大量に販売されていたせいか、今でもeBay等で中古良品(中には新品も)が安価で入手しやすい状況なので、これを狙う手もあります。品質はAT101のALPSピンク軸に至らずキータッチも別物と感じるくらいですが、単体で評価するには結構良いキーボードだと思います。また、何故かAT101の黒軸よりも感触が良い(カサカサしていない)ようなので、Windowsキー付きという違いはありますがオススメです。中古品は変色やベース鉄板の錆びなど気になるかもしれませんが、一度分解清掃しきちんと整備することできっとお気に入りになると思います。
(中古) IBM 1391401
80〜90年代に一世を風靡した伝説のキーボード、ModelM。今でも後継機種がUnicompから新品販売されていますが、このキーボードは感触や見た目の経年劣化が非常に少ないので、軽く清掃するだけで新品同様によみがえる魅力があります。eBay等で容易に入手可能、P/N違いの同等品を求めることで選択肢も広がります。但し本国アメリカでは、このキーボードに対する日本での一般的な評価よりも高いようで、高値で入手した割には期待していたほどでも・・とならないように注意が必要です。
逆に、劣化しないことにより(それを知った上かどうかはわかりませんが)、新品または新品同様と称して出品されることがあるので、あまり高値で購入しないよう注意が必要です。簡易的な判別方法としては、裏面のラベルが劣化しやすいのでここをチェックすること。特にIBM製のものはラベルにラミネートが貼られていますが、外周部に着色やゴミの浸入跡が見られるものは、洗浄されたものである可能性があります。
その他
中古メインになりますが、アメリカではIBMやDELLなどのパーツを単体で販売しているところが結構あります。パーツナンバーで検索するとヒットします。時価となり高めの価格設定が多いですが、基本はReferbish、動作確認済みです。時にはデッドストックの在庫が出てきたりするのも面白いところです。
現代の高品質キーボード
2021.09.20現在
かつては良質なキーボードと言えば、90年代以前のビンテージ系を探すしかなかったのですが、2004年にCherryスイッチを採用した独自のメカニカルキーボードが発売されたのをきっかけとしたのか、2010年を越えたあたりからゲーミング用途向けに様々なキーボードが販売され始めました。また海外のマニアを中心に、キーボードをカスタマイズして楽しむ流れが出てきています。Cherry互換スイッチの登場、配列の自然な規格統一により、スイッチやキートップを換装して楽しんでいるようです。ビンテージ系との最も大きな違いは、薄型フレームやフレームレス、またコンパクトキーボードの流行により、同じようなキータッチでも筐体に響く音が軽くなっているところでしょうか。メーカー品は、秋葉原の九十九電機、パソコンショップARC、ソフマップ 、ヨドバシカメラなどで試すことができます。
キーボード
TOPRE REALFORCE
最初に発売された東プレ製の変荷重・静電容量式日本語キーボードRealforce106が好評で、派生して英語101キーボードやテンキーレス、荷重を変えたタイプ、ハイプロと呼ばれるお椀形状のキートップを採用したプロ仕様のモデルまで登場しました。その後Windowsキーが追加されましたが、当初は日本語版のみ、106にWinキー2個追加しただけの108キーボードとなり、旧106キーボードの配列が好きな方にお勧めでした。現在ではラインナップを一新し、ケースが現代風にコンパクトになり最下段のスペースキー周りのサイズも変更されています。キータッチの異なるタイプ、ゲーミング用途などラインナップが豊富です。秋葉原の各ショップに展示されているので、触ってみてから購入するのが良いと思います。
HAPPY HACKING KEYBOARD
独自キー配列に重点を置いて開発されたキーボードです。通常のキーボードの半分程度、下手したらノートPCよりも小さい面積の中にフルサイズキーが美しい形のまま収まっています。慣れるとい勝手は上々で、私自身自宅や職場で長らく愛用していました。初期は富士通系の薄型設計だったのですが、その後、東プレ製の静電容量方式を採用したプロフェッショナルシリーズや、安価なライトシリーズが登場しましたが、現在は全てプロフェッショナルシリーズとなりました。日本語版も登場しましたが、メインキーの最下段は若干左にずれているので注意が必要です。個人的には、初期バージョンくらいに薄型化してもらえれば嬉しいと思っています。
DIATEC MAJESTOUCH シリーズ
Filcoブランドの中で、Cherryのスイッチを採用し独自にデザインされた製品が"Majestouch"です。マニアを対象に開発した節があり、Cherry社オリジナル品よりも魅力的な商品ラインナップとなっています。茶軸(タクタイル)、黒軸(リニア)、青軸(クリック)、赤軸(リニアの軽いタイプ)など多数の選択肢、当然ながら日本語、英語、テンキーレスなど選べますし、ゲーミング用に設計された専用モデル、さらには独自の2色成型キートップが販売されたり、キーボード工房でオリジナル筐体を特注できたりします。初期の頃は筐体の完成度やチャタリングなど、問題点もありましたが、現在では品質も大きく改善されているようで、国内では一番活発に活動しているメーカーかもしれません。
DUCKY
台湾のゲーミングデバイスを製造販売しているメーカーです。フルキー/テンキーレス/コンパクトキーボードをベースとして、独自配色の商品やオリジナルキーキャップを販売しています。店頭で触ってみると他社に比べて筐体との剛性バランスが良く感じるので、注目しているメーカーです。
LEOPOLD
韓国のキーボードメーカーで、Majestouchと同じような時期からオリジナル商品を企画、販売しています。キートップの材質をPBTにしてみたり、二色成型をアメリカに特注したり、二層PCB基板を採用したりと、品質にこだわった商品が多いです。旧来の韓国キー配列は英語配列に2キーが加えられたものでしたが、最近は英語配列をそのまま使っているようで、ハングル表記のない英語版もあります。
IOMANIA
韓国のI/O関連商品を扱うサイトで、サイトトップページ左メニューの一番上からメーカーの選択ができます。FILCO、DUCKY、LEOPOLDなど、Cherryスイッチを使ったオリジナルキーボードの比較がしやすいです。早い時期からPCゲーマーが多かったせいか、キーボードやマウスにこだわる人も多いようです。日本から購入できるかどうか分かりませんが、過去に日本語の分かる方がいましたので、メールで問い合わせてみると良いかもしれません。
DECK KEYBOARD
日本ではあまり知られていないメーカーです。TG3 Electronicsのパートナーということで、ゲーミング用キーボードを作っています。LED内蔵+2色成型PBT、2層PCB基板など、Websiteを見るだけでかつてなかったほどの高品質なものを作っていることが窺えます。このサイトのDeck82というモデルはまさに、かつてTG3が作っていたTELXON BL82Aの後継機(というかそのものと言っていいかも)ですね。当時は軍事用などと言われていましたが・・?
LOGICOOL(LOGITECH) KEYBOARD
LOGITECH(日本名ロジクール)のゲーミングキーボードです。世の中チェリースイッチ一色だったところ、2015年に突如オムロンと共同開発した新型スイッチ、ROMER-Gを搭載したキーボードを発売しました。独自設計ということもありカスタム対応もしていないので微妙なところですが、他のスイッチが軒並み30年ほど前の設計ということを考えると、新設計のスイッチには性能や感触の面で、色々期待できそうです。
Model F Labs
世の中には、メカニカルキーボードだけでは飽き足らず、オリジナルのModel Fスイッチによるキーボードも再現してしまう人もいるのですね。個人レベルのプロジェクトなので長期的に販売されるとは限りませんが、現代の使用に適した配列のModel Fが手に入るのは面白いと思います。また、コレクション品のIBMキーボードなども販売しているようなので、一度サイトを訪れてみることをお勧めします。
スイッチ
各社から互換スイッチが販売されていますので、好みのタッチになるよう交換することができます。最初から交換しやすいような基板設計されたキーボードもあり、カスタマイズを楽しめます。さらには、スイッチ内部のばねを交換して重さ調整をするマニアまでいるようです。 →互換スイッチの例
Cherry系互換
Cherry (original)
Kailh
Gateron
Greetech
Invyr Panda
Gatistotle
ALPS系互換
Matias
配列
スイッチやキートップを交換するカスタムが流行するにつれ、各社各様だったキーボードの配列(特に最下段)が、統一されつつあります。ベースとなるのは、主にUS104やテンキーレスの87、さらにコンパクトな61キーのタイプで、いくつかのメーカーから同じような形状のものが登場しています(OEM元が一緒かもしれません)。唯一メカニカルでない東プレのRealforceやPFUのHappyHackingKeyboardPROも、その品質が世界的に受け入れられているようですね。
Majestouch系 (104/87)
Majestouch
Ducky
Deck
Leopold
KB Paradise
Poker系 (61)
PokerII
KB Paradise
Topre系
Realforce
HHKB pro
キートップ
メーカーとして本格的に販売しているところは少ないのですが、交換用キートップを作るプロジェクトがあちこちで立ち上がっています。より高品質な2色成型やPBT樹脂のタイプ、形状が異なるタイプに加え、オリジナルフォントや、へんてこな絵柄を入れ込んだりするマニアもいるようです。
その他
ケースレスキーボード
金属ベースにスイッチがむき出しで取り付けられているタイプで、キートップや隙間からだけでなく、横から漏れる光で派手さを演出しているようです。最近流行しているのかどうか分かりませんが、いくつかの中華系メーカーから出ているのを見かけます。ケースという干渉部材がないことで、キートップの交換やスイッチへのアクセスが楽にできます。キーボードの基本構造を知る上で一台持っていても良いかもしれません。意外に安価なのが高ポイント。
LED発光系キーボード
ゲーマー向けに、各キー毎にLEDを埋め込んで文字を光らせるタイプがあります。文字部分のみ光を透過させるため、キートップに2色成型やレーザー抜き加工を行うなど、かなり凝った作りになっています。LEDの発光パターンを変えたりと、機能面でも豊富で楽しめそうです。
用語
配列関連
TKL: Ten Key Less
WKL: Windows Key Less
ISO: International Organization for standardization (EU系配列)
ANSI: American National Standards Institude (US配列、ACSII配列と呼ばれることも)
JIS: Japanese Industrial Standards (日本語配列、OADG106/109キーボード)
キートップの並び/ 形状
DCS: 標準型 ステップ・スカルプチャー(2) キートップはシリンドリカル
SA: 厚型 ステップ・スカルプチャー(2) キートップはお椀型
DSA: 標準型 完全フラット キートップはお椀型
LP: 薄型 ステップ キートップはシリンドリカル
KT: 厚型 ステップ キートップはシリンドリカル
キーボードなどのプラスチック製品は、経年で劣化が進みます。性能面では問題無くても、色味が極端に黄色くなってしまうと、魅力が低下してしまいますね。黄変は化学的(タバコの煙や使用時に付いた油脂等)要因、光学的(紫外線)要因などがあるようで、なるべくこのような状況下に晒されないようにするのが、劣化の防止に良いのは周知の通りだと思います。
しかしながら個人的な経験上、(特にしばらく使用した後に)密封して暗所保管しておいたキーボードが変色してしまったことが何度かあり、これについて調べていたところ、ある文献にたどり着きました。
4.1 黄変現象(暗所黄変)のメカニズム
スチレン系樹脂(ABS、HIPS、AES等)は、通常の環境下で光や過度な熱の影響を受けない状態で保管しても、長期の保管中に色調が黄色く変化する現象がある。このような環境下での黄変現象は、光の直接当たらない密閉した試験槽などの暗所において発生することから、”暗所黄変現象”と呼ばれている。この暗所黄変の場合、変色した成形品を太陽光に照射すると、元の白味方向の色調に戻る傾向を示し、他の湿熱および耐侯劣化による黄変とは区別することができる。
暗所黄変のメカニズムは未だ解明されておらず、明確な原因は不明である。但し、一般的には以下の傾向があることがわかっている。
(1) 保管前に成形品が太陽光等の光エネルギーを照射した状態で保管すると、黄変は増加する傾向がある。
(2) 保管状態は高温・高湿の場合に黄変が増加する(温度・湿度の影響大)。
(3) 色調としては、変色が目立ちやすい淡色系で発生し易く、透明色が最も顕著である。
(4) 酸化防止剤を代表とする、キノン系発色化合物(例:フェノール系酸化防止剤BHT)が存在すると顕著に発生する。
4.2 暗所黄変の対策
暗所黄変については、そのメカニズムが解明されていないため、根本的な解決策が見つかっていないが、この暗所黄変現象は”初期の光酸化(光照射)を受けて生成したラジカル種により暗所で更に酸化が進む現象”と考えられることから、材料面対策として下記が有効とされている。
(1) 初期の光酸化防止:紫外線吸収剤の添加
(2) 生成したラジカル種の除去:光安定剤の添加
更には、注意事項として成形品の保管を屋外等の直射日光はもちろん、蛍光灯、水銀灯等による光照射を避け、高温・高湿とならない場所での梱包および保管する事が重要である。
(株)技術情報協会発行 高分子材料の劣化・変色メカニズムとその安定化技術-ノウハウ集- より原因ははっきりしないものの、この現象はプラスチック業界で知られていることのようです。紫外線により変色してしまったキーボードは、漂白剤等で復活させる方法もあるようですが、変色となる原因に思い当たる節が無い場合、試しに太陽光に当ててみるというもの一つの手かもしれません。
また押入れに保管する場合、衣料用の防虫剤(ナフタレンや樟脳等)には気を付けましょう。これらの物質は気体となって隅々まで入り込み、退色・変色の原因になることがあるようです。
この他、スイッチ部分も経年劣化が起こります。接点の材料としては、導電性である金属やカーボンが使われていますが、これも経時で表面が酸化し、接触不良となることがあります。使用中は常に表面が擦れているので良いのですが、非使用時に劣化が進みます。特に金属接点を採用したメカニカルスイッチに多いようで、私の場合もDELLのキーボードで、”C”やテンキーの”6”など、それほど頻繁に使わないキーでチャタリングの経験があります。症状が軽いうちは、そのキーを何度も押すことで酸化皮膜が取れて復活します。
101KEYBOARD
J-Birdさんによるキーボード関係の最強リンク集です。私が知っているサイトはすべてここに網羅されています。私にはこれ以上のリンク集は作れませんので、ぜひこちらをご利用ください。 ※サイトのサービス終了によりリンク切れとなりました。
皆様のご意見をお待ちしております。良い情報があったら教えてください。
qwerty(a)mxw.mesh.ne.jp