のぐじゅう

Keyboard Mania
2000.01.11


有名な IBM 101 Keyboard の中身がどうなっているのか知りたくて、分解してみました。

ibm101ins1.jpg (16865 バイト)
キーボードケースを取り去った状態です。黒いプラスチックのユニットは湾曲していて、その下にメンブレンフィルムスイッチが見えます。このUnicomp製IBMキーボードは謎の部分が多く、1999年製のはずなのに、内部には1995年製という表記が見られます。

ibm101ins2.jpg (19795 バイト)

拡大図
メカニカルスイッチと違い、キーひとつひとつが独立したスイッチになっているわけではありません。一体成型ユニットのキーの部分に穴があり、中にスプリング状のバネが入っています。これが折れ曲がるときにクリック音が鳴ります。メンブレンスイッチ自体はほんのちょっと押すだけで反応します。

ibm101ins3.jpg (13949 バイト)

裏面は金属でカバーしてあり、重い理由がわかります。全体をねじで止めてあれば分解できるのですが、プラスチックを溶かして固定した部分が無数にあるので分解できません。めったに壊れることのないキーボードですが、もし壊れたら部分的に修理するのは難しく、ユニットごと交換ということになりそうです。

ibmins4.jpg (23770 バイト)

よく見ると、ユニット内部に飲み物をこぼしても、フロント、サイドともにガードされていて外に排水するような構造になっています。

 

知れば知るほど最強!!!のキーボードということがわかります。その理由は・・・

■ Buckling Spring Technology
 (参考リンク: Qwerters Clinic: 技術情報: IBM BucklingSpring Keyboard
押すときのクリック感はあるが、戻るときはスムーズ。
クリックと入力が同じタイミングで行われる
メンブレンスイッチの接点には直接的な力がかからず、耐久性が高い。

■ 取り外しできるキーキャップ
清掃が簡単。キーキャップを丸洗いすれば新品同様に!(モデルによっては一体型のものもあり)

■ キートップ及び筐体材質の耐久性も高い
キートップ・筐体共に高級なプラスチックを使用しているようで、耐久性が高いです。発売から年数が経っているにもかかわらず、紫外線などでは変色している個体を見かけることはまずありません。また表面も簡単には摩耗せず、筐体をクリーニングすると新品と見分けがつかなくなります。

■ ケーブル脱着可能
キーボードはとても頑丈なので何年も壊れませんが、ケーブルは断線する可能性があります。これは交換できるタイプなので安心して使えますね。(モデルにより直付けタイプもあり)

■ ユニット一体型による防水設計
キーボードユニットが一体型で防水設計になっていて、誤って飲み物をこぼしても、逆さにしたりしなければ内部の接点部分には入っていきません。キーボード手前の裏側には、なんと排水用の穴まであります。(92年くらいまでに製造された初期のモデルと、後期のコストダウンされたモデルは、残念ながらこのような構造にはなっていません。)

■ 相応のコストがかけられた設計

IBMという会社は元々大型コンピュータを作っていた会社です。その頃は今のように分業制ではなく、ハードからソフトまで全てIBM自身で設計、製造されていました。キーボードについても同様で、全てIBMによる独自設計です。この時代に確立された高等な技術が普及品PC向けに転用されたわけであり、歴史を遡って考えると、設計の段階では相当なコストがかかっていると言えます。長い年月をかけて作られた技術作品のようなもので、一目置かれている存在です。


■ 今でも購入可能
1986年に登場したこのキーボード。20年以上経ってもほとんどコストダウンされずに、未だに製造・販売されているというのは驚きです(さすがに旧来のモデルを購入する人は少ないようで、受注生産のスタイルを取っているようですが、Windowsキーを増設しUSB対応、ブラックカラーのモデルがメインとなっているようです)。トータルでこれほどの販売数と販売年月を誇ったキーボードは他には無いでしょう。数は力と言いますが、今まで生まれてきた数々のキーボードがどんどんコストダウンされ消滅していった中で、淘汰されずにしぶとく生き残っているのは、性能が優秀であることの裏付けと言えるでしょう。



qwerty(a)mxw.mesh.ne.jp

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