のぐじゅう

Keyboard Mania


軸についての考察
2003.10.17
2017.05.23一部変更・追記

有名なALPSのキースイッチです。

このように、メカニカルスイッチの場合は、スイッチ自体に軸が内蔵されています。どのスイッチメーカーにしても、滑りや耐久性などをしっかりと計算し、設計されているようですが、中には経年でタッチが変化しやすいものもあります。80年代初期のものでは引っかかりが多くなったり、それ以降のものでも滑らかさが失われ、カサついた感触になったりする例がよく見られます。

富士通 FKB-8745

ラバードーム式キーボードの中でも、富士通のものは独特な構造です。軸受けとキートップの間に専用のスライダーがあり、引っかかりのない動作を実現しています。プラスチックに限らず、同じ材質どうしでは分子間の親和性が高く、結びつこうとする力が大きくなるため、摩擦力が高くなります。従ってこのような可動部分には、異なる材質のプラスチックを使うのは良い設計と言えます。

NMB RT-6800

NMBのラバードームキーボードの中で最も高級なキーボードですが、専用の軸はなく、キートップ一体式となっています。通常、キートップは指が滑らないような材質のプラスチックを使うので、軸にも潤滑性はありません。一方、軸受けの方ですが、ベースと一体型になっていて、色は違うものの同種の材料を使用しているようです。このタイプでは材質の組み合わせが悪いと、比較的早い時期に摩擦力が大きくなるなど劣化の兆候が現れます。
(これを解決しているのがKeytronic製キーボードで、同様な構造であるものの、ベース樹脂に潤滑性プラスチックを使用しているので非常に滑らかなタッチが得られています)

IBM製キーボード

職場で使われていたキーボードです。使い込まれてヘタってきたとのことなので、調査のためにもらってきました。Made in Thailandとなっているので、NMB製でしょう。ちょっと汚いですが、お許しを。
よく見ると、使い込まれたキーの文字が消えかかっています。レーザーで焼き付けた印字が消えるというのは、かなりのものですね。数値データの入力が主でした。
最も使われたキーが、右側のCtrlキーです。IBMの5530(?詳しく知りません)をエミュレートするソフトを使っているので、このキーが”実行”になります。日本IBMの001/002型を持っている方なら、わかるでしょう。人によっては、特に力をいれて叩くので、最も早くヘタってしまいます。
キーの安定感が全くなく、グラグラが酷い状態です。この状態でもスイッチ自体は問題なく機能しますが、これじゃ気持ち悪くて使ってられませんよね。メーカーの言う”スイッチの耐久性”というのは、どこまでのことを言うのでしょうか?
スイッチを引っこ抜いてみました。上記のRT6800と同じ形状ですね。試しに他のところにはめてみましたが、同じくグラグラになったので、削れているのは軸の方ということになります。

*必ずしも、専用軸を持っているキーボードが良くて、持っていないキーボードが悪いということではありません。しかし、こういうところにコストダウンのしわ寄せが来ているのも事実です。初期の摩擦感を防ぐためにシリコングリスのようなものが塗ってあるものも見受けられますが、こういう基本的な部分はしっかりと作って欲しいものですね。
各メーカー/モデルにより、設計が異なります。研究してみると面白いかもしれません。


・角軸、丸軸の違い

四角い軸のキートップを軽く動かしてみると、4方向に遊びが偏っていることが分かります(上下左右方向に比べ斜め方向に遊びが大きい)。丸い軸のタイプは、全方向に均一な遊びとなり、より精度が高いと言えます。ただし一般的なキーボードの場合、キートップが四角いこともあり、角軸、丸軸の違いによる優劣を感じることはまずないと思います。



・ALPS軸、Cherry軸

ALPS軸を見てみると、押されていない状態で軸が飛び出ていて、押された時に軸の頭とスイッチケース上部の位置が合うようになります。一方、Cherry軸は、押されていない状態で軸の頭がケースとツライチ、押した状態ではケース下部のみで保持されているものと思われます。

実際にALPS軸、Cherry軸のキーボードを触ってみると、押していない状態でのキーのぐらつき(遊び)は、両者とも似たようなものなのに対し、押し込んだ状態ではCherry軸の方が大きく感じます。Cherry軸がぐらつくという印象は元来の設計から来ているものかもしれません。面白いことに、Cherry軸互換でKailhのBOXスイッチというものが登場しています。防塵、防水目的のようですが、同じCherryタイプながら、軸周囲に囲いを作り出っ張らせてあるので、押し込んだ状態で軸の頭とケースが合うようになり、ぐらつき抑制に期待できそうです。実際には精度の問題もあり、触ったこともないので何とも言えませんが、改良された互換スイッチにも侮れないものがありますね。

 


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