1984年から98年までの主体展、個展などを中心にしてきた作品をまとめました。

 取手市郊外の小文間という農村地帯に移り住んでから私の絵画テーマははっきりしてきたように思います。あたり一面に広がる関東台地、田、畑、林、あぜ道、高く広がる空、身近に繰り広げられている自然界のさまざまないとなみ。そんなところに身をおいて出会った感動を絵にしたいと思いました。

 畑の片隅に捨てられ積み上げられて朽ち果てていく野菜くず達や、やがて土に帰るであろう雑草の立ち枯れていく姿からも新しい命の再生を見つけることができました。地面に腰を下ろして彼らに向かい、写生をするだけで私自身もが不思議な感動を味わっているのです。切り裂かれ、砕かれ開発されゆく台地から掘り起こされた木の根や椿の花の終焉の美しさは何万本の飾られた薔薇の花の美しさより真実だと思いました。

 そうしたものを見つめることで生と死の意味深さを知らされたようにも思います。それらのものを克明に写しとっていくことで私の絵は成り立ってきたように思います。描くことで自分自身もその内側に入りたいと思うことがあります。一体化してしまいたいというような。むしろ描くことで生かされているような私自身の製作行為の結果になっているのかも知れません。そして、そんな自然界のものたちの声が私の耳に聞こえている限りは描き続けていけそうな気がします。

福田玲子


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