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うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ
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作者:相模(♀)
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現代語訳:
(ひとのつめたさを)恨み悲しんで、涙を乾かす暇もない(朽ちそうな)
袖さえあるのに、(そでだけでも悲しいのに、その上)恋の浮き名の
ためにすたれてしまうかもしれない私の名や評判が、なんともまぁ
惜しいことですことよ。
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音にきく たかしの浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
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作者:祐子内親王家紀伊(♀)
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現代語訳:
評判に高い高師の浜のむなしく打ち寄せる波を、(うっかり袖)
にかけますまいよ、袖が濡れると困りますもの。
(そのように)噂に高い浮気なあなたを心にかけて慕いますまい。
後で悲しみの涙で袖を濡らすようになっては困りますもの。
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思ひわび さてもいのちは あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり
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作者:道因法師(♂)
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現代語訳:
(つれない人を)思い嘆き悲しんで、それでもやはり、死にも
せず命はあるものなのに、つらさにこらえきれないのは涙 で
あるよ。
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なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
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作者:西行法師(♂)
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現代語訳:
嘆き悲しめといって、月は、わたしに、あれこれ恋の物思い
をさせるのだろうか、いやそうではない。(それなのに)
月にかこつけがましくこぼれ落ちるわたしの涙であることよ。
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見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかわらず
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作者:殷冨門院大輔(♀)
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現代語訳:
(悲しみの涙で色変わりしたわたしの袖を)お見せしたいものです。
(あの古歌のように)雄島の漁夫の袖さえも、波でひどく濡れて
いた(にもかかわらず)、その色は変わらなかった(ことですのに)。
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わが袖は 潮干にみえぬ 沖の石の 人こそしらね かわくまもなし
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作者:二条院讃岐(♀)
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現代語訳:
わたしの着物の袖は、引き潮の時にも見えることのない沖の
(海中の)石のように、あの人は気付かないけれど、(悲しみ
の涙で)乾く暇もありません。
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