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ワウペダルを使ったようなギターのイントロから始まった15曲目「An Extraordinary Life」はニューアルバム「フェニックス」からの選曲。 個人的にもこのアルバムの中で特に気に入っている曲である。 この曲には昨年、心臓の手術を受けたジョン・ウェットンの想いが込められているらしいのだが サビの部分の歌詞 『さあ、今を生きて 目を覚まして 言おう これは 類稀な人生(Extraordinary Life)だと 今日を楽しもう 何が起ころうとも これは 類稀な人生(Extraordinary Life)』 には生死を彷徨った者だけが記すことが許される前向きな言葉が綴られており、今の私の心を捉えて離さなかった。 「An Extraordinary Life」演奏終了後、スティックからマイクに持ち替えたカール・パーマーが前に出て昨年と同じように力強く、こう宣言した。 「The Court of the Crimson King」と。 後に同行したプログレに詳しい友人が言っていたことなのだが、ジョン・ウェットンがキング・クリムゾンのメンバー でない時期の曲をなぜこうもステージで披露するのだろう。 やはりバンド名も付いた超有名曲だからだろうか? 正直な処、他の曲も聴いてみたい気もするのだが....。 ジョン・ウェットンが「Video Killed the Radio Star、Geoffrey Downes!」と紹介するとお馴染み(だが去年よりは小さい形の)サングラスと銀のラメジャケットを舞台袖で着込んだジェフリーが登場した。 心に決めていたように私もここで初めて立ち上がった。 横の友人もそれに倣ってくれたようだった。 しかしながら、立ち上がってみるとステージは予想以上に近い。 こんな近く見えるなら、もっと早くから立てば良かったと思うが時既に遅しである。 これこそが後悔先に立たずと言うのだろう。 ステージを見れば中央に用意されたパイプ椅子の上には拡声器とお馴染みの光景だ。 耳馴染みのある”あのメロディライン”がジェフリーの指から発せられる。ジョンの拡声器を通した声が場内に響き渡るとステージ後方には懐かしきアルバムのジャケットが映し出された−すなわちそれは若きトレバーホーンの顔だ。 (昨年も同じようにPVが映し出されたのだろうか?記憶はもはや朧気なのだが、なにげにトレバー・ホーンもオリジナル・エイジアのライヴに特別参加であったのだ。) オリジナルバージョンにはないギターソロも昨年以上に曲にマッチしていたし、もはや言うことは無かった。 そして−ようやくこの曲で私の周りでも(後方を含め)立ち上がる人が増えてきた。 18曲目は「The Heat Goes On」。カールのドラムソロをフューチャーした曲である。 この曲を紹介する時も、ジョンは必ず 「...〜Drum solo」と言うのだが、なぜか「Drum Solo」を念を押して二回言い直していた。 昨年もそうだった。 観客の反応がもう一つだからということかもしれないが、今年は昨年以上に観客の反応は良かったと思うのだが。些細なことでも気に掛かってしまう。 「The Heat Goes On」はもはやカールのドラムソロの為の曲というイメージが強い。昨年と同じように小技が満載で実に楽しかった。 シンバル系を多用したスティック遊び、スティックのくぐり抜け、そして肘?手?でシンバルをこするという昨年には見られなかったコミカルな技も披露し客席を笑いに包んだ。最後はタンバリンを使って観客を煽るというお馴染みのパーフォーマンス。 ほんと、この人は魅せることにかけては超一流。全くもってショーマンである。また曲中でジョンが「カール・パーマー!」と野太く叫び、改めて紹介したのも印象的であった。 本編ラスト。−と言ったら、もうこれしかないだろう。 エイジア最大のヒット曲「Heat of the Moment」だ。 言うまでもなく一番盛り上がった曲であった。その証拠にずっと座っていた左横の男性も遂にこの曲のイントロのギターリフを聞くやいなや立ち上がったのだ。 この曲ではハウのギターソロ時にジェフリーがステージから一旦、消え、「一体、どこに行ったんだ?」と思っているとステージ袖で サッカー日本代表のサムライブルーのユニフォームに着替え、白のショルダーキーボードを持って登場。 ジェフリーのその背中に縁取られた番号は08番。 誰のアイデアなのか判らないが、昨年よりもジェフリーに親近感が湧いたのは事実である。 そのジェフリーがジョンと背中合わせで弾いたり(これはもう見慣れた風景か)、ステージの端に行ってハウと二連をやったりと最も弾けていた。 笑顔も多く昨年よりも非常に機嫌が良い感じでこちらも嬉しくなってしまう。 曲終わりには恒例の観客にサビの「Heat of the Moment」を唄わせて大合唱。 気持ち良く本編が終わったのだった。 「Heat of the Moment」が終わり、挨拶も何もなく暗闇の中、ステージからはけるメンバー達。アンコールを求める拍手が2分ほど続くと上手からメンバーは再登場した。 しかし、その登場の仕方には驚かされた。 ハウがダックウォークをするがの如く踊るように登場したのだ。 見た目”お爺ちゃん”(プライベートでも本当に孫がいるおじいちゃんなのだが)なハウが一番、元気であるようなひょうきんな一面を見せつけたのだった。 その後、私がもっとも聞きたかった「Don't Cry」が始まった。 だが、ハウはES-Artistと共に(いつの間にかステージ上に用意された)スティールギターをイントロのあのフレーズに使用。 調子はずれになる寸前でなんとかメロディを保っているだけに見ているこちらとしてもヒヤヒヤものであった。 しかし、サビの部分をオリジナル通りのメロディラインで一緒に唄えたのは溜飲を下げる思いで嬉しかった。 22曲目。結果的に最後の曲となってしまった「Sole Survivor」。 この曲を最後に持ってくるというのも珍しい。 どちらかというとライヴ前半、中盤の曲というイメージだ。 力強く終わるというのも今のエイジアの勢いを象徴しているのかもしれない。 演奏終了後、ステージ中央にはメンバーが集まってきた。 メンバー4人、肩を組んで客席に向かって礼をする恒例の儀式である。 (福岡と東京初日では為ったという)ハウとジョンの肩組みは ここ名古屋では間にカールを挟んでのものとなった。 25年前はこのハウとジョンの仲違いがオリジナル・エイジアの崩壊へと繋がっただけにこの微妙なパワーバランスに危惧する向きもあるがそれでもステージ上には険悪な雰囲気など微塵もなく、みな笑顔、笑顔..このバンドがかってないほど上手くいっていることが手に取るように判ったのだった。 メンバーはステージを去った(去り際、カールが手持ちのスティック2本をステージ上を転がすように客席に向かって投げ入れた。 そのスティックが落下したのがほとんど自分の目の前。 しかし、1列目の席が邪魔をしている為に当然、その争奪戦には加わる事はなかった。 先日のナイトレンジャーのライヴといいこの種のサプライズには私自身は恵まれていないようだ)。 しばらく客電もつかなかった為か、ダブルアンコールが期待されものの無情にも「本日のライヴは終了しました」のアナウンスが流れ、皆、一様に大人しく出口を目指したのだった。 オリジナル・エイジアとしては2回目となった今回の来日公演であったが、昨年よりも楽しめたことに異存はないと思う。 それはオリジナル・エイジアとしてニューアルバムを25年ぶりに発表したこともあるだろうし、名古屋のあとの渋谷公演で1stアルバムの完全再現に向けた気概が既にこの時から感じられたというのもあるかもしれない。 いずれにしても、ノスタルジーだけでない現在進行形としてのエイジアを日本のファンの前でも体現してくれたことが今回のライヴの成果に繋がったのではないだろうか。 来年もまだまだ続く予定のオリジナル・エイジア。 次回はアルバム「フェニックス」の曲をもっと多く聞かせてくれるに違いない。 |
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SET LIST | |
1 | Daylight |
2 | Only Time Will Tell |
3 | Wildest Dreams |
4 | Never Again |
5 | Roundabout (Yes) |
6 | Time Again |
7 | Bolero from Cutting it Fine (Geoff Downes keyboard solo) |
8 | Clap (Steve Howe acoustic solo) |
9 | Voice of America (John Wetton acoustic solo) |
10 | The Smile Has Left Your Eyes (acoustic) |
11 | Ride Easy (acoustic) |
12 | Open Your Eyes |
13 | Fanfare For The Common Man (EL&P) |
14 | Without You |
15 | An Extraordinary Life |
16 | In the Court of the Crimson King (King Crimson) |
17 | Video Killed The Radio Star (Buggles) |
18 | The Heat Goes On 〜 Carl Palmer drum solo |
19 | Heat of the Moment |
・・・Encore・・・ | |
20 | Don't Cry |
21 | Sole Survivor |