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爆風スランプ/X.Y.Z.→Aのベーシストである、BBQ和佐田こと和佐田達彦さんがProduceする音楽イベント『BBQ和佐田Presents XXXParty』が昨年に引き続き、今年もここ名古屋にやってきた。 昨年は、体調不良から参加出来なかった私だったが、今回がこのイベントツアー最後という事もあり、意気込んで会場に向かった。 会場である池下CLUB UPSETはビルの5階に位置するやや小さめなライヴハウス。狭い階段でやっと辿り着けるような場所にあった。 入り口で整理番号順に並び、開場時間と共に中に入ると、フロアには丸椅子が引き詰められていた。 当然、オールスタンディングだと思っていた私には嬉しい誤算。 最近、腰痛に悩まされているだけに、長時間のスタンディングライヴはとても耐えられそうになかったからである。 そういう訳で(笑)有り難く、二列目、中央の椅子に座らせて貰った。 |
入場時には、この動員数は大丈夫か?と思われた場内も、トップバッターのバンドが演奏を始まる頃には、椅子席も全て埋まり、その後方に立ち見も盛況になりつつあった。 地元、名古屋(愛知)出身という「The popranks」は男(ギター・ドラム)女(ボーカル・ベース)の混合バンドで、曲調も、イマドキ...と言ったら、いいか。私の狭い音楽的知識で語るとすれば、かってのNirvanaの音楽性にちょっと似ている気がした。特に最後の曲などは。 アマチュアで活動しているバンドのようだが、途中のMCで、今夜でベースの娘がバンドを辞めるとも言っていた。(私にとってだが)初ライヴで、メンバー脱退というのも、珍しい事である。100回以上に及ぶライブ参戦で初の事ではないだろうか。 まあ、それでも、ベースの彼女にとって最後のライヴが多くの観客で埋まっていた事は、きっと良い記念になったに違いない。 |
和佐田さんがProduceする、秘蔵っ子、シンガソングライターの竹内藍さんは先日、デビューアルバムをリリースしたばかりだった。 このツアーは彼女にとって、アルバム発売記念ライヴという意味合いもあり、ライヴではアルバム収録曲とツアー前に用意した新曲を5曲ほど披露した。 竹内さんがKeyを弾きながら唄い、その横では和佐田さんがベースを弾く。弾き語りにベースの伴奏が付くというのは珍しい。 途中からは、デビューアルバムにも参加している石井完治さんがアコギ(エレアコタイプのガットギター)で参加し、気持良いフレーズを曲に散りばめ、曲に趣を与えていた。 曲間のMCでは、大人しそうな雰囲気を醸し出しながらも、このツアーでの事をかなりぶっちゃけていたのは面白かった。 |
個人的には、最も驚かされたバンドだったかもしれない。 会場は、このバンドのファン、追っかけというのが一番、多かったようだ。 このツアー・イベントは1週間に渡り、京都、神戸、岡山、高知、 大阪と回ってきて、この名古屋が最後の地であったのだが、STEEL ANGELは前日の大阪から加わったばかりであった。それゆえ、観客の中にも大阪から参加している猛者も居たようである。 それだけ多くの人を惹き付ける何かがこのバンドにあるのはもちろんだが、バンドメンバーに著名な人物が居るというのも大きいようだ。 ベースの方は、馴染みない方であったが、ギター&ボーカルは二年前の夏、横田基地で行われた二井原実ソロライヴでベースを担当されていた小畑秀光さん。 そして、もう一人。ドラムが、長年 THE ALFEEで活動されてきた長谷川浩二さんだというのはこのバンドにとって大きなアドバンテージになっているのは確かなようだった。それは、小畑さんの自虐的なMCでも明かであった。 バンドの音楽性は、正統的なスラッシュメタル、あるいはスピード・メタルという感じでひたすら激しい。それを象徴していたのが長谷川さんのドラミングだったと言っていいかもしれない。今回、ドラムはバンドごとにセッティングを余り (もちろん、細かい調整はしているし、スネア等は手持ち機材で交換している)変えないので、基本セットは共有していたが、長谷川さんのプレイが今回、登場した何人かのドラマーの中でも最もヘビィで、タイトだったのは間違いないだろう。 この日のドラムのセッティングについて、ファンキー末吉さんがBlogに書いている。 |
私にとって、本日のメインアクトである。 前述した横田基地でのライヴ以来、ほぼ2年ぶりの田川さんのライヴ、田川さん単独のライヴというのは実は今回が初めてである。 ライヴは、ファンキー末吉さん、BBQ和佐さんというこのパーティの屋台骨のリズム隊に、ファンキーさんが中国から呼び寄せた張張(ジャン・ジャン)さんをキーボードに配した鉄壁なバンド構成。八王子のライブバー X.Y.Z.→Aでのセッションやこのツアーで演奏してきた事もあり、田川さんの演奏も水を得た魚のように伸びやかで、ソツがない。 このツアーを通してのMCである三井雅弘さんの煽りを含んだ紹介の後、イントロ代わりに速いギターソロをかまして始まった軽快なリフ。代表曲「My Eternal Dream」であった。もう何回、聞いたか判らないこの曲を遂に、生で、至近距離の数メートル先で田川さんが演奏しているというこの事実に私は胸が熱くなってしまった。 タッピング、Sweepをこれでもかと交えた長めのギターソロでエンディングを迎えた後、2曲目として紹介されたのは予想外の曲だった。 バッハの「G線上のアリア」。 驚きの選曲としか言いようがなかった。もちろん、単にクラシックをエレキで弾く訳ではない。 田川さんの紹介にもあったように、かってテクニカルギタリストのVinnie Mooreが自身のアルバム「Time Odyssey」で披露したカバー曲でもある。 もちろん、それはVinnie Mooreのバージョンまんまではなく、其処には田川さんなりの解釈を入れているのだが、大音量のロックだらけのイベントで、静謐に鳴り響いたこのクラシックの名曲は一服の清涼剤に成り得たのだった。 |
SET LIST | |
1 | My Eternal Dream |
2 | G線上のアリア(「APRIL SKY」Vinnie Moore ver) |
Partyがその名の通り、Partyらしくなってきた5番手。 それが”マー坊”こと田中雅之さんをボーカルとするスペシャルバンドであった。 ご存じの通り、クリスタルキングで”3オクターブのハイトーン”を屈指したパフォーマンスが誰の心にも深く残っている名ボーカリストの田中さんである。(一般の人には「大都会」やアニメ『北斗の拳』の主題歌「愛をとりもどせ!」で高音部を言っていた方と言ったら判りやすいだろうか) 20年前の事故でそのハイトーンな声は惜しくも出なくなってしまったが、今ではその代わりに身につけたハスキーな声を生かして活動し、今回のライヴにおいてもそれに準じた選曲となっていた。 この田中さんを支えるのは先程の田川さんのバンドに加え、竹内さんのセットでも活躍した石井完治さんがエレキに持ち替えて参加。マーシャルに愛用のARIAの濃紺のレスポールタイプPEをプラグインした田川さんに対し、RolandのJCにテレキャスを繋いだ石井さんは、見た目にもコントラストが極まっていた。 Rolling Stonesの「Honky Tonk Women」からスタートしたライヴは2曲目には、早くも「愛をとりもどせ!」が披露された。 私は、『北斗の拳』が大好きで、アニメの初回オンエアー時にはTVに齧り付いて見ていぐらいだったのでこの曲が聞けたのは非常に感慨深かった。 2曲披露の後には、長めのMCがあった。田中さんのMCは面白いと田川さんのBlog等で述べられていただけに、期待していたが、それは噂通り。今夜も絶好調だった(笑)その内容をここで少し紹介するならば - 名古屋名物の「山本屋総本家」(あるいは「山本屋本店」)の味噌煮込みうどんが、麺の堅さゆえお気に召さなかった田中さんは、はっきり「嫌い」と言い放って笑いを取ったのを手始めに、昨年、クリスタルキングの元メンバーとバンド名をめぐる商標権で争った裁判をネタにして笑わせるなど自虐的パフォーマンスも冴えわたっていた。 しかし、3曲目の曲紹介では、その笑いは封印された。 PL学園のKKコンビ(桑田・清原)の1年先輩で、大学時代の野球の試合で頸の骨を折り四肢麻痺となってしまった清水哲さんという方の事を静かに話された。 清水さんの事については、KKコンビのエピソードの一つとして広く報道され、今では多くの人に知られる事となったが、なんでもその清水さんがパソコンを使い(口にペンを加え、一文字づつキーを打ち)書いたという詩に曲を付けたのが、次に唄う曲だということだった。 その曲のタイトルが「生きる」。 しっとりと、しかし力強く唄いあげた「生きる」は今回の田中さんのライヴで、最も映えた曲だったと思う。この素晴らしい歌を支えた演奏も申し分なく、特に田川さんと石井さんのギターのオブリガードフレーズも曲にマッチして大変、気持ち良い。 「生きる」で我々、観客を感動させた後は、再び、ロックモードに戻ってバンドが醸し出す勢いはいっそう、加速していった。 その中でザ・スパイダーズの「バン・バン・バン」と「ダンス天国」がメドレーのように披露されると会場は一体化し文字通り、”ロックパーティ”へと化した。 |
SET LIST | |
1 | Honky Tonk Women (Rolling Stones) |
2 | 愛をとりもどせ! (TVアニメ「北斗の拳」テーマ) |
3 | 生きる |
4 | バン・バン・バン (ザ・スパイダース) |
5 | ダンス天国 (Wilson Pickett) |
田中さんのライヴで集まった熱は、6番手の「関西一番星☆」でも冷めることは全く無く、更にディープに、激しくなっていった。 「関西一番星☆」は『BBQ和佐田PresentsXXXParty』の為に組まれたバンドらしいのだが、それでももう、ここ2年ぐらいはこの名前を聞く機会が多いような気がする。 バンドの構成は基本的には田中さんの時と変わらず。田中さんに代わって三井雅弘さんとゴトウゆうぞうさん という”ちっちゃいおっちゃん”二人が加わるもので、ボーカルが変わるだけでこんなに印象が変わるのかという見本のようなパフォーマンスであった。 曲は、先程までのロックから、リズム&ブルーズ主体へと変わったが、古くから関西ブルーズシーンで活躍されてきたお二人(三井さんとゴトウさん)だけに、MCと客の乗せ方が非常に巧い。 このバンドの白眉の瞬間は、ゴトウさんが操った民族楽器、カリンバでイントロを奏でた、Louis Armstrongの「What Wonderful World」(この素晴らしき世界)が披露された時だった。 その次には、三井さんのヒワイな振りを交えたファンクナンバー(カバーナンバーで、歌詞は猥歌になっていた)が披露されたが、これが爆笑に次ぐ爆笑。大いに盛り上がってラストはロックの大先輩の曲で − と紹介されたこの曲で締めくくられた。 「幸せハッピー」 細野晴臣, 忌野清志郎, 坂本冬美というメンバーで構成された異色ユニット「HIS」の曲は、最後には客席から田中さん・竹内さんら出演者を乱入を促し、ステージはお祭り状態。出演者の全てが舞い踊る様はまるで沖縄民謡・琉球民謡を見るかのようであった。 |
SET LIST | |
1 | Sweet Home Chicago Japanese arrange (Robert Johnson) |
2 | たかちゃん、登場 |
3 | What Wonderful World (Louis Armstrong) |
4 | Unknown |
5 | 幸せハッピー(HIS) |
予想外の地元バンドのトリに私は結構、驚いていたが、ラストまで残っていた人の数を考えると、このバンドの人気の高さが伺えた。 私はポツダム巨人軍については、名前だけはかろうじて知っているレヴェルで、ライヴを見るのはもちろん、今回が初めてである。 MCでメンバーの人が言っていたが今年、結成27年目というのにまず吃驚してしまった。 ポツダム巨人軍を説明する上でまず忘れてならないのはそのコスチュームにある。一昔前の戦隊物のような衣装に、胸に光る『ポ』のカラータイマー。とにかくインパクトが大きい。 曲調は親しみやすい、80年代的メタルである。しかし、歌詞はお笑い系。 今で言うなら、セックス・マシンガンズの世界観を先取りしていたようなバンドとも言えるが、演奏は非常に高度だった。 2曲目「お米・ザ・パワー」の途中では、”宴会芸”と称して、滑稽なパフォーマンスをいくつか披露して笑いを取っていたが、それは全て的確な技術によって裏打ちされたもの。ギター二人による、二人羽織的なハーモナイズドプレイなどはかってのRacer Xさえも出来なかったことではないだろうか。 インパクト重視でありながら、オーソドックスなメタルバンドとしての実力も兼ね備えたポツダム巨人軍の人気の秘密はこんな処にあったのかと知らしめるに十分なライヴであったと思う。 |
SET LIST | |
1 | よいしょ |
2 | お米・ザ・パワー including 宴会芸 |
3 | もう一杯 ! |
4 | 7.7.7. |
・・・Encore ・・・ | |
5 | 日本 |
アンコール曲「日本」で全てのパフォーマンスを終えた「BBQ和佐田Presents名古屋Party Vol.3」。 奇しくも、この名古屋がツアー最終日という事もあり大いに盛り上がった。 名古屋で、この盛り上がりというのは結構、珍しい事ではないだろうか。 私は、田川さんが参加しているからと、一も二もなくライヴに出向いたがファンキー末吉さん、BBQ和佐田さんという爆風スランプ/XYZ-Aのメンバー、田中雅之さん、長谷川浩二さんという伝説的ミュージシャンや、三井雅弘さんやゴトウゆうぞうさん、石井完治さんら関西ミュージックシーンの重鎮、それに加えてデビューしたばかりの竹内藍さん、地元バンドの新進・ベテランバンドの多種多様な饗宴を見ることが出来たのは貴重な経験だった。 然も、これだけのパフォーマンスが3000円ちょっとで見る事が出来たのだから、幸運だったという言葉以外、私には見つからない。 ただ、残念なのは、前述したようにこのパーティが今回限りという事である。 しかし、同じようなライヴパーティはきっと、また行われる事だろう。今は、その時を信じて待つばかりである。 |