日本プロ野球界に於いて間違いなくその歴史に不本意な記録として刻みこまれたであろう2004年9月18日。 球場から快音が消えても全国津々浦々の音を奏でるハコ(会場)から音楽が途切れる事は無かった。 「音楽にストライキなんてあり得ないのだ。」 そんな思いをより一層強くしたこの日。 名古屋ブルーノートではギタリスト、エリック・ジョンソンのアコースティックギター&ピアノのライヴが行われた。 エリック・ジョンソンと言えばあの珠玉のストラトトーン。 いわゆる(通称)”ヴァイオリントーン”だが今回はそれを封印。 断然、エレキ派の私としてはアコースティックギターを弾く、ましてやピアノを弾くエリック・ジョンソンなど想像も出来ず今回のアコギ&ピアノライヴへの参加の決断はギリギリまでつかなかった。(今までのアルバムを聞き込めばいかに多くの曲でアコギやピアノを弾いてきたかは判ることなのだが.....笑) 然も、会場がオシャレでハイソなイメージが(個人的には)強い未体験なブルーノートである。 結局、アコギ&ピアノライヴなど今後二度と日本ではお目に掛かる事も無いだろうという結論に達し、参加した訳だがその判断はあながち間違っていなかった。 「未開の地、踏破にはそれなりの覚悟と準備がいる。」 エベレストや北極点を目指すのに普段着で、という馬鹿はいないだろう。 それほどではないにしろ未体験なライブ会場はそれ相応の準備と必要以上の緊張を強いられるのは事実である。 会場の中はどうなっているのか? ステージと客席の位置関係は? その中で音響的、視覚的ベストポジションは? しいては開場何時間前までに到着していなければならないか?など諸々。 判らない事だらけであった私はその不安を軽減する意味も有り、いつも以上の余裕をもって自宅を出たのだった。 ブルーノートでの公演は通常、一日二回公演。 まるでジャニーズやモー娘。のライヴのようで個人的には抵抗感が残るのは仕方がない。 では二回公演のうち先か、後か、どちらを選ぶべきか? チケット入手の時点でも大いなる決断を迫られたのだった。 おまけに名古屋最終公演日である。 私は最後の熱演を期待して20:45開演の二回目の公演をチョイスした。開場は20:00。私の今までのライヴ参戦歴でも 最も遅い時間帯である。 会場前、錦三丁目の交差点に辿り着いた時は時計の針はようやく18:30を指し示す処であった。 今にも泣き出しそうなどんよりとした空模様が夜空を覆っていたが、ここまで雨が降らなかった事だけは感謝しなければならない。 交差点を渡り、ブルーノートに続く重厚なドアを開ける。 緊張の一瞬。 すると階下に続く長い階段が見えてくる。 気づかなかったがブルーノートは地下にあったのだ。それも地下2階という奥深い処に。 その階段を緊張の面持ちで下っていくとちょうど1階分、降りた踊り場にようやく次回公演を待つ”同士”7、8人を見つける事が出来た。 「開場から1時間半も前では誰も待ってはいないのかも?」 という不安は杞憂であった訳だ。 私はその最後尾に付き、その場に腰を下ろしたが、会場ではエリックの演奏の真っ最中。 時折、階下から漏れてくる演奏と歌声をBGMに用意した文庫本を開いた。タイトルは「星を継ぐもの」。 SF作家、ジェイムズ・P・ホーガンのデビュー作である。 それにしてもエリック・ジョンソンの生演奏を聞きながらの読書とは何と贅沢な事か。 時がなだらかに過ぎ、1回目の終演を迎える頃には私の後にも多くの人が列を為していた。 その列は一説には地上まで続いていたと聞いたが正にエリック・ジョンソンの人気を物語るエピソードである。 開け放たれた会場のドアから帰宅の途につく客は年齢もバラバラ、意外にも年輩の方もみえたがみな一応に満足の様子であるのは喜ばしい事であり、次の演奏への期待が大きく膨らんでいった。 PM8:05。 予定時間をオーバーして我々の入場が許された。 だが、ここから(そのあたりの)普通のライブハウスとの違いをまざまざと思い知らされる事となった。 まず入場の際、一人一人、係員にその日の席を案内されるという有り難いのか、有り難くないのか判らない熱のこもった接客。 名古屋ブルーノートではライヴの前、最中に飲食が出来るテーブル席とジュースなど飲みのみ可能なカジュアル席の二つコースが有り、どちらも早い者順で良席をゲット出来るのだが今回も一人で参加、事前情報で食事と言っても高いばかりで食べている時間の余裕も無いと聞かされていた為、安価なカジュアル席を選択。カジュアル席ならわざわざ案内もされる事もないだろうと思ったら私にさえも係員が付いて案内をしてくれるというのは逆にこちらが恥ずかしくなるぐらいだった。 結局、カジュアル席では一番乗りであった私は係員のお姉さんの勧めもあり、ステージが割合、見易いという最前列の右端を確保。腰を落ち着けた。 しかし、あらためてこの位置からステージを望み見れば丁度、斜め横向きからしか見る事が出来ず、おまけに距離も10〜20mぐらいはある。カジュアル席を選択した時点で覚悟はしていたがココまで見難いのも辛い。 やはり今日は「見る」よりも「聴く」事に専念した方が良さそうだった。 「見る」事が困難なら、せめて素晴らしい演奏が繰り広げられるであろうそのステージを確かめたいとほとんど席の埋まったテーブルをすり抜け前へ、前へとにじり寄っていった。 「BLUENOTE」のロゴも鮮やかな暗幕を背にしたそのセットはグランドピアノを左に、中央には何の変哲もないイスがちょこんと置かれているという非常にシンプルなものである。 当然の事ながら、ギターやピアノ、エリックの甘い歌声を拾う為のマイクも何本か適切な位置に配置され、その外側にはモニター・スピーカーが取り囲む。ライヴ会場でのアコギセットとしては実に当たり前の光景である。(後の情報ではイスの横のテーブルにプリアンプとエフェクターがセットされていたらしい) ただし、用意された2本のギター・スタンドにはいまだギターはセットされていない。 果たしてエリックは何を使うのか、それもギターファンとしては大いに気になる処であった。 カジュアル席に最も近いテーブル3つほどの空席を残しただけで一杯になった会場は開演時間が近づくにつれ徐々に熱気を帯び始めているのが判る。 特に私が陣取る満席となったカジュアル席は尚更であった。 開演までの空き時間はステージ後方の暗幕にBLUENOTEで今後、開催されるライヴの予告映像を流していたのだが、11月に予定されている「スティーヴ・ルカサー&ヌーノ・ベッテンコート」の反応が一番高かったのは、この日のギターファンの多さを物語っていたようである。 開演時間の迫る10分ほど前にはステージ上には巨漢のギターテクらしき人物(Jeff Van Zandt氏。但し、あのPick UpのVan Zandtではない)がギターを持って現れスタンドに立てかけていくと食事に忙しいテーブル席の客にも一瞬、緊張が走る。 気になるギターはこの距離では確認しずらいがアコギとガットギターっぽく見える(情報では68年製のマーチンD-35とファンお馴染みのTakamineの古いモデルとのこと)。 この究極のWeaponからどんな音が紡ぎ出されていくのだろうか? それを考えるだけでも身震いするほどの期待を抱いてしまう。 |
まだまだ続く |
SET LIST | |
1 | A Song For Life |
2 | Dusty |
3 | Gift Of Love |
4 | Fatherly Downs |
5 | Tribute to Jerry Reed |
6 | Kathy's Song (Simon and Garfunkel) |
7 | Forever Yours |
8 | Song For George |
9 | Water Under The Bridge |
10 | Song For Lynette |
11 | Wind Cries Mary (Jimi Hendrix) |
12 | Desert Song |
13 | All the Things You Are |
14 | Divanae |
15 | My Finest Champion |
16 | Wonder |
17 | Once Upon A Time In Texas |
・・・ENCORE 1・・・ | |
18 | Scarborough Fair (Simon and Garfunkel) |
・・・ENCORE 2・・・ | |
19 | I Need You (Beatles) |
・・・ENCORE 3・・・ | |
20 | April Come She Will (Simon and Garfunkel) |