G3' 05 Japan
Joe Satriani / Steve Vai / John Petrucci







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 安芸、備後、備中、備前、美作、石見、出雲、長門、周防、伯耆(ほうき)、因幡



 日本の西に位置する中国地方はかって11の国名で呼ばれていた。
 ”戦国”とも称された時代。
 覇権を賭けて多くの武将が この地で正に血で血を洗うような戦いを繰り返してきた。
 勝敗の結果は即、大将とその一族の生死に関わり、このデス・トーナメントを勝ち抜いた者だけが天下に号令を発する事が出来る。



 安芸の国の一城主を手始めに四国、九州の一部まで10国を平定した毛利元就は その後の毛利家繁栄の礎を築いた名君として名高い。
 元就には3人の子(隆元、元春、隆景)がいたが、互いに力を合わせ父の業を受け継いだ事は群雄割拠の時代において奇跡的であったとさえ言える。
 元就が3人の子に結束を説いた「三本の矢」− 矢は、1本だとすぐ折れてしまうが 3本の矢を束ねるとなかなか容易には折れない。
 兄弟もこれと同じ。仲良くしろよという例え話−は余りにも有名だが”3”という数字には何かしら安定的で強力なパワーを内包する秘めた輝きが私には感じられる。
 ”2”ではなく、ましてや”4”でもない。1という最小単位の次に人を惹きつける魅力を持つ3という数には東洋ばかりではなく西洋でも特別な意味を持つようである。




 さてG3である。

 G3と言えば、ご存じのように1996年。ギターヒーローと誰もが認めるジョー・サトリアーニが始めた一大ギターイベント。
 これまで有りそうで無かったギタリスト3人饗宴のライブツアーは世界各国に於いて好評で迎えられ、企画物として1回きりで終わる筈だった予定は現在まで散発的に続く事ともなったのだった。
 1996年の1回目のツアーはジョー・サトリアーニの他、メンバーはかって自らギターの基礎を教えたという逸話も残るスティーヴ・ヴァイ。そしてグラミー賞受賞、超絶技巧プレイと甘い歌声で”ギターの貴公子”という称号さえ与えられていた まだ見ぬ天才、エリック・ジョンソン。
 彼ら3人がアメリカ各地で毎夜、繰り返された熱気を帯びた演奏の数々は翌年、CDとビデオという最高の形でコンパイル。アメリカ以外の国々にもその演奏クオリティの高さ、目を見張るスーパープレイの凄さを広めるに至った。
 ギター好きの多い我が日本でも、その魅力に取り憑かれるまでにそう時間は掛からなかった。
 当然の事ながらG3での来日を期待し、早期にそうなるものとある意味、確信的に信じていた。
 しかし、その夢は結局、2005年のこの時まで叶う事は無かったのである。
 夢の競演が夢で有り続けたこの10年余。
 G3は結果的に当時、神格化さえされていた天才、エリック・ジョンソンの来日公演を促し、アメリカ本土においてはギターミュージックの復権の後押しをしたとも言われ、単なる一過性なイベントで無くなるほどの力を持つまでに成長した。
 いわばお膳立ては整った。という事になるのだろうか。
 あとはG3としての日本上陸だけが待ち望まれていた。だが時の移ろいは非情である。
 『日本でのG3の開催は不可能』という悲しき暗黙の了解をファンの間に定着させるまでに至ったのだった。
 ”あきらめ”という言葉さえ忘れかけた2005年初頭。それは突然、もたらされた。
 スティーヴ・ヴァイの公式HPでの「G3'05 - Japan」の文字はそれだけに俄に信じられないくらいであった。
 この時の気持ちを例えて言うなら幻の日本公演を経て初来日公演が決まったローリング・ストーンズやポール・マッカートニーのファンのそれと同じだろうか。それほど実現への壁の厚さを感じていたのである。





 5月9日

 遂にこの日はやってきた。
 週の初めを休日にした私は会場である愛知県芸術劇場へ急いだ。
 名古屋での(主にライヴが行われる)会場をほぼ制覇した私にとってもこの会場は未開の地でもある。
 それだけにやや不安もあったが、今回は友人を連れ立っての参加。幾分か心強かった。
 開演30分を切ったPM6:00過ぎ、会場に到着した私は入り口前のホールに列を為す人の波を見た。
 開場時間はもう過ぎている筈だが、入場はまだ始まっていないのだろうか。それとも入場に対して人の流れが追いついていないのだろうか。どちらにしても当初、危惧されていた集客力の不安など微塵も感じさせなかった。
 先に入場した友人に続き私もカメラチェックをくぐりぬけ会場入り。落ち合った友人と共に客席に入っていくとセッティング中のステージが目に飛び込んでくる。
 それを横目に見ながら通路を移動し席を探す。
 今回、私がゲットしたのは8列目31番という中央通路に面した席であったが友人はその前列の二つほど中央よりの席というごく近いものであった。二人とも別々に名古屋の有名なHM/HR DISK SHOPで予約購入した為、似通った席になったようだ。
 多分、あの一帯のエリアはあの店で押させていたのだろう。そう考えると一般的な「ぴあ」などで購入するよりはお得であったと言える。
 席に腰を落ち着け、ステージを再度、確認すると8列目とは言え、ややステージが遠いのが気に掛かる。(あとで判ったことだが、普段、オーケストラが入るオーケストラピットの部分もステージに改良している為かえってステージに奥行きと客席との間に距離感が出来てしまったようである)
 それにしてもステージセットは実に簡素なものだ。中央にドラムセット、向かって右端にギターアンプのいくつか(お馴染みのスティーヴ・ヴァイシグネイチャーのLEGACY、それにメサブギーは確認出来た。他にも話題のサトリアーニシグネイチャーアンプJSXもあったと思われる)、左端がampegなどベースアンプとごくごく標準的なもの。
 装飾的なものは一切排除されている感じである。
 トップバッターがドリームシアターのジョン・ペトルーシなら(彼のイメージから言っても)仕方ないのかも。
 そんな事を思いながら友人と話を弾ませていると開演まであと10分少々と迫った。
 後の混雑や売り切れを考えGOODS売り場へ急いだ私だったが、売り場での満員電車並の過密ラッシュには辟易した。
 狭い区画に押し込められるように人の群れに飛び込めば、それだけで体感温度は3、4度上昇。
 体中の毛穴という毛穴から一気に汗が噴き出すような暑さ。
 一瞬でも早くここから抜け出したいという思いに駆られるが買い物の列は一行に進まない。
 展示販売されているGOODSにはTシャツ各種とサイン入りポスターがラインアップされている事は事前にネットで調査済みであったが、列後方からではその全てを確認する事は出来なかった。
 気分が悪くなる程の状態に陥る頃、ようやく最前列に進み出る事が出来るとGOODSの全容を見渡す事が叶った。
 左からG3の各人が描かれた特別仕様のTシャツ、3人のサイン入りポスター、ジョー・サトリアーニ、スティーヴ・ヴァイ、ビリー・シーンそれぞれのTシャツが数種類。(ジョン・ペトルーシは無かったようだ)
 意外に選択肢は多い。私はG3のTシャツも今回の記念として購入も考えていたのだが、黒ベースではなかったので結局、見送り、ジョー・サトリアーニのTシャツを購入した。(その後、早々にG3Tシャツが売り切れてしまい、あの時、購入しなかった事にしばらくは後悔しきりだったのだが......)

 先程来た道を戻り、席に着くとステージでは相変わらずセッティングが続いていたがそれも収束に向かいつつあった。



『ジョン・ペトルーシ』



 PM6:30。

 荘厳なSEが会場に響き渡る中、開演予定時間きっかりにジョン・ペトルーシはステージに現れた。
 派手な演出もない登場の仕方は実に彼らしいものと言える。
 古着っぽいTシャツとダークグリーンのコーデュロイパンツ(あるいはジーンズ)という出立のペトルーシはどうみても普段着にしか見えない。
 ドラムは同じドリームシアターの盟友マイク・ポートノイ、ベースはスティーブ・モーズ・バンドでの活動も有名というデイブ・ラルゥーという人らしい。経歴から言っても最強の3ピースバンドである。
 巧者と知られるペトルーシとテクニカルドラマーであるマイク・ポートノイの顔合わせは本家ドリームシアターをよく知らない私にとってもまずは楽しみにしていた組み合わせであった。


 唸るようなギターの轟音で始まった1曲目は自身のシグネイチャー7弦モデルを屈指したヘビネスなメタルナンバー。
 曲に合わせドカドカとドラムを叩きだしたポートノイは工事現場で使うようなヘルメットを被り容姿を含めまるで現場監督のよう。
 非常にコミカルでもあったが別の見方をすれば肩の力を抜き”楽しんで”演奏している事の表われのようにも思えた。
 これから始まる饗宴を象徴するかのようなスケールの大きな曲(「JAWS OF LIFE」)の後はメロディアスな単音系のリフが印象的な「GRASSGOW KISS」
 イントロからして私好みの曲−正にジョー・サトリアーニ的な”唄っている”メロディラインは極上な前菜と言ったところか。後半、物凄い早弾きで曲の印象が変わるのも面白い。
 3曲目(「LOST WITHOUT YOU 」)は打って変わってボリューム奏法を使ったイントロでスタート。
 なんとなくジェフ・ベックの「哀しみの恋人達」を彷彿とさせる曲である。非常にJAZZYであり時にはゲイリー・ムーアばりの泣きのメロディも飛び出す。
 この曲でまた一つ、ペトルーシの違った面が見られたような気がした。
 一呼吸おいて始まった4曲目(「CURVE」)は冒頭からワウペダル踏みまくりの曲。
 ワウを効果的に使う事によってメロディを巧く繋ぎ合わせている。もちろんそれ以外の部分では一部の隙間もないくらい音符で埋め尽くされペトルーシの真骨頂が体言される。モニターに足を架け一心不乱に速いパッセージを弾き続ける姿には観客を圧倒せずにおかない。
 曲調が急激に変わり転調でもした如く途切れなく始まった5曲目(「WISHFULL THINKING」)は前曲とは違いゆったりとしたスローなナンバー。しかし、メインテーマである部分は相変わらずメロディアスだ。
 メロディメイカーとしての天賦の才能を感じた瞬間でもあった。
 だがギタリストとしての性分がそうさせるのか曲のラスト近く再び、壮烈な早弾きを披露して曲のイメージが前半と全く変わってしまうのは苦笑いではあったのだが。
ペトルーシ自らの簡単なメンバー紹介の後、始まった「DAMAGE CONTROL」は1曲目と同じようにイントロが非常にヘビネスでサクザクとしたリフが心地よい。リフ以外はこちらもメロディアス。
 中盤からは急に速い曲になってエンディングまで一直線。今日のライヴを総括するような早弾きあり、一転してスローテンポのメロディアスフレーズありの展開は”ジョン・ペトルーシ”というコースメニューの最後にデザートではなく再び、メインディッシュが出てきたような感じさえした。それも濃い味の..。


 ネットでは余り芳しく聞こえてこなかったジョン・ペトルーシのステージも私個人としては非常に楽しめるものだった。
 後陣を配する二人が余りにも華がある為、地味に見られがちであったが、ステージでは笑顔も見られ好印象を与えたのではないかと思う。
 今回、披露された曲はネットを通じての通販でしか発売されていないソロアルバム「SUSPENDED ANIMATION」からの選曲であった為、マニアなファン以外には馴染みのない曲ばかりという状況であったがそんな事を吹き飛ばすぐらいクオリティは高かった。
 正直、アルバムを購入してじっくりと聞き直してみたいとも思ったが会場での販売が無かったのは勿体ないとしか言いようがない。









まだまだ続く





John Petrucci
1JAWS OF LIFE
2GRASSGOW KISS
3LOST WITHOUT YOU
4CURVE
5WISHFULL THINKING                          
6DAMAGE CONTROL
Steve Vai
1I'M BECOMING
2AUDIENCE IS LISTENING
3BUILDING THE CHURGE
4THE REAPER
5WHISPERING A PRAYER
6BASS SOLO 〜 I'M THE HELL OUTTA HERE
7FOR THE LOVE OF GOD
Joe Satriani
1UP IN THE FLAMES
2SUMMER SONG
3HORDES OF LOCUSTS
4ALWAYS WITH ME, ALWAYS WITH YOU
5SEARCHING
6IS THERE LOVE IN SPACE
7WAR
8FLYING IN A BLUE DREAM
JAM SESSION
1FOXY LADY (JIMI HENDLIX)
2LA GRANGE (ZZ TOP)
3SMOKE ON THE WATER (DEEP PURPLE)











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