舞台版「はるちゃん」
実況 レポート 前篇

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私にとって、今夏、最大のイベントである舞台版「はるちゃん」を見に行ってきた。
「はるちゃん」と言えば、ほとんどの人がご存じだろうが 今までPART6まで作られた昼の人気帯ドラマ。
シリーズを通して、明るく元気な主人公「はるちゃん」が 色々な旅館で頑張る姿が共感を呼び、主役の中原果南さんを一躍スターにした事でも有名である。
さすがに放映時間帯もあって、私は熱心な視聴者では 無かったが、その評判だけは噂には聞いていた。
そんなTV版の熱心な視聴者でもなかった私が何故、その舞台版を 鑑賞するまでに至ったか?
それはひとえに今回の舞台の出演者に馴染みの方がいらっしゃったからに 他ならない。
「望月さや さん」
昨年のイベントレポートでも書いたが、もっちーと言う愛称でファンに親しまれている彼女。そんな彼女との交流も早いもので4年になろうとしているがそのもっちーが我が地元、名古屋の舞台に長期出演するということを昨年10月に聞き、指折り数え9ヶ月、この日がくるの一日千秋の思いで待っていたのだった。
舞台は7月4日〜26日の計22日間、名古屋の玄関口、名古屋駅に位置する老舗デパート、名鉄百貨店の10階にある名鉄ホールで上演された。ここは御園座、中日劇場と並ぶ、名古屋3大劇場の一つであるが御園座、中日劇場が歌舞伎や芸術作品を上演するのを割合、常としているのに比べ名鉄ホールはより娯楽性の高い作品を上演することが多いハコである。
そう考えると「はるちゃん」は正しくドンピシャな選択であり、名鉄ホールのみの連続公演はファンとしては嬉しい限りである。
私が観劇したのは名古屋での千秋楽を明日に控えた25日。
午後3:30からの回であった。
当日は予定よりもやや遅れ気味ながら開演10分ほど前に劇場に到着。
ロビーに入って行くと多くの人たちが劇場のアンケートに答えたり 休憩時間に食べる弁当や、名物「地雷也」の天むすを購入している姿が見て取れる。 また 入り口近くで今回の芝居の舞台となる下呂温泉のお土産の売り子の声も フロアーにやたら大きく響き五月蠅いぐらい。
いよいよ客席へ。
個人的な予算の都合もあって(笑)今回、A席としたのだが 実際に席に着いてみると 唖然....
予想以上に舞台から距離がある!最近、ライヴにしてもステージから近距離で 見てきただけにこの距離感にはガッカリ。既に「負け組決定」か(苦笑)。
用心の為に持ってきた双眼鏡が大活躍しそうである。


席に着いてほんの5分ぐらいで劇場から芝居開始のアナウンスが流れると それまでロビーでたむろしていた人々が急いで客席に戻ってくる。
日曜日ということもあって客席も80%以上は埋まっている感じだ。
それも私の親の世代ぐらいの年輩の夫婦、グループと年齢層は非常に高い。
そこにポツポツと若いグループ、カップル、そして私と同じように一人で来ているものも僅かであるが見受けられた。想像するに彼らはドラマ-原作の忠実なファンや、主役の中原果南さん、もしかしてもっちーのファンの方々もいらっしゃたのかもしれないと思えた。
そんな事を考えているうちに場内は暗転。
遂に芝居の幕は上がった。



第一幕



第一場 下呂の町・しらさぎ橋(2001年 晩夏・夕方)



オレンジ色の暖かな光に照らし出されたステージは 下呂の山々をバックとする橋を中心に、その橋の真ん中に銅像のオブジェを据えるなど下呂温泉のイメージをうまく 伝えていた。私は実際に行った事もないのだが当地もこうなっているのだろう。
そう思わせる作りである。それからどうしても目がいってしまう セット上方に掲げられた「2002年・ワールドカップ・キャンプ地をとなり町に誘致して下呂」という横断幕。いっぺんにこの芝居の時間設定があの日韓ワールドカップに沸く寸前の2001年であることを認識させられた。
舞台上には既に3人組の女性観光客と地元派出所の警官が談笑という観光地ではありふれた風景。
観光客は名古屋からやって来たという設定で警官との会話の所々名古屋弁を挟み 地元公演である事を忘れていないのはニクイ演出である。
観光客と警官に加え、もう一組カップルも舞台上に登場。
男性客はメガネを掛けマフラーをするという正しく”あの人”のフルコピーなファッション。
その男性にゾッコンな雰囲気の恋人が、案の定「ヨン様」と甘く呼びかける為 会場からはその都度笑いがこぼれた。
その女性観光客とカップルがお役ご免と舞台から捌ければ 軽快な音楽と共に突然、右手の8番出口にスポットライトが当たりドアが大きく開け放たれた。
登場したのは誰有ろう!本日の主役「はるちゃん」こと中原果南さん
この粋な、突然な登場にかなりの客は度肝を抜かれたようで 劇場全体が半ば放心状態。やがて起こった大きな拍手の中 、客席をぬって中原さんは舞台に上っていった。
パンフによれば今回のはるちゃんはお世話になった伊東温泉の女将に頼まれ下呂温泉の老舗旅館「田山」で働く事になるという設定らしいが、そう言えばTVでもはるちゃんは全国の旅館を回っていたなあとかすかに思い出した。ということははるちゃんは 流しの板前ならぬ「流しの仲居」なのか?
舞台上でもはるちゃんはパンフの内容をなぞるように「田山」に働きにきたということをさきほどの警官にも伝え、しばし談笑の風景が綴られた。
しかし そんな穏やか雰囲気を破るかのように突然、謎の少年がサッカーボールを持って登場し、何か恨みでもあるのかはるちゃんのお尻にボールをぶつけ悪態をつき それに気を捉えている間に、右の花道から登場した川野太郎さんと衝突してしまうという(演出上の)アクシデントが発生。
川野さんは野菜を持っていた為、一面にその野菜を地面にぶちまけてしまい、はるちゃんに罵声を浴びせ一悶着も起きてしまう。
このあたりの演技のテンションの高さはTVとは違い、いかにも生の舞台を感じさせた。
それにしても川野さんはNHKの朝の連ドラ「澪つくし」で沢口靖子さんの相手役として出演された時初めてお顔を拝見したがあれから約20年。この人もほとんど容貌が変わらない人だ。
今回は茶髪にサラサラヘアーで10歳ぐらいは若返って見える。確か、甲子園出場経験もある球児だったとも記憶しているがその経験もあるいは若さに繋がっているのかもしれない。

その川野さんが舞台を捌けた後、一人残ったはるちゃんが感慨に耽るように独り言で
「よろしくね 下呂温泉」
と呟いた処で第一場は終了。一旦、幕は閉じたのだった。


幕が閉じたと共に場内に鳴り響く音楽。
その音はやや芝居には不釣り合いなほど大きく感じられたが この間に舞台上では行われている大がかりなセットチェンジ 時に発生する音を消し、芝居の雰囲気を壊さないように しているのだと思えば至極、納得がいく。
だが そんな喧噪の時もわずか2〜3分程度。
再び、幕が上がった。




第二場 「田山」のロビー(その日の夜)



セットチェンジ後、我々、観客の前に現れたのは 老舗旅館「田山」の玄関とそのロビー
旅館の雰囲気をよくつかんでいるその作りはさすがとしか言いようがない。
やがて 玄関の引き戸を開けてはるちゃんが登場。
「ごめんください」「どなたか いらっしゃいませんか」
の声と共に山田スミ子さんを筆頭に旅館の仲居陣が登場。
いよいよ我らがもっちーもその姿を舞台に現したのだった。
(流石にこの距離では その表情を伺い知るには非常に困難で あったが 持参した双眼鏡が私の視力を補ってくれた)
双眼鏡の小さなフレームの中で捉えた”生もっちー”は着物姿も良く似合っており 昨年、お会いした時と同じように、いやそれ以上に光り輝いて見えた。

此処でこのシーンを掻摘んでで説明すると−
「田山」にやってきたはるちゃんは 仲居としてここで働かせて頂きますと宣言すると他の仲居達に大ブーイングを浴びせられる。
仲居達にしてみれば今やお客もほとんど来ないこの不況なご時世に、仲居を一人増やすなんて信じられないという処である。(あるいは 一人増やすぐらいなら代わりに、給料を上げろというところか)それでもはるちゃんの決意は固く、「田山」で働かせてもらおうと粘るのだが..
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当然の事ながら、このブーイングのセリフにもっちーも登場する。
ブーイングゆえ いつもの穏やかなイメージとは多少異にするが セリフの端々にもっちーらしいトーンを聞き逃す事は無かった。
やがて その騒然とした雰囲気を納めるかのように舞台袖から登場した男性に注目が集まると、大きな拍手が沸き上がった。
「田山」の支配人代理役である芦屋雁平さん、その人である。
雁平さんは言うまでもなく先日、お亡くなりなった芦屋雁ノ助さんの弟さん。
そのコミカルな演技には定評があり、一年のうち半分以上は舞台に立たれているだけに今回の芝居でも期待が掛かるところだ。
そして舞台下手から女将らしき着物姿の女性が男性二人を連れだって登場するとより大きな拍手に場内が包まれた。
女将役の酒井和歌子さん、そしてベテラン、天田俊明さんの登場は「華やかさと重厚さのコラボレーション」を具現化していたと言ってもいいぐらい。
さすがに主役級の人々は独特なオーラを醸し出している。
天田さんはその昔、「七人の刑事」で人気が出た役者さんであるが(私もこれはリアルタイムには知らない)どちらかと言えば 善人役がしっくりとくる。だが今回は「田山」を傘下に納めようとする大手外食チェーンの専務役といういわば敵役。天田さんゆえに単なる敵役だけで終わらない感じが舞台後半の波乱を予想させる。
また、後に観客の感想として「綺麗だったね」という声も実際に私の耳にも入ってきた酒井和歌子さんはTVで見る通りの美人。やや舞台用に化粧がキツかったが それでも年齢を考えれば実に若々しい。もっちーとは同じ事務所で先輩後輩という 間ながら、TV版で共演して以来、仲良くしてもらっているそうである。
はるちゃんと女将、仲居陣、支配人代理、それに敵役のオールキャストが 総登場した第二場。
はるちゃんに剥き出しの対抗意識の仲居頭役、山田スミ子さんの 最後の雄叫びは ホラー映画さえ彷彿させたほどであった(笑)



第三場 「田山」の客室・楓の間(翌日)



再びのセットチェンジの後、舞台に配置されたのは オーソドックスな客間。
一人の男がそこで何やら物色中である。
それがいかにも怪しい。風雲急を告げる展開か。
そこに掃除道具を持ったはるちゃんが登場。
客室に入って、すぐにその怪しい人物を発見。 案の定、「泥棒、泥棒」とはるちゃんは騒ぎだし 大騒動に。
その騒動を聞きつけ、仲居頭、板長、支配人代理さえも やって来る。
そして衝撃の真実が明らかに!!!
なんと その怪しい男は5年前にギャンブルで借金を作り家出した 女将の旦那、いわばこの旅館の支配人であったのだ。(「田山」が大手外食チェーンの傘下に入るというオイシイ話に釣られて久しぶりの帰宅という設定) やがて女将も登場して5年ぶりの再会となるが借金を作り逃げ出していった男に恨みこそあるものの感動・感激などある訳が無い。
予想通り、言い争いとなり支配人は捨てぜりふと共に舞台を後にした。
その後、舞台には女将、仲居頭、板長、そしてはるちゃんが残ったのだが そこでようやく板長がしらさぎ橋で自分に無礼な態度を取った男(川野さん)であった事に気づき、双方で大きな驚きの声を上げるのだった。
-現実世界では 一目みた瞬間に気づくものだがこの順を追って人物を紹介、明らかにしていく手法はいかにも舞台的なものではある-
最後に残った女将とはるちゃんではるちゃんがここに来る事になった経緯が 語られるが そこには旅館経営の難しさも伺え、微妙に現実とリンクしていたのが 私としては印象深かった。(白骨温泉から始まった全国的に広がった一連のトラブルを思い出さずにはおかなかったのだ.)



第四場 下呂の町・しらさぎ橋



「落とし物を駅前の交番に届けて来い。 20分で戻ってくるんよ。」
と無理難題を仲居頭から押しつけられた はるちゃんは駅前のしらさぎ橋に到着すると 既に息は絶え絶え。
しかし、交番の警官は観光客と おしゃべりに夢中(もちろん、観光案内を兼ねてだが) とあって、時間通りに戻れるかどうかはるちゃんは気が気ではない。
そんな時、再び現れたのが先日、同じ場所ではるちゃんにサッカーボールを ぶつけた少年。
なぜか 先日の事を謝りたいと言っての登場だったがこの唐突な出現は やや意味不明な感じもあった。
ただ この少年の口から実家の旅館の買収話の悲痛な側面が語られるなどStory上では 重要なキーパーソンの役目を担っているのかもしれない。 とそんな気にもさせられた。
結局、はるちゃんは無事、落とし物を警官に手渡す事ができたのだが 中身をあらためる時点で新たな事も判ってきた。
旅館に泊まったお客の持ち物と思われた落とし物は従業員のものだというのだ。
そこにタイミング良く、舞台上手から現れたのは山田スミ子さん扮する 仲居頭と板長の川野太郎さん。
なんのことはない この落とし物は板長のものだったのだ。 それに仲居頭は
「誰が交番に届けるように言いました? 私は板場に届けるように言った筈です」
と先ほどとは 明らかに違う発言を繰り返ししきりにはるちゃんの失敗を仲居頭という上司の立場で板長の川野さんに謝る様は舞台だけでなく客席も暫し呆然である。
明らかにこれは意地悪=いじめであるが、流石はるちゃんも慣れたもので こんな事ぐらいではへこたれはしない。
この明るい前向きなキャラクターが「はるちゃん」の魅力なんだろう。
(しかし よく考えたら なぜ板長まで駅前まで来たのだろうか。全ての事情を知っての事だったのか?)



第五場 露天風呂・休憩室(2週間後)



2分ぐらいのインターバルでチェンジされた舞台セットは露天風呂に繋がる休憩室という設定の作り
そこには男女別々の入り口があり、そのまま本当に入っていけるような 風呂らしい奥行きもある。またセット真ん中はガラス張りになって いて露天風呂の様子も一部のぞけ、そこから気持ち、湯煙が上がっているような 雰囲気も漂わせ、セットの作りは細にわたっている。
そのセットを背にして舞台上ではるちゃんが仲居頭に掃除で理不尽なしごきを受けている真っ最中。
ここにゴミがある。あそこにも。ここにも。
あっちこっちに振り回されながら それに気丈に「ハイ」と答え 飛び回るはるちゃん。挙げ句の果て普段は従業員全員で協力して行う筈の露天風呂の掃除をはるちゃん一人に押しつける始末。
「ハイ、ハイ」と元気よく対応するはるちゃんに根負けしたのか仲居頭は 大きな声ではるちゃんに文句を言いながら舞台を捌けていった。
その仲居頭と入れ替わるように登場したのは はるちゃんがはじめて「田山」にやって来た時も登場した、唯一のお客であった白髪混じりのおばあさん。
その時も適切な接客を果たし、女将さんから好評価を得たはるちゃんであったが 今回もなにか時折寂しげな表情をするこの初老の女性が気に掛かって仕方がない様子だ。
当然の事ながら、はるちゃんは掃除そっちのけでその女性の話に耳を傾ける。
おばあさんはやおら写真を一枚取り出し、そこに写った一人の男性を探しているという話であったがここに来てまだ2週間しか経っていないはるちゃんにとっては見覚えがあるという方が無理な相談だった。
同じような質問を他の仲居にしてみたところでも覚えがないと言われ より一層悲しい表情をするこの女性を前にして はるちゃんは黙っておられず 「一緒に探しましょう」と提案してしまうあたりは"そうでなくちゃ はるちゃん"と声をかけたくなるぐらいであった。
ひとまず安堵の表情を浮かべたおばあさんは明日からの人捜しに期待に胸をふくらませ舞台を一旦捌け、はるちゃんも言いつけられた休憩室の掃除に精を出しはじめた。
そんな処に板長が携帯を持って登場し、なにやら深刻に話し込んでいる様子が展開される。その内容も「食材の仕入れ価格が....」とか傍目に見ても明らかに怪しく思えてしまう。
もしかして「田山」を傘下に納めようとする大手外食チェーンのスパイではないのか?
波乱の展開を予感させる描写である。
ただ 板長の誤算はその会話をはるちゃんに聞かれてしまった事であった。
(板長は よもや はるちゃんが近くにいるなど思いもしなかったのだ) ただ田山と大手外食チェーン・スカイグループの複雑な関係を今ひとつ理解していなかったはるちゃんにとっては その内容から”なんて(仕事に)研究熱心な人”ぐらいにしか思わなかったのは板長には好都合であったのだが。
秘密が露見しなかった事に安心した板長が去った後は再び、仲居頭が登場したり、 中島マリさん扮する仲居や女将さんまで登場するなど入れ替わり立ち替わり、出演者の移動が激しく落ち着いた処で舞台は今や聞き慣れた音楽と共に暗闇に包まれた。



第六場 スナック下呂



大がかりなセットチェンジで用意された舞台は 「スナック下呂」という電飾看板からも判るように いかにも温泉場にありそうな雰囲気のお店のセット。
お店の中のカウンターの中では 忙しそうに若い女性がお酒を造って準備をしているのが判る。
そこにちょうどお店の入り口となる舞台上手からはるちゃんと、先ほどの白髪のおばあさんがやってきた。
約束通り、おばあさんの人捜しに奔走するはるちゃんである。
兼ねてからお世話になっているこの「スナック下呂」の助けを借りようとやってきたのだが現れたママはなんと石井洋佑さん演ずるオカマなのであった。
ゆえに登場と同時に場内は笑いに包まれたがゲイバー特有の賑やかな雰囲気と元気口調ではるちゃん達を迎え入れた。
奥のソファー席に座った二人はそれぞれお酒を注文。
はるちゃんにとって「癒しの場」というだけあってかなりリラックスしている様子が窺い知れる。それに「ママに遭えただけでも ここ(下呂)に来た甲斐があったわ」というセリフが用意されているぐらい既にかなりの信頼関係がママとはるちゃんの間に結ばれているようだ。
乾杯も済みいよいよ本格的に人捜しを開始したはるちゃんだったが 頼みのママに写真を見せても 見たこともないとツレナイ返事。
初っ端から気持ちを暗くするような雰囲気におばあさん自ら人捜しは止めにして今夜は飲もうということでようやく場も馴染み始めた。
酒もすすみ やがておばあさんの口から語られるのは探している男性=息子の事。5年前に出ていって全く音信不通となった息子に怒りを覚えながらも 胸が張り裂けんばかりに心配している様子は 客席の同年代の女性にもその心情は痛いほど伝わったに違いない。
はるちゃんも おばあさんの話にほだされたのかやがては自分の愚痴(もっぱら 仲居頭からの言われ無きイジメ対して)へと話が進み かえって新たに「(イジメに負けず)がんばるぞ」と意気軒昂でハイな気持ちにさせた。(どんな時でも前向きな処ははるちゃんらしいではないか)
だが お酒のピッチが早過ぎたのだろう。
やがては はるちゃんはテーブルに寝込んでしまい舞台上には素面(に近い)おばあさんとママだけが残されたのだった。
やがて舞台は気まずい雰囲気に包まれるが.........
この気まずい雰囲気が証明するように観客の大半が予想できたように ママは案の定、おばあさんが探している息子であった。
突然の実の母親の来訪に驚きながらもシラを切り通すつもりであったママであったが おばあさんにしてみれば どんな格好をしていても息子は息子。すぐに判るというものである。
ママは失踪以来、掛け続けた多大なる心配を涙で母親に謝りようやく訪れた本当の意味での親子の和解はこうして成し遂げられた。
(この涙の再会シーンは本舞台で見所の一つ。)
しかし、いい感じで続いていたしんみりとした雰囲気もガヤガヤとしたお喋りで一変。
仲居頭を先頭に旅館の面々がお店にやってきたのだ。
もちろん その中にもっちーもいる。
もっちーの衣装はこの時、オレンジを基調としたノースリーブなワンピースだったが (この辺りの記憶が曖昧で申し訳ない)かなり素のもっちーに近い雰囲気でファンとしてはうれしい限りであった。
スカイグループの専務、天田さんと仲居頭の山田スミ子さんを中心とする一行はソファーにどっかと陣取り、下っ端の辛さかもっちーらの若手が早速、運ばれてきたお酒やつまみのセッティングに忙しい様子である。
この宴は「田山」をスカイグループ傘下に入るよう女将さんを説得する為に 仲居頭が専務らを招いて催したものであったが裏でコソコソ動き回る処が実に憎々しく感じられる。
宴が進めば 酒も進みやがて 芝居は思いも掛けぬ展開を見せた。
仲居役の中島マリさんがマイクを取れば我々観客に向かって
「VIP席にいらっしゃる 名古屋を始め全国各地からみえたみなさん〜」
とご挨拶。一体、何が始まるのかと思いきやなんと「モノマネショー」が始めると言うではないか。
すっかり忘れていたが 中島さんと言えば「物真似のスター」であった。
「モノマネショー」は中島さんが宣言したように山本リンダ(曲「ねらい撃ち」)から始まり、欧陽菲菲(「雨の御堂筋」)と得意なキャラクターを大きくデフォルメして演じられて時を追う毎に客席も徐々にヒートアップ。
一旦、欧陽菲菲で終了した「モノマネショー」も仲居陣からのアンコールの求めもありすぐに再開。
ここからが中島さんの本領発揮というべきか。
どこからともなく聞こえてくる島倉千代子の「人生いろいろ」のメロディに合わせ、遂にと言うべきか客席まで降りてくるという中島さんに大いに盛り上がる。モリアガル。
曲に合わせ 頭をフリフリしながら歌う独特な中村玉緒のモノマネは大いに笑いを誘い、客にマイクを向け歌詞のサビの部分を歌わせるあたりはRockなライヴの「Call & Response」を彷彿とさせるが如くである。
芝居から思いがけず「モノマネショー」に変わった事で我々観客にとっては「一粒で二度おいしい」舞台となったのだった。
「モノマネショー」が終わり、興奮も冷めやらぬ中、遅れて川野さん扮する板長も登場、この宴に合流。
しかし ここで衝撃的な事実が判明する。
専務に付き添っていた部下から なんと川野さんはスカイグループで食中毒を出し クビになった者だと言うのだ。
スカイグループに近い存在というのは先ほどの怪しい電話で観客の誰もが気づいていたがクビになった者ではあのスパイ的な活動は一体何を意味するのか?事態は波乱、混迷を極めつつある感じだ。
ますますその後の展開から目が離せそうもない。
だが そんな事が露見して黙って居られないのが仲居陣。
「板長をやめさせろ」と一斉のブーイングとバッシングが始まる。
これに居たたまれなくなったのか 板長は店から出ていってしまったが その入れ替わりに女将さんが店の前に現れた。
先ほど、スナックのママが酔いつぶれたはるちゃんを迎えにきて欲しいと 連絡を入れたのだ。
同じ頃、店内では専務の部下を先頭に 仲居陣を巻き込み「スカイグループ万歳」のシュプレヒコールが起こる中、あの大音量の「モノマネショー」でさえ 熟睡していたはるちゃんがここぞとばかりにヌッと起きあがり逆に「田山 万歳」とたった一人で叫ぶ。
それは正に「舞台の中心で田山を叫ぶ」と言った趣であった。



仲居陣+スカイグループ 対 はるちゃん+女将さん という構図がはっきりとした今。 板長の正体も気になりながら第一幕もひとまず終了。

場内アナウンスが20分間の休憩を告げた。






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