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この8曲目終了後は 7弦ギターは用済みとばかり再びギターチェンジ。 今回のライヴは思った以上にギター交換が多く意外だったのだが、ギターチェンジの度に現れるギターテクのマイクにも声援が飛んでいたのはなんとも微笑ましい。 そして用意されたギターがライトを浴び、浮かび上がるとそれはなんと”ダブルネックギター”。7弦ギターに続いてJoeらしからぬギターであったのだがそこはそれダブルネックと言えどもJoeらしくかなりの拘りが窺える。 それは ギターの片方のネックのヘッドが明らかにボディやもうひとつにネックと異なっていたからである。多分、他のギターから移植されたものと思われるが、それだけでもかなりユニーク。そんなダブルネックから繰り出された曲はライヴの定番「MYSTICAL POTATO HEAD GROOVE THING」。 曲が始まれば前半を上のネックで弾き、後半は下のネックで普通に弾いている感じであったが、オープンチューニングとかネック毎に音に差別化を図っていないところをみるとなぜダブルネックなのか不思議に思う。多分、視覚的効果を狙ったものではないだろうか。 (後の情報で上のネックは6本の弦全てE音にチューニングされていたらしく見た目以上に結構複雑な事をやっていたことに驚いた。それにしてもE音にチューニングって どうやって弾くのだろうか? 天才のやる事はやはり凡人には理解不能です) ライヴでの定番曲から10曲目は新作「STRANGE BEAUTIFUL MUSIC」からのチョイス。「NEW LAST JAM 」。最もダブルネックギターが活躍した瞬間だった。 ハードなリフから一転して軽快なリフ〜メロディに変わるところがなんとも心地良い。 変化に富んだ中間部〜ソロも今までのJoeの作風とはひと味違うように感じる。 「NEW LAST JAM 」の演奏が終了した後はやや長めのJoeお馴染みの手癖フレーズから ハーモニクスでメロディを奏で始めたあたりで観客のだれもが 次に始まる曲が何か気付く。 そう 曲名やJoeの存在を知らなくともプロ野球の特集番組やモータースポーツのBGMとして多くの視聴者の大脳新皮質に刻み込まれている名曲、「SUMMER SONG」だ。 やがて印象的なメロディラインがJoeによって奏でられると 観客から「ワアー」と大歓声が上がった。この日、最高に盛り上がった瞬間だった。 いかに この曲がみんなから待ち望まれ、期待されていた曲だったかひしひしと伝わってくるようだ。それは曲の途中でも「ハイ ハイ」という客の怒濤の掛け声からも窺えた。 またこの曲も普段、CDに合わせ一緒にギターを弾き練習していることから自分にとってもまだまだ”現在進行形の曲”。それだけにJoeのフュンガリングとかピッキング、一挙手一投足を注目していた訳だが見事にポジションなど弾き方は違っていたのだった(苦笑) しかし冷静に見ている反面、自分にとって特別な曲はいつになくグッときてしまう。 最高の盛り上がりをみた「SUMMER SONG」の後は小休止ということか、Joeをステージに残し、他のメンバーはステージを捌けていく。 そして用意されたイスに座りお馴染みの白いギターでおもむろにタッピングで弾き始める。 披露されたのが これまた懐かしの超絶技巧曲「MIDNIGHT」!! 全編 タッピングのこの名曲が聴けるなんてほんと久しぶりだ。 中盤あたりでアレンジしたフレーズを入れたりするのも21世紀型「MIDNIGHT」を提示しているかのようであった。 「MIDNIGHT」が終わると他のメンバーも再びステージに登場。 ベースのMattもJoeの横のイスに腰掛ける。 始まった曲は「STRANGE BEAUTIFUL MUSIC」から「STARRY NIGHT」。 ミディアムテンポの穏やかな曲で腰掛けて弾く曲としてはぴったりだ。CDにはバンジョーの音が効果的に使われていたが、流石にライヴでは使用されないようだ。 昔、JoeがMTVのアンプラグドに出演した時、バンジョーを演奏していたのを見たことがあるがそこではカントリーギタリスト並になかなかの腕を披露していた。 いつの日かライヴでもバンジョーを弾く姿を見てみたいものである。 その後もアンプラグドならぬプラグドでリラックスした状態で曲が続いた。 すると今度はマイクを中心に据え、なにやらJoe本人がボーカルを取る様子。 −ということは次はあの曲か?それともあの曲? やがて聞こえてきたのがこれまた懐かしき「I BELIEVE 」であった。 オーソドックスな弾き語りな曲だが、当然、中間のソロはJoeらしさの漂うもの。 しかし、数年ぶりにJoeのボーカルが生で聞けただけでも感無量であった。 15曲目も新作から「ORIENTAL MELODY」。 特にアルバムではトップを飾る曲ゆえ非常に印象深い。 タイトル通り オリエンタル〜アラビアっぽい(?)曲調のメロディラインとJoe本来のメロディが交互に出てくる今までにない新機軸な曲である。ステージでもその魅力があますところなく発揮されていたように思えた。 次の曲も懐かしき「THE EXTREAMIST」から隠れた名曲、「WHY」であったのだが当方、”予習・復習不足”がたたって最後まで曲名が出てこない。 これではファン失格と言われても仕方がないだろうなあ(苦笑) それから Joe、Jeff、Galenがステージから捌け、一人残ったMattにスポットライトが当たり姿が浮かび上がる。 ベースソロコーナーの始まりとなった。 今回、お馴染みのStuart Hammと交代する形での来日になったが(注:新作にはMattが参加。過去にもツアーには同行していた事あり)自分にとってMattと言ったら もう10年以上も前Dave Ree Roth Bandで Steve Vaiなんかとやっていた時代しか知らない為、どのようなソロを披露するのか興味津々。多くの観客がそうであったように私も固唾を飲んでそのベースから弾き出される音を待った。 すると Mattは自然に指弾きでメロディを奏でるというソロとしては まあ ごく当たり前のもの。この程度でお茶を濁すのかと思い始めた矢先、やってくれました!! ディレイ又はテープエコーあたりを噛ませたのか 今、自分で弾いていたリフをループ的に流しながらそれをバックにテンポの良い軽快なソロを取り始めてから俄然面白くなってきたのだ。 そういえば昔、TNTが来日した時、ギターのRonni Le Tekroが自身のソロコーナーでステージ上に何台もギターを設置し それぞれを鳴らしてそれをバックにソロを取ったマジックを披露していたのだが私はそれを思い出してしまった。 そんな軽快なソロに いつの間にか定位置に着いたJeffもドラムで参加して息のあったところを見せる。 そんな感じで観客の心を一気に掴んだMattのソロコーナーも終了。 ベースを高く手に掲げ誇示するようなポーズで観客の拍手を集めていた。 今度はMattからJeffへとバトンタッチということかスポットライトがJeffに照らされる。ドカドカ始まるお馴染みドラムソロ。 考えてみれば前回の来日公演もドラムはJeffだった。 だが、いつ聞いてもJeffのドラムは非常にタイトで心地良い。 「音が抜けてくる」という独特な音楽表現があるがJeffのドラムは正にそれだ。 Matt & Jeff の息合ったソロタイムも程なく終了。 再びステージに戻ったJoeに改めて名前を紹介され それに応えるご両人。 ライヴならではの”特別な時間”もこうして終了してしまったのだった。 やがてGalenも含めメンバー全員がステージに再結集して始まった曲は「ALWAYS WITH ME , ALWAYS WITH YOU」。 この曲も昔、よく練習した曲だ。イントロのミュートを効かせながら アルペジオを弾くところから ウルウルしそうになる。 なにせ その昔、飲み会の席でこの曲を、Fenderのアンプ付きミニギターで弾いたという思い出もあるくらいなのだ。 日本広しと言えども居酒屋でJoe Satrianiを弾いたヤツなんて私ぐらいではないだろうか? 曲調としてはメロウでロマンチックなものだけに 女性はうっとりとして聞いているように見えた。 19曲目の「RASPBERRY JAM DELTA-V 」は前作「CRYSTAL PLANET」に収録されていた曲で「Live in Sanfrancisco」でも披露されていたがイントロのキーボードっぽいフレーズからほぼオリジナル通りに再現していた。特にラストのトリルを使ったフレーズが圧巻であった。 フレットボード(ギターの指版)をあちこち行ったり来たりするこのフレーズは見ているだけでも かなりややこしいのにJoeはミスることなくやってのけていた。流石である。 「RASPBERRY JAM〜」の後、間髪を入れずに聞こえてきたジェット音のSE。 次に始まる曲が何かすぐピーンとくる。 そう あの曲。 Joeが現在のステータスを築いたアルバムのタイトル曲であり代表曲、「SURFING WITH THE ALIEN」である。 私は最近、輸入盤で「a Tribute to SATRIANI / VAI」というCDを入手、そこでJake E Leeがこの曲をアレンジを加えて演奏していたのだがオリジナルを生で聞くと感動の度合いが全く違う。 当然、ライヴならではのアレンジされたソロもあったが、それはそれで豪華なフルコースのディナーに特別なデザートが付いてきたような具合であった。 それに怒濤の如く一通り曲が終了しても Joeは演奏を終えようとはしない。 そこで始まったのが あのライヴ盤「Live in Sanfrancisco」でも披露されていたギターを使っての観客とのCall & Response !! 。 あの名盤の再現をここで、しかもその担い手の一員として参加している事に鳥肌が立ってきてしまう。 ほぼライヴ盤と同じようなペンタトニックフレーズを使ってのギターと観客との応酬であったが客も心得たものでJoeが弾いたフレーズを忠実に”声”で再現、応えていく。 正にステージと客席が一体となった瞬間であった。 「ああ もっとこんな瞬間が長く続いたらいいのに」 −と思ったのも束の間最高の盛り上がりを持って大団円、終了を迎えたのだった。 ステージにはJoeの他、Jeff、Matt、Galenが一列に並び礼をしてステージを降りていった。 しかし、Joe達がステージを捌けた後も 拍手は鳴りやまなかった。 それどころか 時間が経つにつれて大きく、激しくなってきている。 その時間にして約2〜3分ぐらいだろうか。 もっと長い時間だったような気もするが、それぐらいのインターミッションを置き 再びJoe、Jeff、Matt、Galenの4人はステージに現れた。 そして Jeffのドラミングから始まった曲は ライヴの定番「FRIENDS」。 「SURFING WITH THE ALIEN」や「SUMMER SONG」に比べ個人的にはもうひとつ印象に無い曲であったが、改めて聞くとこれも名曲だ。 イントロから印象的なメロディラインで観客の心をぐっと鷲掴み。曲が一旦終了してからも Joeはそのまま激しい弾きまくりになだれ込んでいったのだが、そんな夢のような時間はあっという間に過ぎていくのが世の常。時の流れは斯くも残酷である。 「FRIENDS」が終わると 先程と同じようにJoeを中心に肩を組んで一列に並び、深々と一礼。観客から 大きな声援を受ける。 Joeから観客に感謝の言葉が述べられ ステージを後にするメンバー。 でも 鳴りやまない拍手とより大きくなる歓声。 「もしかして 2回目のアンコールも有りなのか?」 −としばらく期待を持たせたのだが やがて客電も点きその願いは脆くも潰えてしまった。 今回のライヴは ここ名古屋が初日という事もあり 事前の情報もなく、そのお陰かまっさらの状態で臨んだ事が「CRUSHING DAY」や「MIDNIGHT」など思わぬ曲の登場の感激を大きくした。 ライヴレポートを書く上で 事前の情報というのは非常に便利なのだが、新鮮な感動を味わう事は少なくなってしまう。そういう点では今回の事は怪我の功名という感じであったが、個人的に大好きな前作「CRYSTAL PLANET」収録の「CEREMONY」が聞けなかったことは少々残念ではあった。 「CRYSTAL PLANET」発売に伴ったライヴを収録した「Live in Sanfrancisco」にも収録されたこの曲は”21世紀のヴェンチャーズ”と副題を付けても良いくらいテンポの良いものでCDを聞いただけでもかなりライヴ映えするものである。 この曲が今回、セットリストから漏れた事は痛かったが また「CRUSHING DAY」や「MIDNIGHT」のように思わぬ復活をして日本のファンにも披露して貰いたい。 〜補足〜 名古屋にはビンテージギターショップとして有名な「Nancy」があるのですが、先日、ひょんな事からこのお店のHPにたどり着くと そこにはJoeの姿が...。 なんでもライヴ当日、ドラムのJeffや家族を伴って来店したそうです。それも店長の自宅に自ら電話を掛けての来店とは驚きです。 ライヴではIbanez(アイバニーズ)一辺倒のJoeもビンテージを前にして只の"ギター小僧"に戻っていたとは なんとも微笑ましいエピソードではありますね。 | ||
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