茅原実里
Minori Chihara Live Tour 2010
〜 Sing All Love 〜







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 演奏が終わり、「みのりん」という掛け声が、広い場内から波状攻撃の如くステージ中央の茅原さんに 浴びせられると、それを制するかのように静かに語り始めた。
 「ライヴが無いと生きていけません」と言い切り、大喝采を浴びる茅原さんだったが今の彼女に とってその言葉は嘘、偽りのないものであるだろう。兎に角、歌を唄う事が楽しくて仕方ない というのがひしひしと伝わってくるパフォーマンスがそれを証明していた。
 「もうすぐ 武道館に立つ事が出来ます」と自らの言葉で武道館公演を伝えると客席からは「おめでとう」という大きな声が掛けられ、会場は温かい空気に包まれた。
 そして−ピアノが最後の曲のイントロを奏で始めた。


 ラストソングはアルバム「Sing All Love」のラストトラック「sing for you」
 茅原さんが(公式には)初めて、作詞した曲である。
 この曲を一度でも聴いた事があるならば、ライヴの最後に何故、選ばれたのか?は良く判ると思うが、彼女の売れていなかった〜 不遇だった頃からの想いを素直に、平易な言葉で綴ったこの歌詞に私はいつも涙しそうになってしまう。それだけに、この曲は、あからさまに、茅原さんによる茅原さんの為の”涙腺崩壊”曲としてアルバムリリース当時からファンには予想され、或る意味、期待もされてきた。

 しかし、結果的にはそうならなかった。
 茅原さんは最後まで、しっかりと唄いきったのだった。これには会場に居た誰もが驚いたと思う。
 特に、昨年の名古屋公演の涙、涙のフィナーレを経験した者なら尚更だっただろう。
 気の利かない手拍子や、場を壊すサイリュウムがほとんど光ることもない静謐な空間で、 凛として唄い上げた茅原さんに観客の誰もが惜しみない拍手を贈った。

 唄い終わると、茅原さんはバンドメンバーと共に肩を組み、客席に一礼。
メンバーが先にステージを降りる中、彼女一人だけが残された。
 茅原さんはSEの音楽に促されるように、ステージ左右を飛び回り、客席に笑顔を振りまき 最後の挨拶を行った。
 その後、茅原さんはステージ中央の階段を上り、天辺に到達。
我々、観客は息を飲んで彼女から発せられる次の言葉を待った。

「みんな、だーい好き」

 茅原さんはマイクを通さずにそう叫び客席に投げキッスをすると、名残惜しそうにステージを去っていった。










 このライヴから早くも1ヶ月が過ぎた。
その間に、ツアーは順調に進み、先日の武道館・追加公演で全日程が終了した。
 茅原さんにとって憧れの地”日本武道館”でのライヴは、並々ならぬ覚悟で臨んだという事もあり大成功に終わった。
 武道館公演は「Sing All Love Tour」の集大成であったが、茅原実里というアーティスト にとっても、これまでの歌手活動の集大成であったと言ってもいい。
 茅原さんはライヴの冒頭、『私にすべてをぶつけて下さい』と観客に請うていたが、 いつも全力で歌に向かう彼女の姿勢が、ファンの心を打ち、やがては武道館公演成功をも導いたのではないだろうか。

 歌手活動再開から3年。
武道館という目標に到達した今、次なる高みを目指す、茅原さんからまだまだ目が離せそうにはない。






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