NIGHT RANGER
2003 Japan Tour ライヴ
with COLIN BLADES







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 「THE SECRET OF MY SUCCESS」が終われば、休む事無く再びマイケルが軽快でリズミカルなリフを奏で始める。
 そしてドラム、ベース、ギターが一斉に加わり大きな音の束となると客の盛り上がりも比例して大きくなっていく。
 再結成NIGHTRANGERの代表曲でもある「NEW YORK TIME」だ。
 残念な事にこの曲を収録したアルバム「NEVERLAND」は現在、国内廃盤になってしまったがこの場に集まっている熱狂的ファンは当然、チェック済の筈。
 サビの「New York Time」では今夜、何度目かの大合唱。そういえば以前、このサビの部分を「モンダーイナーイ」と替え歌して唄ってたっけ。
 そんな意外な曲の登場の後は、もう何百回、何千回聞いたか判らない荘厳な雰囲気さえ感じさせるキーボードの白玉コードから曲がスタートする。
 その昔、エディ・ヴァン・ヘイレンのギター・プレイに対抗するには二人でリードを取るしかないという思いで書かれたという「EDDIE'S COMIN' OUT TONIGHT」はその思いの通り、後半のギターソロは文句無くカッコイイ。
 未だ私の『永遠のギター課題曲』であるが思えば初来日の模様を収めたのライヴビデオ(未DVD化)を見てギターを弾く事の格好良さを再認識、いわばギターを今まで弾き続ける事になった私の「初期原動の1曲」でもあるのだ。
 ブラッドのアームを使いまくったオリジナルを軽く超越するソロから(この曲最大の見せ場である)交互にスケールを駆け上っていく二人のフレーズ、そして最後はそのフレーズをハモって正に”ツインリードはかくありき”というのをまざまざと見せてくれた。
 またブラッドのソロからジェフのソロに移る時、”ブラッドがジェフを指さす”というあのシーンが再現される至っては私にとってもう感動しかなかった。という事も付け加えておきたい。
 「EDDIE'S COMIN' OUT TONIGHT」の興奮を冷ますように、次にマイケルのピアノフレーズが場内を満たした時、おもむろにケリーがドラムセットを離れステージ中央に立ちスポットライトを浴びる。センターマイクは使わずに自身のインカムマイクでしっとりと唄い始めた「SENTIMENTAL STREET」は思えば前回来日時も同じようなスタイルであった。
 だが今回は違っていた。
 途中でケリーもドラムに戻り、やがて奧の暗闇に下がっていたジャック、ブラッド、ジェフが前に出て曲に合流。正にオリジナルヴァージョンの再現となったのだ。
 ケリーの力強いボーカルが誰の心にも残ったであろう「SENTIMENTAL STREET」は非常に素晴らしいものであったがステージ上はそんな余韻に浸る暇も無く、ツアークルーによるセットチェンジで忙しい。
 ステージには二つの椅子が用意されジャックとブラッドがTakamineのアコースティックギターを抱えてそれに座りジェフはそのまま立ってヘイマーのダブルカッタウエイをクリーントーンで弾き始める。
 ジャックが「トミー・ショウ」「テッド・ニュージェント」....と名前を紹介し始めると曲は、DAMNYANKEESの名曲「HIGH ENOUGH」だ。
 ブラッドのアコギソロまで飛び出すこの曲は最初から最後まで客による大合唱で綴られ感動的であった。
 アコースティックセットの2曲目はジェフ作曲の「GOOD BYE」
 ヘイマーのダブルカッタウエイから繰り出されるアルペジオは繊細で美しいとしか言いようがない。そしてこの曲も途中からマイケルのキーボードが加わりアコースティックからいつのまにかエレキに持ち替えたブラッド、ジャックによるエレキな「GOOD BYE」−原曲を忠実に再現した。再結成後そしてジェフ・ワトソンのソロライヴでも「GOOD BYE」は定番曲であったけれどこのようにオリジナル通りに演奏された事は私の経験上無かった事である。ゆえにただただ単純に嬉しい。
 「GOOD BYE」が終わればマイケルのキーボードに乗って「FOUR IN THE MORNING」が畳みかけるように続く。
 もちろん「Take anymore 〜I can take anymore 〜」で大合唱。盛り上がりは最高潮だ。
 (ブラッドは広島や東京公演で舌の上に置いたピックを客席に投げる”技”を披露したらしいのだがここ名古屋ではどうだったか?正直な処、良く覚えていないというライヴレポを書くに値しないダメ筆者である 苦笑)ライブも終盤に差し掛かったという訳かまるでメドレーのように矢継ぎ早に次の曲は始まった。
 最近、私も弾く機会の多い「WHEN YOU CLOSE YOUR EYES」だ。
 だから自然と左指が”エアーギター”を奏でてしまう。
 ブラッドのアームを使った(イントロと同じ)フレーズからジェフの流れるようなギターソロ、そして後半は再び、アームを効果的に使ったブラッドのプレイで曲を締める。この曲はギターも良いが歌のメロディラインも非常に素晴らしい。
 だから当然の如く、サビでは大合唱。何故か私は唄いながら昔、見たこの曲のプロモーションビデオの事が懐かしく思い出されたのだった。
 しかし「WHEN YOU CLOSE YOUR EYES」が終わってもバンドの勢いは全く止まらない。
 観客に至っては今やバンド以上の勢いがあると言ってもいいくらいだ。
 然もそこにジャックが「Don't Tell Me You Love Me」と曲をコールするものだから、観客の熱狂に火を注ぐ(?)結果に。大歓声の中で始まった「DON'T TELL ME YOU LOVE ME」、これも何百回聞いたか判らない正に”体に刻み込まれた曲”だ。
 ブラッドのアームを使ったソロ、ジェフのエコノミーピッキングによる超人的速さのソロとNIGHTRANGERの魅力があますところなく詰め込まれた名曲である事は言わずもがなだが曲後半、観客だけの大合唱というサプライズもあってCDで聞くとはまた違う光を放った。
 これだからライヴ通いは止められないのだ!
 お馴染みのジャックの最後の大絶叫と共にブラッド、ジェフ、ケリー、ジャック、マイケル各人がありったけのテクニックを込め曲も大団円。
 まるで熱病に冒されたような観客を後に残し、メンバーは静かにステージを降りていった。



 メンバーが去っても客席の熱狂は全く衰える気配を見せない。
 その証拠にメンバーの姿が見えなくなるやいなや始まる手拍子と歓声。
 それは時間と共に激しくなるばかりであった。
 その勢いに押されてわずか2分程度でステージに戻ってくるメンバー達。
 ジャック、ブラッド、ジェフが薄暗い闇に紛れる中、ケリーがスポットライトを浴びてセンターマイクに立ち、ここでようやく正式なメンバー紹介が行われた。
 「KeyBorad マイケル・ローディ GreatWhite」「ブラッド・ギルス、ジェフ・ワトソン Guitar」「ジャック・ブレイズ Bass Guitar」と紹介し終わった処で即座に今度はジャックから「ケリー・ケイギー Drums」とお返しに紹介されケリーも満面の笑顔で応える。
 (もちろん名前が呼ばれる度にそれぞれ観客から大きな声援を浴びていた。)
 またケリーがDrumから離れセンターに立ったという事は次の曲は.........案の定、IGHTRANGER最大のヒット曲「SISTER CHRISTIAN」
 だが今宵の「SISTER CHRISTIAN」はちと違う、いや、かかなり違った。
 ケリーの指揮の元、マイケルのピアノをバックに冒頭の8小節〜16小節だかを我々観客のみの合唱となったのだ。
 その様は正に圧巻でケリーがドラムに復帰して演奏を再開、唄い始めても大合唱は止まらない。みな感心するほど歌詞を一語一句間違えずに覚えている。
 曲の終わりには再び、ケリーがステージ中央に歩み出て独唱。
 素晴らしいものとなった。
 そんなケリーの歌の巧さの余韻を浸るかのような雰囲気をジャックのMCが切り裂いた。

 「You Can Still Rock in Na ・ Go ・Ya !!」

 ブラッドがアームを使ってジャックと対話するように音を発すれば会場全体は大絶叫に包まれた。
 やがて聞き慣れたリフとメロディが我々を狙い撃ちにすれば既にKnock Out寸前。
 アドレナリンが上がりすぎて誰もがこの時ばかりはジャンキーになってしまったと言っても過言ではない。
 いわゆるナチュラル・ハイというのはこういう状態を言うのだと思うがこんな中毒なら大歓迎だ。
 もちろん「Rock in Rock in Rock in 〜」「You Can Still Rock in America Oh Yeah All Night 」の部分は大合唱。歌に合わせ拳を突き上げノリまくる。
 そして いよいよこの曲、最大の見せ場、ブラッドとジェフのギターソロが始まった。
 このブラッド、ジェフ双方のギターソロで思い出されるのは懐かしきラジオ番組「パープルエクスプレス」のギター講座。ラジオでギターを教えるというある意味”画期的な”この番組では当然、この「YOU CAN STILL ROCK IN AMERICA」のソロも課題曲に選ばれた事があった。
 アームダウンしてハーモニクス(それも9フレット上というハーモニクスを出しにくいポイントで)を出しアームアップ、ダウンを繰り返しまるで”馬の嘶き”のような音を出すという斬新なアイデアの妙、当時、クリケット奏法と呼ばれたテクニックの秘密、8フィンガータッピングのコツ(左手ミュートの仕方など)を事細かく解説。私もよく練習に励んだものである。
 そんな事が思い出されていく目前でまるで果たし合いのように凄い技が繰り出されていく様は正に圧巻の一言だった。
 またこの曲でも途中で観客に「Rock in America 〜!」と合唱を任せるなど我々観客とバンドの一体感は最高潮に達した。私自身、ライヴでこれほどの一体感を感じたのは何年ぶりかというぐらいである。
 しかし、始まりが有れば終わりもあるというのは森羅万象、物事の常である。
 「YOU CAN STILL ROCK IN AMERICA」が大・大・熱狂で終わった後、ジャックを中心としてマイケル、ジェフ、ブラッド、ケリーで肩を組み2、3回会釈した後メンバー達はステージを去り、二度と戻る事は無かった。







 気が付けばあっという間の90分少々。
 ライヴとしては短いものであったが満足度は非常に高かった。
 今年、来日20周年であった事は冒頭にも書いたが、それを記念しての今回のライヴであったかどうかは定かではない。
 この事情を知らぬ者にとっては「何故、(新譜も発表していない)今なのか?」と非常に疑問を持つようだが繰り出されるどの曲においても大合唱につぐ大合唱という会場全体を包む一体感は今の時代、そうそうお目にかかれるものじゃない。
 演奏された曲がファンなら必ず知っているというヒット曲の連続であった−いわばオールタイムベストな選曲であった事もあるが、根本はNIGHTRANGERの楽曲の良さにあると言える。
 判りやすく誰でも歌えるメロディライン、今、現在でも最先端にいると言っていいくらいのギターテクニック、ノリやすいダイナミックなリズム、格好いいギターリフ等々、洋楽ファン、HR/HMファン、ギターマニアを夢中にさせる要素がデヴュー当時からこのバンドにはいっぱいあった。
 NIGHTRANGERの全盛期を知るファンは今や自分を含め30代半ば以上だと思うが、この会場に詰めかけたファンの中にはたまたま見たネットの情報や、新聞の片隅の小さな広告で来日を知り、それこそ10数年ぶりに生でバンドの音を聞いたという人も多かったかもしれない。
 30代半ばと言えば、就職や結婚を経てひとまずは生活の中に落ち着きを見いだしている年齢と言えるが私のようにずっとNIGHTRANGERを追っかけ、その他のROCKバンドを聞き続けていた者は別として就職を期に音楽の世界から距離を置いていたというのも案外多いと思う。
 そんな人達が、さて また昔のように洋楽でも聴こうかと思うと、最近の曲では心底、聴きたいというものが無い事に気づき慄然としたのではないだろうか。
 ヒットチャートはRAPを中心としたHIP HOPやブラコンを中心としたバラード系、ROCKと言えばミクスチャー系やラップとメタルが融合したバンドなど、聞いたことのない名前のバンドばかり。
 自分達が昔、熱心に洋楽を聴いていた頃、MTVや「ベストヒットUSA」で頻繁に掛かっていったバンドは一体どこへ行ってしまったんだ?
 こう戸惑った人もいただろう。
 そんな時、「昔、好きだったNIGHTRANGERはどうしたんだろう?」という思いでネットを検索、そこでバンドの復活を確認し会場に懐かしさと期待に胸を膨らませて足を運んだと思う。
 言ってみればそんな昔からのファンばかり(もちろん後追いの若いファンもいたが)のライヴでもあった訳で、口さが無い者には「80年代バンドの懐メロ営業」と否定的に捉える向きもあるが私は全くそう感じていなかった。
 あの熱の入った演奏、昔よりも格段と高度化、複雑化しているブラッドとジェフのギターテクニック、バンドの楽しそうな雰囲気そしてそれを熱狂的に受け容れた我々、ファンの姿。どこをとってもオールドバンドのドサ回り的な営業の姿を此処に見いだす事は出来ない。
 言うなれば今のNIGHTRANGERも、時と共に変化、成長し続ける”現在進行形のバンド”であると言えるのだ。



 そんな”現在進行形”なNIGHTRANGERには次回はぜひ新譜を持って来日して欲しいと思うがとりあえずはもうすぐリリース予定のジャックの初ソロアルバムと今回の東京公演のライヴも含むバンドの結成20周年記念DVDを楽しみに待ちたい。









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