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2011年以来の、通算12回目となった今回の来日公演。 1983年の初来日から昨年、30周年となった訳だが、そのタイミングでの来日は叶わず、31年目となった今年、ニューアルバム「High Road」リリースと共にナイトレンジャーは日本の地を踏んだ。 東京(2公演)大阪と続いたパフォーマンスは、ファンから熱狂的に受け入れられ 評判は上々だとネットで報告されていたが、最終日の名古屋公演は 予想外のサプライズもあり近年稀にみる盛り上がりを見せたのだった。 会場となったダイヤモンドホールは、再結成ツアー以来2回使用されていたものの 今回のようにスタンディングではない(一部はそうであったが)椅子指定のライヴは 初であった。来日公演としても、スタンディングでないのも久しぶりである。 今回、指定された自分の席は前から4列目 ― 左寄りの処(PAスピーカー前という感じ)であった。 4列目であるが、普通のホールに比べれば断然、ステージからの距離は近い。中央であったなら もっと最高!であったのだがそれは仕方がない。 開演から約5分ほど時間が過ぎると、スピーカーからオープニングを知らせる SE ― AC/DCの「You Shook Me All Night Long」が流れ始めた。 「Please Welcome Night Ranger !!」という野太い叫び声のアナウンス。 大歓声の中、始まった1曲目は80年代のライヴを思い起こさせるように2ndアルバムから 「Touch Of Madness」である。往年時と同じく力強い演奏で観客を沸かせ、ブラッド・ギルスの強烈なアーミングが 場内に響き渡った。 懐かしき「Four in the Morning」では 『Can't take anymore , I can't Take anymore』 のサビで自然と大合唱だ。 ナイトレンジャーのライヴの楽しさを実感できる一瞬であった。 しかし、今の再結成以後のナイトレンジャーの良い処は決して懐メロ一辺倒のバンドでは ない事である。それを証明するかのように3曲目にはニューアルバムから「Knock Knock Never Stop」 が披露された。アルバムの中でも特にノリの良いだけにこの選曲は大いに納得である。 ジャック・ブレイズの”名古屋の観客”を鼓舞するMCの後は、前アルバム「SOMEWHERE IN CALIFORNIA」から「Lay It On Me」。 ニューアルバムでもボーナストラックとしてライヴ音源が収録されていたくらいだから バンドの定番曲になりつつあるのかもしれない。この曲もサビで「OH〜OH〜OH〜」と合唱出来るので 非常に楽しい。 この直後のMCで、ジャックは「1983年の初来日 名古屋公演に来た人?」と訊いた。 すると、大勢の手が挙がった。当然、自分もその中に含まれていた。バンド側も来日30周年をかなり意識 しているのがよく判ったエピソードである。私はこれだけでもかなり嬉しかった。 また新たに加わったギターのケリ・ケリーを紹介し(バンド内にケリーが二人になったという事で) ケリー・ケイギーを「KK1」、ケリ・ケリーを「KK2」と命名した。 そして、その「KK1」にステージを預ける形で、印象的なキーボードメロがエリック・レヴィによって奏でられた。お馴染み「Sentimental Street」である。 ドラムキットから降りた「KK1」こと、ケリー・ケイギーがハンドマイクを持って独唱する。 サビのコーラス部分には客席にマイクを向け、合唱を促す。我々、観客も当然それに応えるのだった。 ケリーが急いでドラムキットに戻ると、ギター、ベースの分厚い音が演奏に加わった。 曲が終わり再び、ジャックがマイクを取り、しゃべり始めた。その横で、今宵はじめてブラッド・ギルスも 話に加わった。するとブラッドは 「次に「Eddie's Comin' Out Tonight」と「Night Ranger」どちらが聞きたい?」というような事を 訊いてくるではないか! ブラッドの曲名コールと共に、みな一斉に手を挙げアピールする。 私は大好きな「Eddie's Comin' Out Tonight」に手を上げた。 しかし「Night Ranger」も人気が高い。 両曲とも同じぐらいの歓声と手があがり、ブラッド、ジャックともその判断に苦慮しているようだった。 再び、客席にアンケートしてその結果、僅差で「Night Ranger」が決まった。残念。 ジャックが「ナイト・レンジャー、ナイト・レンジャー、ナイト・レンジャー」と大絶叫で連呼すると あの特徴的な重いリフで曲が始まった。 7曲目は定番の人気曲「Sing Me Away」であった。この曲の見どころと言ったらやはり、ギターソロ。 ブラッドのソロが目立つ曲が多い中、この曲だけはジェフ・ワトソン−つまりケリ・ケリーがソロを取るのだ。 (なぜ、よく知っているかというとギターをコピーしているから 笑) しかも、ケリ・ケリー側に位置する自分にとっては目の前である。一時も見逃す事は出来なかった。 もちろん、ブラッドと奏でる気持ち良いハーモナイズフレーズも最高である。 8曲目は、驚きの選曲だった。1stアルバムから「Can't Find Me A Thrill」であったのだ。 2008年のFirehouseと行ったジョイント来日公演で20数年ぶりに披露され大感動したが、この曲のリフがブラッドによって弾き出された瞬間、感激のあまり我を忘れた。 後にジャックによっても説明されたが、先の東京、大阪公演でも披露されなかった”名古屋だけの サプライズ披露”であったのだ。 (ただ、ジャックの初来日以来の披露という説明は間違っていたけれどね。 苦笑) 9曲目はお馴染みの「The Secret Of My Success」である。再結成以後、必ずセットリスト入り している曲であるが、この曲がマイケル・J・フォックス主演の同名映画主題歌だった事を知る者も今や確実に40代以上だろう。 曲後は、すぐにギターをエレキからアコースティックに持ち変える二人。 するとジャックがケリ・ケリーのギターとベースを交換しようと提案、すぐそれを実行した。 ギターを受け取ると、ジャックはアコギであのイントロを爪弾いた。 しかし、そんなお遊びも僅かな間であった(MR.BIGのように交換して1曲まるごと弾くことは流石にない)。 元に戻すと、再びあのイントロと共に「High Enough」が始まった。言うまでもない、Damn Yankeesの代表曲である。もはや、これも再結成後では定番の曲である。 東京で、誕生日を迎えたキーボードのエリック・レビィ(ステージ上でケーキ攻撃の洗礼を受けた)の紹介を 終えると往年を思い出せるような分厚い音がエリックの指から奏でられた。 ニューアルバムのタイトルトラック「High Road」であった。そのイントロに乗せ、ジャックの指導で 曲中のコーラス・煽りを練習した。イマイチ、巧くコミュニケーションが取れていない感じではあったが 曲が始まってしまえば、そんな事も杞憂。「Yeah 〜」のコール&レスポンスのタイミングもバッチリであった。 曲後、再び、アコースティック・ギターが用意された。すると、ケリ・ケリーが聞きなれない曲を弾き始めた。 それに合わせて、ジャックがおもむろに歌い始める。何の曲か判らない....ここで歌うのは先の東京、大阪では アリス・クーパーの「Schools Out」か、AC/DCの「Highway to Hell」という話であったのだが...。 (後で判ったことだが、これもアリス・クーパーの「I'm Eighteen」であった。エレキでは僅かに聞いたことあったが、 アンプラグドだとかなり印象が違う......) 判らないままショートバージョンで曲が終わり、それは聞き慣れた曲へと引き継がれた。ケリーが再び、ハンドマイクでステージ 中央に出てきて「Goodbye」を歌い始めた。後半はエレクトリック・バンドバージョンへ。ブラッドの奔放なソロと共に曲はエンディングを 迎えた。 休みなく、ブラッドのアーミングが絶妙な音程のイントロを作りだした。「When You Close Your Eyes」。 昔、よく見たこの曲のMVやら、ギターでコピーした時の記憶が蘇ってきた。懐かしさに心がいっぱいになる。そして ― 「Don' Tell Me You 〜」「Love Me」 「Don' Tell Me You 〜」「Love Me」...... 間髪を開けず、ジャックと我々の曲タイトル・コール&レスポンスで代表曲「Don't Tell Me You Love Me」が始まった。 この曲もやっぱり、見所、聞き所は曲中のギターソロである。特にジェフ・ワトソンのエコノミー・ピッキングで 弾かれる高速フレーズ。これをケリ・ケリーがどのように弾きこなすのか?興味津々だった。 丁度、タイミングよく目の前に来るケリ・ケリー。彼はジェフ・ワトソンと全く同じようにフルピッキングで弾ききったのだった。 見せ場のソロが終わると、ジャックは明らかに違う曲の歌詞を歌い始めた。すぐこれがEaglesの「Hotel California」だと判った。 それもワンコーラスほどで終わると、これまた聞き慣れたブラッドが繰り出す8ビートのミュート・リフが場内に響き渡った。 ハモンド・オルガントーンのキーボードが唸りをあげる。Deep Purpleの「Highway Star」だ。 しかし、それもギター・ソロに入る直前で終わり再び「Don't Tell Me You Love Me」に戻った。まるで何か、焦らされているような 感じである。 熱狂のうちにエンディング。メンバーは一旦、ステージを降りていった。 ステージが暗転すると同時に激しい手拍子。それはアンコールを求める声にならない声でもある。 そんな手拍子はメンバーをステージに復帰させる強力な後押しをし、まずケリーが一番に戻ってメンバー一人ひとり 呼び込んだ。 最後にジャック・ブレイズが姿を現し、ブラッドに声を掛けるとこれまた懐かしいギターリフが響き渡った。 「Penny」− 1stアルバムの曲である。東京公演で先立ち、披露された情報もあったのでそれほど驚きもなかったが 最終日でもやってくれたことが素直に嬉しかった。それに、この「Penny」はおそらく、31年前の初来日公演以来の 日本披露なのだ。感激しない訳がない。一緒に歌い、拳を振り上げた。 「Penny」の次はニュー・アルバム収録の「St. Bartholomew」であった。 古参曲の後に、最新曲を持ってくるこのセットリストの妙が心憎い。 イントロではケリ・ケリーが8フィンガー・タッピングを見事にキメていた。 疾走感溢れたケリ・ケリーとブラッドのハーモナイズド・ソロプレイ。とても気持ち良い。 曲終了で大きな歓声が湧く中、エリックが静かにメロディを奏で始めた。言わずと知れた「Sister Christian」である。 ステージ中央に出てきたケリーが観客に歌うように促す。客席にマイクを差し出し、一緒に歌うケリー。 昔は”Night Rangerを結果的に解散へと追い込んだ曲”という事で抵抗感があったものだが、再結成して10年以上たった今は もうそういうわだかまりもなくなっていた。素直に良い曲だと思えるようになっていた。 曲エンディングも、ドラムキットを離れたケリーがハンドマイクで熱唱。感動的に終わりを迎えた。 ラストはもちろん−「(You Can Still) Rock In America」。 地を這うようにハーモニクスを絡めた馬の嘶きのようなブラッドのアーミングが響く。 お馴染みのリフ。お馴染みのイントロフレーズ。どれだけ練習したことか。 サビで一緒に歌い、拳を振り上げる。 ブラッドから、ケリ・ケリーへと繋がるギターソロは永遠だ。 特に注目されたケリ・ケリーが弾くソロには、ジェフ・ワトソンの十八番”8フィンガー奏法”を世に知らしめた フレーズが印象的に使われている。ナイトレンジャー歴代のギタリストは、レブ・ビーチは異なるものの 前任のジョエル・ホークストラも丁寧にそれをコピーしてきた。だからこそ、一瞬も見落とす事が出来なかったのだ。 だが、ケリ・ケリーはそんなファンを見透かすように8フィンガーではなく、フルピッキングで弾ききった。 「St. Bartholomew」の要所、要所を8フィンガーで弾いていたケリ・ケリーだから、出来ない訳ではないのは 周知の事実である。これは、敢えて同じ事はしない ― というギタリストとしての矜持だろうか。そんな心持さえ 感じた。 『 ナゴヤ イ・チ・バ・ン !! 』 ジャックが何度も叫んだ声が木霊した。 恒例の三本締めをもって、ライヴは終了。 31年目のナイトレンジャーのライヴは、初来日をメンバーも、観客も意識させるライヴだった。 初来日に深い思い入れがある私にとっては、感動的だった再結成後初の来日公演以来、心に残る ものとなった。 |
SET LIST | |
◆ | Opening S.E. You Shook Me All Night Long (AC/DC) |
1 | Touch Of Madness |
2 | Four in the Morning |
3 | Knock Knock Never Stop |
4 | Lay It On Me |
5 | Sentimental Street |
6 | Night Ranger ※ |
7 | Sing Me Away |
8 | Can't Find Me A Thrill |
9 | The Secret Of My Success |
10 | High Enough (Damn Yankees) |
11 | High Road |
12 | I'm Eighteen (Acoustic set)(Alice Cooper) |
13 | Goodbye |
14 | When You Close Your Eyes |
15 | Don't Tell Me You Love Me (include Hotel California / Highway Star) |
・・・Encore・・・ | |
16 | Penny ※ |
17 | St. Bartholomew |
18 | Sister Christian |
19 | (You Can Still) Rock In America |
20 | San-Bon-Jime |
緑字はニューアルバム『High Road』収録の新曲。
ナイトレンジャー単独インタビュー、3年ぶり12度目の日本ツアーに意欲 http://www.sanspo.com/geino/news/20141004/oth14100416070019-n1.html |