PAUL GILBERT
" PAUL THE YOUNG DUDE"
インストア・ライヴ

HMV篇








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 2003.6.01 PM3:00 HMV 生活倉庫店




 HMV店内のそう広く無い仮設のステージ。
 ふと天上を見上げれば球体状の鏡が反射して鈍く光っている。
 その鏡にはライヴの開始を今か、今かと待つ観客の姿が歪んで映っていた。
 その数、100人あまり。
 開始時間が近づくにつれ、緊張感と共にその熱気で会場の温度も上昇している事を肌でひしひしと感じる程だ。
 予定の開始時間を5分ほど過ぎたところでユニバーサルミュージックのスタッフの合図でようやくポールが呼び込まれ奥のエレベーターホールからこちらに向かってくるのがはっきりと判る。
 それも手にはお馴染みのスカイブルーのアイバニーズ、PGM200を携えてである。

 「やはりエレキも弾くのか」

 事前の情報で今回はアコースティックオンリーのライヴになると聞いていただけに ステージ上にマーシャルJCM2000がスタンバイされているとはいえ、これはうれしい誤算だった。
 ステージに上がればポールは挨拶もそこそこにPGM200をマーシャルにビルド・イン。すぐさまWarming Up程度にジミヘンばりのフレーズをゆるやかに弾き始めた。
 「コンニチワ」という簡単な挨拶と共にリフを奏でれば聞き慣れた曲。
 「MASA ITO」だ。ご存じのようにあの音楽評論家、伊藤政則氏に捧げられた曲である。ポールの前作「Burning Organ」にシークレットトラックとして収録された曲がこんなところで聞けるとは正直驚いた。
 唖然とする中、「MASA ITO」が終了すればこれまた耳をつんざく馴染みのフレーズ。
 「GREEN TINTED 60's MIND」の有名なイントロのタッピングは大きな歓声を生んだ。
 これがイントロになり5、6弦を中心としたスケール多様のミュート気味のフレーズから徐々に3、2、1と弦を降りていき縦横無尽な速いフレーズとなるとHMVは一瞬にしてポール・ギルバートの世界に彩られる。
 この熱い演奏はポールの「アリガトウ」で終了したが余韻は途切れることはなかった。
 ポールはその余韻を楽しみかのような我々、ファンに向かって語りかけた。
 もちろん話題は、新作のベスト盤「PAUL THE YOUNG DUDE」の事なのだがその流れで「次はこのアルバムで一番(好きな)の曲......SOUL VERSIONで」と言って始まったのが個人的にも大好きな曲、「DOWN TO MEXICO」であった。
 SOUL VERSIONというだけにイントロはオリジナルとは異なったものになっていたが気が付けばいつものあのジミヘン的なリフに見事に繋がっている。それと共に観客の間からも自然発生的に手拍子が起こり、どんどん力強くなっていく。
 曲の端々に速いフレーズのオブリガードがあり、かなりインプロヴァイズもされている。
 おまけにオリジナルに無い、長いギターソロもあり、オリジナル以上のアグレッシブささえ醸し出していた。(ラストには歯で弾く芸当も飛び出し、曲の印象ばかりでなくポール自身、まるでジミヘンスタイルを貫き通しているかのようであった。)
 次に披露したのはカラオケCDをバックにした「I'M NOT AFRAID OF THE POLICE」
 「PAUL THE YOUNG DUDE」に収録された新曲の一曲で、今回最もポールが楽曲製作で力を入れたと言われている。
 それだけにカラオケCDも自前で用意するなど用意周到さが伺われたのである。




 しかし、エレキの演奏もここまで。

 PGM200をユニバーサル(?)の女性に手渡した後はアコースティックギターを手に取り、ストラップを肩にかけ即座にチューニングを始めるポール。
 今回、何度なくこの様なチューニングシーンが見られたが、普段(大がかりな)ライヴでは決して見せない素のポールが垣間見えて、これはこれで貴重であった。(チューニングする度に弦をベンドして音を確かめるという”癖”も今回、初めて知った)
 また このアコースティックギターさえも足下のエフェクターを通しマーシャルにビルド・イン。
 ポール言うところの『ヘヴィメタル・アコースティックギター』はピックアップの装着ばかりでなくかなりの改造が施されているように見受けられた。
 その『ヘヴィメタルアコースティックギター』から繰り出された音は次の一言に尽きる。
 「太い!」
 アコースティックギターから出ている音とは思えない程の”太さ”なのだ。
 音だけ聞いていたらレスポールあたりと間違えるほどで、『アコギ(エレアコ)の音はこんな音』という自分の既成概念が見事に打ち砕かれてしまった。正に「目から鱗」とはこういう事をいうのかもしれない。
 私が唖然としている中、ポールはお馴染みの手癖フレーズで早弾きを決めWarming Upも完了。
 「Special Song For Nagoya」「アタラシイ キョク」
 と言って始めたのが”新しい”ともっとも対極に位置するRock'n Rollの古典、「JOHNNY B. GOODE」
 比較的、原曲に近く「Go go go Johnny go go」と歌いながらRock'n Roll定番のリフを奏でているが、それが中盤のギターソロに移ったあたりからポールらしいフレーズが顔を見せ始めた。後半のギターソロなどは尚のこと。だが基本的にはブルージーなフレーズに終始していたのでオリジナルの曲調をぶち壊すものではなく、時にDeep Purpleのフレーズも飛び出すなどのポールのサービスぶりに私は終始、にやけっぱなしだった。
 次にポールが紹介したのは「GENESIS」のカバーで「THE LAMB LIE DOWN ON BROADWAY」
 限定盤「PAUL THE YOUNG DUDE」に付いてくるアコースティックアルバム「GILBERT HOTEL」の7曲目に収録されているかなりテクニカルな曲だ。
 それにギターもノーマルから一音下げる必要がある為、即座にチューニングを開始、弦がペグ(マシンヘッド)から緩められていくチューニング独特のあの音が場内に響き渡る。そんな瞬間も観客は一時も見落とすことも無いように固唾を飲んで見守っていた。
 チューニングが完了すればそんな静寂も激しいタッピングでいとも簡単に破られた。
 バックで自作カラオケが流れる中、ブリッジ寄りでさえ起用にタッピングを続けるポールの姿に観客、みな驚きの表情を隠せないでいた。
 タッピングのイントロが終われば今度はストリング・スキッピング(弦飛び奏法)の連続。それも歌を唄いながらというから驚きを通り越して神懸かり的さえ感じた。
 高らかに歌い上げるとエンディングは再び、「GREEN TINTED 60's MIND 」のアウトロのタッピングで締めくくり演奏は終わった。




 こうして一つ目のインストアライヴも終了。
 その後、抽選会、握手会&サイン会と流れるようにイベントは進んでいったが、私の気持ちは早くも次の会場である「TOWER RECORD」へと飛んでいたのだった。









まだまだ続く





SET LIST
1WARMING UP
2MASA ITO
3DOWN TO MEXICO (soul version)                   
4I'M NOT AFRAID OF THE POLICE
5WARMING UP
6JOHNNY B. GOODE
7THE LAMB LIE DOWN ON BROADWAY (GENESIS)      











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