PAUL GILBERT
" PAUL THE YOUNG DUDE" ツアーライヴ







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 「整理番号68番」

 これが今回のポール・ギルバートのライヴでゲットしたチケットにあった番号である。
 電話で頑張った御陰かそれほど悪くない番号だ。しかし、番号がいいからと言ってベストポジションで見れるとは限らない。
 特にライヴハウスのスタンディング形式では尚更だ。
 ポールの場合、過去3回のソロツアー全て(RacerXもそうだが)ここ名古屋パルコにある「クラブクワトロ」で行ってきた。そして いずれの場合も私は机のある席でイスに座って見てきた。
 「Rockのライヴなのに座って見るなんて邪道だ」
 という意見もある事だろう。もっともな意見だ。だが自分なりにライヴ全体を把握したい。客席の反応を確かめたいというのもあり、ライヴハウスでも全体を見渡せるような処で見るように私は心がけている。
 (年齢的にずっと立詰めというのが辛いというのも もちろんあるが...笑)
 今回も自分なりのベストポジションを求め、開場30分程前に会場に到着した。


 急いでクワトロへと続く階段に急ぐが30分前とあってまだ30人ぐらいしか並んでいない。私も壁に掲示された番号指定に従い、あたりを付け並んだ。
 そして、これまた恒例とばかりに鞄から時間潰しに「陰の季節」(横山秀夫 著)を取り出しページを捲る。
 しかし 開場時間の6時が近づけば文庫本に熱中出来るような雰囲気は人々の喧噪でいとも簡単に破られた。



 PM6時 過ぎ。

 整理番号に倣っていよいよ入場開始。
 私も入り口でのカメラチェックを経て急いでクワトロ内部に入っていく。
 すぐに机の席が目に入ってくるのだが、どの席もあらかた捕られてしまっている。
 今回は年齢層が高いのだろうか?と危機感で一杯になるが、反対側に目を転じれば、ようやく2席ほど空いている。
 素早くそこをゲットして、これでようやく一息つけたという感じだ。
 だが、ここから開演までの約1時間、いつもの事ながら退屈な時間を過ごさなければならない。
 再び「陰の季節」を読み始めるがライヴ前の喧噪は集中力を阻害する。
 SEとして会場内に流れている曲にしてもそうだ。
 いきなりJudas Preastの「Defender」の全曲、それに続きMotley Crueの「Shout at the Devil」ときた日には小説に集中出来る筈もない。
 そんな状態で時間はいつも以上にゆったりと流れていったのだが開演時間の7時を5分も過ぎた頃だろうか。今まで掛っていたMotley Crueの曲が鳴り止み、Queenの「You're My Best Friend」に変わりヴォリュームアップと共に観客の声も手拍子と同時に大きくなり始めた。
 「いよいよか」
 そう思いながら客電も消え薄暗くなったステージ上を凝視していると上手からバンドメンバーらしき黒影がいくつか確認出来る。あちこちから大きな拍手と共に「ポール」という黄色い歓声も挙がり始める。
 Queenの曲の終了を待って馴染み深いオルガンの印象的なフレーズが流れ始めれば「I Like Rock」
 曲の始まりと同時にステージ上が明るくなるとステージ中央にフライングVを持つ大男がようやく姿を表した。本ライヴの主役、ポール・ギルバートその人である。
 ポールと言えばライヴの時の衣装がいつも常人の常識を遙かに越えたものになるのが常であったが今回もやってくれた。シルバーのスパンコール系の衣装に肩には白いマントを背負い正にプレスリーを彷彿とさせる。それに加え髪は逆立て気味に目にはブルーのアイシャドウをいれるなど意表を突いていた。
 正しく「プレスリー+グラムロック」という感じなのだが、ブルーのアイシャドウを入れたポールというのは個人的には違和感アリアリで困惑してしまった。
 困惑と違和感の中、勢いよく始まった「I Like Rock」も観客を盛り上げるだけ盛り上げて終了。ライヴの出だしとしては大合格である。
 続いてキーボードのシーケンスフレーズが(途中、音が途切れ気味になり「おやっ」と思ったが)流れるとそれに合わせるようにポールのギターが火を噴く。
 速いフレーズの連続に溜息が出るばかりだ。
 曲は「I Like Rock」と同じ「Burnig Organ」にも収録された「My Religion」だったがCDで聞くよりもやはり勢い、速さ、曲のもつ情感..全てが120%増しである。
 「My Religion」が終わると怒濤のような大歓声!
 それに「ドウモ ドウモ アリガトウ ナゴヤ」と日本語で答えるポール。
 観客の心をぐっと鷲づかみと言った感じだ。
 引き続き、ギターでコードをかき鳴らすものの、チューニングが先程までの激しい演奏で狂ってしまったのか演奏を一旦止め、チューニングするポール。それも「ナゴヤ〜♪ ナゴヤ〜♪」という鼻歌交じりでだ。
 こんな処にもせっかくの盛り上がった雰囲気を壊したくないというポールらしい気遣いが感じられる。チューニングが終われば演奏再開。再び、先程と同じようにクリーントーンでコードをかき鳴らし始める。
 「She is Suicide 〜♪」
 とポールが唄い始めれば観客は即、それに答えて
 「Lover 〜♪」と返しコール & レスポンス。
 最終的にはそれが大合唱となってサイレンのSEに繋がっていく。
 私にとって「Suicide Lover 」は収録された「Burnig Organ」「PAUL THE YOUNG DUDE」の中でも特にお気に入りの曲なだけにこのような観客参加型の趣向は感動的すらあった。
 「Suicide Lover 」が終わればポールへの声援は引きも切らず。特に女性からの黄色い声も多い。
 これに気を良くしてという訳ではないだろうが短めのMCの後、いつもながらの早弾きフレーズをイントロとして本日最もサプライズな曲、「NAGOYA」(タイトル詳細不明)が披露された。(ネット情報では各地でこのような曲が披露されたそうだが、全て別の曲なのだろうか ? ナゴヤ〜♪という歌詞と歌メロが填りすぎていたのでナゴヤの為の特別の曲のように思えたのだが....)
 曲自体、クリーントーンでコードをかき鳴らすだけなのだが何度も歌詞に「ナゴヤ」と出てくるのは地元民としては嬉しい限りだ。
 「ドウモアリガトウ ゴザイマシタ」という歌詞で終わった「NAGOYA」の後はディレイを効果的に使ったイントロが印象深い「Amy Is Amazing」。イントロから既に「Hi!Hi!」という観客からの掛け声が大合唱となって会場内を包みこんでいく。サビの部分ともなれば

 going Crazy」「Amy Is Amazing

 と観客も大きな声でコーラスに参加し、より大きく盛り上がる。
 先日のインストア・イベントではないが名古屋のファンは何故か異常に統率力が取れているようだ。
 それも強制的ではなく自然発生的というのが驚きである。
 CD以上のギターソロを盛り込んだ「Amy Is Amazing」の後、用意しておいたミネラルウオーターを口に含んだポールが次に弾き始めたのは、どこかで聞いたことのあるギターリフ。
 「あっ これはシカゴの『長い夜』(25 OR 6 TO 4)のイントロではないか」
 シカゴの『長い夜』と言えば、雑誌のインタビューでポールが初めて弾いた曲として紹介されていたナンバーである。
 大半の観客にとっては ほとんど「?」であっただろうがポールの「初心忘れるべからず」といったこのような選曲に私はにやけてしまった。
 印象的なリフの後にはすぐ「The Second Loudest Guitar In The World」へと移っていったが、この曲のメインはなんと言っても後半の長目のギターソロである。
 CD以上にアグレッシブで 正に”鬼神”の如く弾きまくるポール。ロングディレイを使いながらギターから手を離し「ノーガード状態」になっても永延と音が鳴り続ける”マジック”も所々で披露するなど見せ場も非常に多かった。ともすれば飽きられがちなギターソロを効果的な演出で見せて、聞かせる手腕は流石としかいいようがない。
 やがて、そのギターソロがそのまま「I Feel The Earth Move」へと繋がれば観客もよりヒートアップ。
 個人的にもCarol Kingのカバーである「I Feel The Earth Move」は「PAUL THE YOUNG DUDE」の中でもかなり気に入っている曲。本ライヴでの登場を最も期待した1曲でもあったが、正に期待を裏切らない出来だった。それは今回、サイドギターとして参加したT. Jヘルムリッチの存在が大きいと言っていいだろう。
 この曲で彼はCDでポールの盟友ジェフ・マーティンが唄ったパートを熱唱、ギターソロでもポールと互角に渡り合っていた。やはりGIT(Guitar Institute Technorogy)の講師という肩書きは伊達じゃない。
 8曲目は「I'm Not Afraid Of The Police」。ポールが言う「アタラシイ CD 『PAUL THE YOUNG DUDE』」の一曲目に収録されたこの曲は今後のポールの音楽的動向を占う上で重要な、いわば試金石の楽曲。インストア・イベントのレポートでも書いたがポール自身、いつも以上に作り込んだ曲という事でこれをどのようにライヴで再現するのか非常に楽しみでもあった。
 曲も始まってみればオリジナルを忠実に再現していただけでなく、ライヴならではのフレージングも加味して流石の出来だ。ソロでは先程と同じようにディレイを使った特殊効果が華を添えた事も付け加えておきたい。
 「I'm Not Afraid Of The Police」が終わると、エレキからアコースティックギターへのチェンジが素早く行われる。
 ポールは昔からよく使っているアイバニーズのエレアコ、T.Jに用意されたのは先日のインストア・イベントでポール自身が使っていたピエゾピックアップを仕込んだアコースティックギターだ。(雑誌のインタビューによると日本長期滞在時に手に入れたものだとか)それらセッティングタイムを利用してポールが話し始める。

 「ナゴヤ オゲンキデスカ?」

 こう訊かれれば、観客はすぐにこう答える。
 「元気 〜 !」
 また ある観客が「ポールは?」と逆に聞き返えせば
 「イーツモ ゲンキ」
 とすぐ答えてくれるなど、いかに今回のライヴがアットホームな雰囲気に包まれていたかを物語るエピソードであろう。
 その後もMCは続き、アコースティックギターを用意しただけに誰もが次は「PAUL THE YOUNG DUDE」に特別ボーナスCDとして付加されたアコースティックアルバム「GILBERT HOTEL」収録の曲を演奏するとばかり思っていたが、蓋を開ければ驚きの選曲。
 ドラムスのスコット・クーガンが激しく乱打するボンゴのリズムに乗って始まったのはなんとRacer Xの「Scarified」だったのだ。
 「Scarified」と言えばRacer Xの初期を代表する曲で高度のテクニックが要求される非常に難易度の高いインストナンバーである。
 それを余りサスティンもないアコースティックギターで演奏するという凄さ、それと同時に誰も考えつかない意表を突く選曲のポールらしい茶目っ気さに私は笑いがこみ上げてくる程であった。
 驚きの「Scarified」の後は「GILBERT HOTEL」収録の曲が続いた。
 「Lay Off The Morphine」「Three Times Rana 」...CDよりも若干テンポが速いと感じるぐらいで全く危なげがない。−というよりインストア・ライヴで聴いた時よりもバンドメンバーのコーラスが入る分、音にも厚みが増している。
 そして所属レコード会社「ユニバーサル・ミュージック」に謝辞を捧げた曲、「Universal」も小曲ながらこれも実にポールらしい曲だ。同じレコード会社名をタイトルとした曲にSEX PISTOLSの「E.M.I」があるが内容のあまりの違いに驚きさえ感じる。(「E.M.I」はレコード契約を切られた怒りを表明する曲である)
 13曲目はアコギから再び、エレキギターに持ち替えて(公演後ゲットした本物のセットリストによれば6弦をDチューニングとある)
 「The lamb lies down on broadway」GENESISのカバーなのだが本家がキーボードで弾いているフレーズをポールはギターに置き換えて演奏している事が何よりも凄い。
 変則チューニングもそれに対処した現れであるが冒頭からタッピングとストリングスキッピング(弦飛び奏法)の連続は見ている方にもかなりのインパクトを与えた。しかも唄いながらである。
いったいポールの頭と腕と指の神経はどう繋がっているのだろうか ? 一度、MRIで詳細に調べたいぐらいだ。


 「The lamb lies down on broadway」が終わるとポールはステージの袖に引っ込み、今まで脇役に徹していたT.Jにスポット・ライトが当たる。ギターの音もポールのよく歪んだ太い音からT.Jの歪んではいるがどこかしらクリーンさを含んだ音色へと変化していく。
 T.Jヘルムリッチのギターソロコーナーの始まりであった。
 T.Jについては以前、一度だけ「Young Guitar」誌でインタビュー記事を読んだ事があるぐらいで印象がある方では無かったのだが(正直なところ、「Young Guitar」誌でのT. Jがポールのバンドに入るというのがもうひとつ合致しなかったのだ)私が最も影響を受けたバンドと行っても過言でないNIGHT RANGERのジェフ・ワトソン以来の「8フィンガー奏法」の使い手と聞いたら注目しないわけにはいかない。
 しかし、私の期待を嘲笑うかのようにのっけから機材トラブル発生。
 音が思うように出ないのだ。
 これにはさすがのT.Jも両手を挙げて”正にお手上げ”というポーズでおどけてみせるのだがそれがかえって観客から大きな声援をうける結果となった。
 そのトラブルも解決すれば もう縦横無尽にフレットを八本の指が華麗に動き回り流麗なフレーズが我々の脳髄まで浸食していくぐらい、迫ってくる。
 ここまでやるかっていうぐらい全編ほとんど8フィンガーで通したT. Jのソロコーナーもポールがステージに再登場して終わりを告げたがここからはポールとのジャムセッションへと雪崩れ込んでいった。









まだまだ続く





SET LIST
1I Like Rock
2My Religion
3Suicide Lover
4Nagoya
5Amy Is Amazing
625 OR 6 TO 4 (CHICAGO)
The Second Loudest Guitar In The World
7I Feel The Earth Move
8 I'm Not Afraid Of The Police
9Scarified (Racer X)
10Lay Off The Morphine
11Three Times Rana
12Universal
13The lamb lies down on broadway (GENESIS)             
14T.J. Helmerich solo
15Let The Computer Decide
16Girls Who Can Read Your Mind
17Friday Night (Say Yeah)
18Girls Watchin
19Superheroes (Racer X)
20Bliss
・・・Encore ・・・
21Green-Tinted Sixties Mind
22Masa Itou
23Heaven In '74 (Racer X)
・・・Encore 2・・・
24Down To Mexico
25Purple Haze (Jimi Hendlix)                    











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