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「千津子記」2日目

昨夜から降り始めた雨は 夜中激しくなりながらも朝方には なんとか小降りになった。
集合時間が7:30ということで いつもの日曜に比べるとかなり早く起床したのだが 色々準備にとまどり、気づけば10分前。急いで荷物を持ちフロントで会計を済ませ 外に出ると雨はほとんど止んでいた。
集合場所は2カ所あったのだが自分は迷わず、尾道駅の方を選択。尾道駅前の歩道橋を 急いで渡り駅を目指すと仲間たちの姿が見える。なんとか遅れずに済んだようだ。
朝のあいさつもそこそこに手荷物をOBs関西支部のIさん所有のバンに預け尾道駅を出発。
まずは もう1カ所の集合場所「ホテル アルファー1」へ合流の為に向かう。
尾道駅前集合組には お寺の住職をされている方もいらっしゃり今日は このまま 薩谷さんが眠る「さびしんぼう」でお馴染みの西願寺に向かう為正装されていた。
心配された天気も今はかろうじて保っている感じだが いつ本格的に降り出すか .....と思っていたら 降り出した(苦笑)
「ホテル アルファー1」で合流した40人あまりの集団は一路西願寺を目指し 西に向かう。一時、道に迷うものの20分ぐらいで無事到着。
すると あの雨のシーンで有名な寺の階段に”なんと さびしんぼう人形が 座っているではありませんか!”
千津子写真 「何かがあなたを待っているかも」
とパンフに思わせぶりに書かれていたのはこれだったのか!!
一同、この思わぬ仕掛けに驚嘆の声があがる。
以前、文学記念室で展示されていたさびしんぼう人形ですが 今は目に触れることもないだけに貴重である。それに西願寺のこの階段でお目にかかれるなんて映画の1シーンを見ているかのようです。 我々一行は その階段を上り早速、境内に入って寺の本堂へ。
私、個人では何度もこの西願寺を訪れているものの 本堂へは今回初めてお邪魔する ということで色々興味津々であった。「さびしんぼう」で何度となく映し出された 荘厳なご本尊も当時と変わりなく ここもまるで時間が止まったかのよう。
そして本堂に上がった我々は 関西支部のAさんによる西願寺についての簡単な 説明の後、引き続き岡田慈照住職からお話を受けた。
住職は舞台となった「さびしんぼう」の撮影の頃について色々お話されたが、 なにより一番印象的だったのは この地に眠る薩谷和夫さんの事だった。


〜何よりも 誰よりも ここ尾道を愛された薩谷さん。特にこの西願寺より見える尾道の風景を気に入っていた薩谷さんは 東京の薩谷家の墓をこちらに移送しようとまでなさった。そんな矢先、不意に逝ってしまわれた薩谷さんのお葬式も 今日のような雨でした....。薩谷さんと雨は縁があるみたいです。まるで この雨はみなさんを迎える為に薩谷さんが降らせているかのようです〜


と「さびしんぼう」撮影後も交流を密にし続けた住職から直接、思い出話を聞くと 今まで監督の著作などで聞く薩谷さんの人柄をよりいっそう深く感じる事が出来たのだった。



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住職のお話の後は、薩谷さんの墓参りに40人の集団が移動を開始。
雨はまた少しだけ強くなったような気がする。墓と墓のせまい道を傘と傘を重ねながら進み、住職をされているOBsの方の読経が流れる中、薩谷さんの墓前で手を合わせる。お墓には監督が寄贈された「尾道と映画とさっちゃんはよく似合う」というプレートが見え、ふと目線を尾道の海に向けると 雨で煙っているもののここから見た尾道のすばらしさがよく伝わってくる。薩谷さんがここに拘った意味がよくわかるような気がした。
尾道の空

墓参りを済ました我々一行は来た道を戻り 再び寺の本堂へ。
今度は日頃公開もされていない「ふき(演:故浦辺粂子)のはなれ」や本堂を使って おのおの自由な撮影タイムとなった。そのはなれには先程まで寺前の階段にあった さびしんぼう人形も椅子に腰掛け 参加者がみな色々な角度で写真やビデオに収めている。
一方、本堂ではさびしんぼうで使われた表札、オルゴール、薩谷さんから送られた年賀状などに混じって撮影時のオフショットを集めたアルバムなどが公開されていた。 アルバムなどは今までも住職に希望すれば見せて頂けたようだが 自分にとっては全くの初見。出演者、スタッフの姿が非常に若く、自分の中で先日購入したばかりの「さびしんぼう」DVDの映像が蘇ってくる。
寺での撮影タイムも終わり ここからが本日のメインイベント「オリエンテーション」
しかし、オリエンテーションと言っても そんなありきたりのものの訳がありません。

詳細はこうです。

「チームに分れてくじを引き、指定されたロケ地で名シーンをチームみんなで再現してポラロイド写真を撮りに行きます。」
という尾道の町をロケ地巡りしながらオリエンテーションを進めていくという大林映画ファン、OBsならではのもの。また渡された写真どおりに(自転車、看板etcの)小道具を含め再現しなければいけないというのもなかなかだ。どこまで忠実に再現できるかが本勝負の鍵となりそうである。
そんなオリエンテーションで 私が所属するチームは「時をかける少女がふたり」。 なんとも語呂と響きがいいチーム名だ。それに「マヌケ先生」「あの、夏の日」スタッフであるIさん、地理に詳しいHさんという強力なメンバーがチーム内にはいらっしゃるのでとても心強い。
またビデオ撮影班としてZさんもご同行される模様。賑やかなロケ地巡りとなりそうです。あとは この雨が止んでくれるばかりなのだが.....
スタッフの号令で一斉に西願寺をスタートした各チームはまずは一番西願寺に近い ロケ地を目指す。
我々「時をかける少女がふたり」チームは「さびしんぼう」の劇中、橘百合子とヒロキが偶然出会った西願寺下の場所まで移動。
スタッフから配布されたシーン指定の写真には自転車が写っていることもあり 自転車の車輪を手持ちの傘で代用してこのシーンはクリア。でも 実際、映画のシーンを再現するのってアングルとか色々あって非常に難しいことを実感した。それにポラロイドというのも扱うのが案外難しい。
その次は 時間とロケ地への移動距離を考慮に入れて浄土寺近くで「ふたり」の北尾実加、長谷部真子が神永青年と落ち合うシーンの再現の為 浄土寺方面を目指すことにした。
だが またしてもこのシーンで自転車が必要となった為、思い切って駅前の有名な「マルコシ書店」で自転車を借りることにして、いったん駅前に出ることに。
駅前で自転車を借りた我々は時間短縮を図る為、Iさんが自転車、残る我々はバスに乗って浄土寺に向かうことにした。タイミング良く乗ることのできたバスで浄土寺には10分弱で到着。
わずかに遅れてIさんも到着され早速、映画シーンの再現に乗り出す。
映画撮影時には存在した電柱が無くロケ現場を間違えるなどあったものの正確な場所を突止めなんとかポラロイドに収めて終了。ちなみにこのシーンでの神永青年は自分が演じました(苦笑)
その後はせっかく浄土寺に来たのだからということで境内に入り、一通りお参りし全員で記念写真をパチリ。あいにくの天気なのが残念。
記念写真の後、今度は西方面を目指す途中、西郷四郎像前で予定外の「マヌケ先生」のシーンを再現し、やっと艮神社に到着。ここでは「時をかける少女」やまた予定外の「マヌケ先生」の再現シーンを雨ニモマケズ撮影。ポラロイドのフィルムを順調に消費した。
そんな誰もが映画監督、撮影監督となったように尾道を巡った「オリエンテーション」も昼食の時間を迎えたことで一旦終了。オリエンテーションのゴールである商店街中程に位置する「絵のまち館」に移動した。
ゴールである「絵のまち館」の3階の会場に入っていくと既にそこには椅子が引き詰められ、それを取り囲むように「ふたり」での撮影現場を写した写真のパネルや 大道具の太田さん所蔵の「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」「ふたり」「あした」「あの、夏の日」「天国にいちばん近い島」「野ゆき山ゆき海べゆき」...の超貴重な台本が展示されていた。まだ他チームが戻ってきていないようだったのでさっそくこれら展示物をじっくりと鑑賞。カメラにも収めた。(パネル写真を写真に収める...とは端で見ていると奇妙な光景かも..苦笑)
そんなことをしている間に他のチームの方々も戻ってきたのでここでようやくお楽しみの昼食タイム。
用意された大林組御用達ロケ弁はおかずの種類も多く美味しく、さすが大林組で毎回利用していることはあります。



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美味しい食事も終了し、いよいよオリエンテーションの成果発表。
実行委員の方が用意した簡易プロジェクターでホワイトボードにそれぞれ撮影したポラロイドを映しだしグループのリーダーがそれに解説を加える..という形式で発表会は進んでいったが さすがOBs !みんな指定されたシーンを忠実に再現しています。それにみんな 雨で指定箇所を回りきれなかったこともあって予定外のシーンを撮影していました。それが時折爆笑を誘ったりして盛り上がる盛り上がる。
全3チームの成果発表も無事に終了し、ここで実行委員で審査、しかし結論が出ずに(審査員を除く)参加者全員で無記名投票と相成りました。
しかしっ! それでも1位が二つあったということでこの時点で順位付することは止め、この賞金は全員のじゃんけんによる争奪戦へ。それぞれ勝者の手に渡っていきました。
それから 昨夜、時間に余裕がなく実施されなかった「OBs ビンゴ大会」が行われた。 一見、普通なビンゴ大会ではあったが そこはそれ昨夜のクイズが「カルトQ」並にマニアックであったようにビンゴの項目もただの数字ではありません。数字で選択する代わりにビンゴの升目には大林映画作品を書き込むといういわば変則ビンゴ大会でありました。
24個の空欄の升目に悩みながら大林作品を書き込みながらもなぜか幸せな気持ちになったのは多分、この場にいた参加者全員共通の思いであったことでしょう。
そして 答え合わせ(?)。司会のAさんが読み上げていく作品名で「惜しい」とか「〜(作品名)だったらビンゴなのに」と一喜一憂する参加者達。自分もいい具合に升につけた印が並んでいくが あと一歩及ばす列にならない。
もうその頃になるとビンゴする人達もボツボツと現れ、それぞれ高額、貴重な賞品からビンゴ勝者の手に渡っていく。そんな何人かのビンゴの勝者誕生の後、私にもやっとチャンスが回ってきた。
遂に「ビンゴ!」狙っていた有名な如水館高校校歌「水のように」非売品シングルCD(作詞/歌:大林宣彦、作曲:久石譲)をゲットすることができた。
(尾道なのにあえて尾道作品(特に新旧3部作)を選ばすに渋い「少年ケニア」とか「四月の魚」などを升目に書き込んでいたのが勝因のようです。)


大林映画作品をビンゴにするということで思いの外盛り上がった「OBs ビンゴ大会」も予定時間を過ぎ終了、自分にとって収穫の大きなものとなった。
その後、ビンゴ大会の前にいらっしゃった大谷さんの方から「呼子丸1/8再建計画」と今後の尾道についてみなさんに意見を聞きたいということで 本来の真面目なOBsに戻り、大谷さんの熱心なお話に耳を傾けた。内容は呼子丸1/8再建における資金の事、そして尾道で今後加速される人口の空洞化をどのようにくい止めるかという役所や商工会議所で討議するようなシビアなもの。まるでこの時ばかりは学生時代の学級会、討論会を思い出してしまいました。
人口の空洞化に対して空き家になった家を尾道に来る旅行者にある一定の期間に渡って貸し出し住む人のいない家の保存、補修に努めるという案は既に実用に動き出している様子で名案であると思いました。
以前、OBsの間でも尾道に家を何人かで購入し、好きな時に一定期間住めるような「尾道別荘構想」なるものが盛り上がっていたのですが 大谷さんが説明された事案は正にそんなOBs長年の夢を実現して頂けるものです。
ぜひ 実現して頂きものです。


オリエンテーション、ビンゴ大会で大いに盛り上がり、大谷さんがお話されたご提案を真面目に考えた「千津子記」2日目も終了時間となり 2日間に渡ったこのイベントも遂にオーラス。
みな名残惜しそうに それぞれ帰宅の途についていった。
自分と言えばその後、実行委員の方と後かたづけの手伝いをしながら最後まで会場に残り同じ東海支部の方々と行動を共にしたのだった。
帰りの新幹線のチケットもなんとか無事に取れたものの 2時間ほど間が空いてしまったのでZさん、Yさんと共にお土産店などを中心に尾道商店街を徘徊。また今回初めて「こもん」に立ち寄ってなんとかワッフルを食することが出来た(テイクアウトだけどね)
「こもん」テイクアウト店内にいる時からまた降り始めた雨を呪いながらも(傘をちょうど持っていなかったので)なんとかアーケイドの商店街に逃げ込み、昨夜、クイズ大会にて同じグループでご一緒したNさん、Tさんと合流し今回2回目の「いわべえ」へ。ちょっと早めの夕食となりました。で、今日は趣向を変え自分だけやきそばを注文してみましたが これまた美味しい(^^)
「いわべえ」での夕食後、外に出ると既に日も暮れ辺りは真っ暗。その中を、我々は海岸通りの道を辿って駅方向へ向かう。途中、長距離バスで帰宅されるというNさんとも別れ 再びお土産屋さんを物色する我々。お店の方に某有名店以外のお勧めのラーメン屋を教えて頂きちょっと得した気分。忘れないようにメモしなくては。
そんな尾道ならではの道草をしながら やがて尾道駅に到着。ここで Zさん、Tさんともお別れをしYさんと私は来た道を逆に辿るかのように福山まで山陽本線で戻り、乗り遅れることなく無事に新幹線で帰宅の途についたのだった。

そして名古屋に近づくにつれて列車の窓を激しく叩く雨の滴。
どうも 我々は尾道から雨雲を連れてきてしまったようでした(苦笑)





嵐のような尾道での「千津子記」の一週間後、偶然にも大林監督が地元の同朋大学学園祭の記念講演にいらっしゃったので 私は当然のごとく出席しました。
講演では 映画のことはもちろん尾道の事、新作「なごり雪」とロケ地である臼杵市 の事、あと昨今世間を騒がす少年犯罪の事など熱く語ってらっしゃいました。
私はご一緒したYさん、Hさんと共に講演の合間に監督にご挨拶に向かい 少しお話しする機会を得ました。
「千津子記」に参加したことを報告しましたが その中でも西願寺のご住職がされた事と同じように薩谷さんのお話を監督がされた事は なんとも興味深い出来事でありました。













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