Blasty Artist Shop 価格 2500円(税込) カタログNo. FPMC-0001 |
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二井原実のアルバム「Ashes To Glory」(2006年)が、田川ヒロアキ
にとって、大きな転機となったのは言うまでもない事だが、田川ヒロ
アキの真の力を示す場は未だ与えられてはいないというのはファンに
とってはここ数年の、共通認識であったと思う。 もちろん、二井原氏のステージや、二井原氏の盟友−ファンキー末 吉氏のライヴでのサポートや客演、「Live Bar X.Y.Z.→A」(八王子) における週一回のソロライヴなどでも、その卓越した演奏力を十分、 披露してきたが、いかんせんそれは限定的であったことは否めない。 特にYouTubeにおけるパフォーマンス映像や、田川さんのウェブサイト で彼を知った者にとっては、オリジナル曲を整った環境で(つまり CDパッケージという形)聞く機会が渇望されていたのではないだろう か。そういう意味でも、この1stソロアルバム「FLY AWAY」は大き な期待を担ってリリースされた作品である。 1993年〜2007年に録り貯められたという楽曲で構成されたこの アルバム(全13曲)は、90年代が4曲、00年代が9曲と録音時期はそれ ぞれなれど不思議と統一感を醸し出している。 それを特徴づけた1曲目の「Seascape」は、既に二井原氏のライヴ 等でもお馴染みの曲だが、田川さんのソロコーナーのイントロに使われる など田川ヒロアキと言ったらとコレとシンボルソングともなっており、アルバ ムの幕開けとなるには相応しい。 「Passion On The Strings」は田川さんが少年期からこれまでに影響を 受けた音楽 − バックボーンを知る非常に興味深い楽曲である。 例えばそれは「Helloween」や「Gamma Ray」などジャーマン・メ タルの作風を彷彿とさせるものであり、メロディックスピードメタル のエッセンスを巧みに取り込み今回、唯一の英語歌詞のボーカルも違 和感はない。 「My Eternal Dream」も、昔からのファンには馴染み深い曲でも あるが、『車やバイクをドライビングしている』という田川さんのイメー ジを具現化したかのように疾走感に溢れた楽曲。メインメロディに 時折、ザクザクと切り込んでくるギターのオブリガードが気持ち良く、 中盤の煌びやかなキーボードソロがこの曲に彩りを与えているのはピ アノ経験者である田川さんらしいアレンジと言えよう。 「Journey In My Heart」は、今更、言うまでもないくらい有名曲 である。この楽曲は田川さんがこれまで、事ある毎に披露してきた曲であ る為か、古さを全く感じさせない(もう15年も前の曲なのに!)。 その新鮮さを失わない秘密は、時代を超越する普遍性がこの曲にはあ るのではないかと私は考えているのだが、いかがだろうか。この曲も ライヴの定番曲にして、人気曲である。 かって、数多のギターヒーロー達を輩出した事でも有名なアメリカの レーベル −『Shrapnel Records』の作風を継承している楽曲とも言え るのがアルバムのタイトルナンバー「Fly Away」。 判りやすいメロディラインにたっぷりのギターソロ。あの頃を知るリスナーにとっては 懐かしささえ、感じるに違いない。 『YOUNG GUITAR』2008年2月号の付録DVDにも収録された「Mira culous Star」も、YouTube上で公開されている事もありインターネッ ト経由で田川さんの存在を知ったファンにとっては馴染みの曲だろう。 軽快なメロディと、テクニカルな早弾きが交差する様は”光り輝く奇蹟 の星”をタイトル通り、イメージ出来る筈だ。 「Long Shout」は一転してハードなブルーズロックスタイルを押し進 めた楽曲。Gary Mooreばりのロングトーンと深いヴィブラート、中間 部にワンポイントとして鍵盤を挟み込み曲としての表情を豊かにさせて いる。 唯一のアコースティック曲となった「lead-time」は、愛器であるOva tionの特性を生かしたパーカッシブな音作りが心地よい。田川さんらしい テクニカルな一面も、もちろん、この曲には刻まれている。 ユニークなイントロが耳を惹く「prankish」。しかし、単なる面白い 曲という印象だけで終わらせないのが田川さんの才能の妙を感じさせる。 キーボードとギターの掛け合いは、ライブでこそ映える曲だろう。 「Stranger Destroys Arms」は、完全無欠のスラッシュ・メタル。 ギターリフの構成や、音色、曲の展開はMegadethや、あるいはPante ra等の影響を色濃く感じさせる。このアルバムの中では異色の1曲とも 言えるだろう。 そして、田川さんの新たな才能を提示したのがほぼ、全編ピアノの弾き語り という形でまとめられた「平和の風」という曲である。 田川さんの友人が書いた詞にインスパイアを受け作られたこの 曲は全編、柔らかい言葉で綴られながらも、 平易な言葉であるからこそ、その言葉一つ一つが胸を突く。エレキギタ ー、エレキベース、ドラムが一体となったエンディングの力強さは平和 への願いと正比例しているのではないだろうか。 続くピアノソロ「White Wind」は、まるで「平和の風」のピアノイン ストゥルメンタルと言っていいぐらいである。続けて聞けば、まるで メドレーのような連続性を感じさせ「平和の風」の余韻を噛みしめる事も出来る。 アルバムラストを飾る「Space Walker」は、あらためて、このアルバ ムが”ギタリスト”田川ヒロアキのアルバムである事を思い起こさせてく れる。某クラシック曲をモチーフとしているが、曲がどんどんと展開し ていく為、一つの枠では収まりきらない8分にも及ぶ大曲である。 中近東風メロディからスラッシュ・メタル、ジャズ・フュージョン、ブ ルーズロック、プログレシッブ・ロック等、目まぐるしく変わる曲展開 は、様々なタイプな楽曲を取り揃え、バラエティに富む「FLY AWAY」 というアルバム全体のカラーを表しているとも言えた。 15年余りの時を経て、遂に発表された「FLY AWAY」は、現時点での 田川ヒロアキのベストアルバムである。しかし、田川ヒロアキの真の意味 での活躍はまだ始まったばかりであり、その歩みの力強さに一分の澱みはない。 現在、田川さんは、バンドスタイルで次のアルバムを準備中と聞いている。 たった一人で制作した「FLY AWAY」から幾人かのプレイヤーと共に 作り上げる次作は、必ずや新たな変化− ケミストリーを呼び起こす事だ ろう。 期待は高まるばかりである。
田川ヒロアキ・オフィシャルページ 「FLY AWAY」CDコーナー |