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商品名
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「エリック・クラプトン自伝」 |
出版社
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イースト・プレス |
定価
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定価 2800円 + 税 |
購入場所等
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eBOOK OFFにて1680円で購入
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コメント
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男なら「誰でも憧れる生活」を送りながら、人間なら
「誰しもが ああ為りたくはないものだ」と思える人生を生きている
男。端的に言えば、そうではないだろうか。
エリック・クラプトンという"ブルーズ"と"ロック"に彩られた優れた
ギタリストのこれまでがあからさまに語れているのがこの「エリック
・クラプトン自伝」である。
頁数490ページと本は分厚いが、複雑な家庭環境で育った幼少期から
2007年の現在まで、実に細かく書き連ねているのがまずは驚かされ
る。
どうやら、それは何十年も日記を書き続けてきた成果らしいのだが、
ドラッグとアルコールに溺れた日々の中でも記録していたのは意外
でもある。しかも、ヤードバーズでデビューして40年余。
その半分以上をドラッグとアルコールの”魔の魅力”に蝕まれていたの
に−である。
ゆえに、その耽溺ぶりと、何度も何度も依存症から抜けだそうとする
苦闘の様子も語られているが、基本的にはクラプトンのダメ人間ぶり
が自虐的に表されていて、ロックスターとしての一面しか知らないフ
ァンにとっては非常に興味深い。
また、クラプトンの半生には切ってもきれない「女性遍歴」の数々。
有名なのものはパティ・ボイドとの恋だが、幼少期の思い出が
トラウマとなって、どちらかというと女性恐怖症であったという
ことも語られている。その反動が後のプレイボーイ=女たらしっぷり
に繋がる訳だが、この自伝に登場する女性だけでも数人に及んでいる。
若い頃、あれだけのイケメンで、誰もが憧れるロックスターだった
から当然ではあるが、そのだらしなさは極めつけだ。しかも、その
誰一人として(現在の年の離れた妻を除いて)関係が巧くいっていな
い。それは、自身がドラッグ渦、アルコール渦にあった為でもあるが
その恋人を巻き込んでまでハイになっている様子には いやはやなん
とも...(苦笑)
「Layla」に代表されるようなラブソングを何曲も書かせる原動力と
なったパティ・ボイドはクラプトンにとっては、『唯一の女性(ひと)
』であったことは間違いない。ジョージとの縁を切れずに長々、悶々
とし、やっとのことで一緒になれた彼女も、結局は上手くはいかなか
った。これはクラプトンとパティの悲恋として、ロックの歴史では
多く語られてきた事だが、実情はそんなロマンティックなものではなかっ
たようだ。
この自伝では はっきりと記述はなかったが、彼女への暴力もあった
と聞いている(ほぼ、同時期発刊となったパティの自伝にはその辺り
のことも書かれているという)。それを表すようにクラプトンは
彼女を”奴隷兼パートナー”とまで言い放っているのだ。あれほど
憧れていた彼女なのにである。要するに我々が今まで「Wonderfull
Night」や「Old Love」で感じてきた世界観から現実は大きく懸け離
れていたのである。
また、クラプトンを語る上で欠かせないのが、今はもう居ない、伝
説的なミュージシャンである。ジミ・ヘンドリックス、デュアン・オ
ールマン、スティービー・レイヴォーン、ジョージ・ハリスン....
クラプトンの音楽を彩った天才達とのエピソードはこの自伝の大きな
魅力でもある。特にロンドンで常に行動を共にしたジミ・ヘンや
ジョージについての記述は大いに興味をそそられた。
ジョージについてはクラプトンとまるで兄弟のような存在だと思わ
れ、それが今では常識となっているが、晩年にはその関係もやや微妙
であったようである。(1999年を最後に逢っていなかったと書いて
いる。)
そして、高層マンションからの墜落という悲劇的な死をむかえた息
子コナーについても書かれている。息子とは離れて暮らしていた為か、
縁は薄かったようだが、それでも(子供とどう接していいか判らなか
った)不器用な父親としてのクラプトンは我が子を精一杯に愛して
いたのは文面から伝わってくる。それだけに”最初で最後”となった
二人きりのサーカス見物の描写には哀切を禁じ得なかった。
ドラッグはもちろん、アルコールとも完全に手が切れ、ここ10年
でようやく、安息の日々を手に入れたクラプトン。若い妻と3人の娘
に囲まれ優雅に暮らす彼は今や完全無欠のセレブだが、クリエイター、
藤原ヒロシの影響もあってストリートカルチャーなど新しいものを取
り入れようとするなどその姿勢は今も貪欲だ。
エリック・クラプトンの『赤裸々な過去』と『今』を知る上でも重要
な書であるこの自伝は、いわば”ギターの神様”クラプトンの「人間宣言」とも言えるかもしれない。
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