18グラム・栃木大会 2003年6月19日
Written by バトル3年2組-E.K

 この前ぼくは、T濱君たちと仲間7人で18グラムの試合に行きました。
 でも、いっしょに行ったのはバトルキャスタ−ズの世話役係であるT地さんが、備品の搬送のつごうで先にげんちに行きましたので、せいかくに言うとぼくたちは6人で行ったことになります。

 T地さんは、ぼくががくせいの時に東京、というまちで知り合ってからもう24年らいのつきあいになります。そのころから、めんどうみの良いせいかくで、いまでも人の嫌がることをすすんでやって「キャスティング界の裏方にあまんじるのが、わたくしの人生のよろこびですから・・・。ふふ〜ん」なんて言っていますが、どうしてどうして長い選手生活でかずかずの実績をつくりあげた、このせかいでは重ちん、とよばれている人です。

 ほかのメンバ−もたのしい人たちばかりです。

 ム−ド・メ−カ−のH井君はえっちな話が大すきです。仲間のなかにはそういう話がにがてで、すごくまじめな人もいるのですが、そんなことはいっこうにおかまいなしで、グイグイとじぶんのヨタ話の世界にひきずりこむのが、大変じょうずなエロ天才です。
 でもさいきんは、グルメたんとう大臣、というまじめな役ににんめいされて、いち時のいきおいが翳ったようでぼくとしてはつまりません。

 U山君は、きょ年トップキャスタ−ズの1種でいきなり優しょうした大変なじつ力のもちぬしで、今年はなぜだか連覇をねらわず5種にこだわって錬しゅうしています。守び範囲もひろく今回はぼくどうようにインランド初ちょうせんです。
 1種で日本一になるぐらいですから基本的に投げのセンスはばつぐんで、種目にこだわらず何でもきようにこなしてしまう、文字どうりウラヤマシイ人です。
 あっ、そうそう彼はとてもク−ルでカッコがよいのですが、まえに「なんで結婚しないの?」と、しつこく聞いたら「余計なお世話です!」と、そのときは逆に怖い顔でたしなめられてしまいました。何事も<過ぎたるは何とやら・・・>で、いくら親しくても余りひとの琴線に触れるようなことを聞くのはよくないことだなあ、と反省したものでした。
 彼はあまりしゃべり、ではありません。けれど、とてもやさしい人で、今回のぼくの道具立てはぜんぶ彼から借りたものです。

 W辺君とHS君はオ−ストラリアのコアラのような、おっとり、まったり、の人でぼくは彼らと仲良しになってずいぶんになりますが、いまだに人や物におこったのを見たことがありません。
 いつも静かにニコニコ笑っていて、周りにいつも気をつっかている宮沢賢治、のようなところがあります。ぼくも彼らのようにものしずかな男になれたらいいなあ、と思う反面、それと対照的な自分の性格がいったい彼らにはどのように映っているのだろう、と思うとうまく頭の中で像が結ばないかんじがして、ちょっとこわいです。

 さて残るはT濱くんです。
 彼はバトルキャスタ−ズのまとめ役、的な中心人物で、何事においても衆議一決、というかんじでものごとをドグマチックにすすめます。
 考え方に、いっさいの無駄がなくいつも最善で最短の選たくをします。職場で<カミソリT濱>と、異名をとるぐらいのキレモノですからクラブの運営手腕もかなり強いんですが、やることがいちいち正確で間違いがないものですから、だれも彼に異をとなえるものがおりません。
 ぼくなどは、彼とおなじ歳なのでかなり激しい物言いをするのですがクレバーな彼は一向にそれには取り合おうとはしません。これはぼくの想像ですが、きっと彼はバカでソコツなぼくを全く問題にしていないのだ、と思います。 全くこのへんのところが、キャリアのインテリ風なところでおもしろくありません。

 ですからぼくは、今回18グラムの大会にしゅつ場して上位入賞を果たすことで、彼の鼻を明かしてやろう、ともくろんだのです。
 軽いオモリのエキスパ−トで名にしおうT濱君をカンプなきまでに打ちのめす・・・という図式がせいりつすれば彼も少しは、ぼくに敬意をはらってくれるだろ、と考えたわけです。
 大会にむかうクルマのなかで、すでにぼくはしつこいぐらいに彼をけんせいし、そしてネチネチと絡んでやりました。

「うははははは。今日は君の年貢の納め時だよ」と、わらいました。
悪魔のようにぼくは猛々しくわらいました。そして
「しっかり首をあらってきたのかね。うはははは」などと、およそ品位にかける、そして大人気ない雑言で先制攻撃に終始しました。まだ試合もはじまってもいないのに、です。
 彼はロボット三等兵のように眉根を「ハ」の字にしてちょっと困ったような顔にしただけで、すぐ「うふふ」と、片頬でわらいました。
 ぼくは「そうだ、わらっていろ。今のうちはわらっていろ。どうせいつまでも君の天下はつずかないのだよ、T濱君。今のうちはそうやって自信たっぷりにわらっているのだよ。くくくっ」と、ぼくは呪文のように口中でつぶやきました。
 今回のぼくは自信があったのです。それというのも先週の練習では100m台がコンスタントに出たし、よほどのたたらを踏まない限り、かれを打ち負かすことはたやすい事だとかんがえていたからなのです。

 がしかし、ぼくの緻密な計算のもとの、この計画はみごとに覆されました。
 負けたのです。
 それも、てんでお話にならない内容で、彼に、いや自分に負けたのです。
 一投目は、たった18グラムのオモリをあろうことか右ぬけファ−ル。
 二投目は、ガイドがらみで目の前にオモリが落ちて寸足らず。
 三投目は、勢いあまってホ先を地面につける大失態。
 ・・・という全記録。

 まともな、あるいはそれに準ずるような投げは一投たりと出来なかったのです。
 なんということだ。この世に神も仏もないものか?こんなケアレスミスをやるなんて、ぼくはなんてバカなんだ!と思いました。

 ぼくは失意と同時にこれから帰りの車中でおこるであろうT濱君の高笑いと血も涙もない、徹底した反撃を想像して恐怖し、そして蒼白になってわが身を硬直させました。そして先ほどまで散々に大言壮語したけいそつな自分をはげしく呪い、悔やんだのです。

 彼は優しょうはのがしたものの五位にくいこむ健闘をみせ、サーフ系参加者の中でただひとり気炎を上げたことになるわけで、なんの、かんのと言っても結局は結果をだしたことに違いがありませんでした。

 ぼくは、ああまた始まる。またT濱君の天下が始まるのだな、と思いました。少なくてもしばらくの間は、ぼくは彼に頭が上がらない日々がまた当分、つずくのだと思いました。

 なんてことだろう。オ−マイガ−!です。
 T濱君にちょう戦なんて公言するんじゃなかったです。
 まったく、しまらない話です。

 でも・・・、まあ長いキャスティング人生。こんな時もあるものだと自分にいいきかせました。そう。自分へのレクイエム、です。

E藤さんにもらった竿と帰りに食べた佐野ら-めんだけが、ぼくの心をなぐさめてくれた、そんな一日でした。