秘 訣15

モデルチェンジを怠るな

 これは,「新製品のタックルを追いかけろ」という意味ではありません。
 競技を始めた当初は,基本的に上昇傾向にあるのですが,トップに近づけば近づくほど,その傾きは小さくなってしまいます。レベルが上限近くにあるということは,追う者から追われる者になるということもできます。
 上昇傾向の段階では,トップキャスターの声に耳を傾け,課題・問題部分を解決して飛距離を伸ばしていきますが,トップの領域に入ってくると,助言者が少なくなるとともに,仮に助言を受けたとしても過去の自信や実績が,その言葉の意味を素直に受け止めづらくなる体質にさせてしまいます。

 常に高いレベルを保つことができれば,問題はありません。しかし,必ず飛距離にはブレが生じてきます。キャスティングは体を使うスポーツである以上,かならず調子の浮沈があり,いいときもあれば,悪いときもあるということを肝に銘じておかなくてはなりません(かくゆう自分も)。

 短いスパンでは,1回1回の投てきごと,長くは年ごとにブレは生じます。短いものは,調整のレベルで済ますことができますが,長いものはそれでは済まずフォームの改良を行う必要がでてきます。
 ですから,クルマ同様に,キャスティングフォームも常に自分の状態をチェックしながら,マイナーチェンジ,モデルチェンジを行って,そのときの自分にあったフォーム・モーションに気を配る必要があるのです。

 特に注意しなければならないのは,競技会等での結果が比較的良い状況が続いているようなときです。例えば,飛距離が落ちてきているにもかかわらず好成績を収めていると,悪くなっていることを見落としがちになります。そして,競技会で大負けをしたりすると,調子が下降しているなかでの再浮上は多大な困難さが伴います。
 悪い状態が続いているときには,何が問題になっているのかについて真剣に考えるものですが,良いときは何も問題がないと考えがちです。良い状態の時にこそ落とし穴があるのです。

 常に競技会等で上位にいるような人たちは,何も変わらないのではありません。調整や改良を繰り返して,そのレベルを維持しているのです。

 調子の良い1年であっても,競技会を重ねるごとに微妙な変化がつき,1年の出だしに比べてシーズン末には大きく投げ方が変わっていることもあるはずです。このようなことから,シーズン代わりや区切りとなる大会の後には,フォーム・モーションに注意を払い,必要に応じてリフレッシュすることをお勧めします。
 オモリの入れ込み,展開軌道,ロッド面の作り方,振り方,押し出し等々,何年もキャスティング競技を行っている者でこそ,これらの点に注意しなければならないのです。

 飛距離が落ちることは容易く,飛距離を保つこと,伸ばすことは成りがたいものなのです。