秘 訣14

405と425のどちらが有利か

 これはなかなかの難問です。
 常識的に考えると,振り切れるならば長いロッドの方が有利という答えになりそうですが,果たしてそうでしょうか。

 キャスティングロッドの長さも,タックル等の進歩にあわせ長くなってきていることは事実です。例えば405のロッドも長い年月を経て360−380−390−400−405となってきました。もちろん,ロッドを使う体格の向上もありますが,素材がグラスファイバーからカーボンに変わり反発力を備えながら軽量化されたことが,ロッドを長くした要因でしょう。

 そして,現在の主流の長さは405と425になっています。

 多くのキャスターは405から入ります。ある程度距離を出せるようになると,もう少し長い方が飛距離を稼げると考えます。そして,425を使うようになるのですけれど,ここで向かう方向は2つに分かれます。@:長めの425がうまく機能し飛距離が伸びるということ。A:405との飛距離差が感じられない,場合によっては飛距離が伸びなかったり,正確度が落ちてしまうということです。
 @は極めてまれです。ほとんどのキャスターはAとなっているのではないでしょうか。
 多額の投資をした上でロッドを長くしたにもかかわらず,期待するメリットを全く得られないのです。我慢して使い続けるか,再び405へ戻るかです。
 長い時間をかけて@となれば良いのですが,なかなか結果となって得られることは少ないでしょう。基本的に飛距離差が出ないならば短いモノの方が扱いやすいはずですし,正確性(=安定性)も増します。そして,再び405へ戻るということになります。

 上記のことは,キャスティング競技,実釣を問わず,飛距離を稼ぎたい投げ釣りフリークにとっては,自分に合ったロッドを見つけるうえでの一通過点となる定番的な行動となっており,資力のある人にとっては,405−425を繰り返し往復する人さえもいるはずです。(しかし,基本にあるのは,ほとんどの場合405。最初から425の選択はなく405を軸に行ったり来たりの状況。)
 現在主流の長さについては,理論的裏付けというよりも,期待値を込めて最大値を425にされているということです。

 しかしながら,その425が本当にMAXの長さに当たるのか,という疑問は依然として残ります。
 そして,一般にいわれる「振り切れるならば・・・・」という解釈が長さに対する迷いを増幅させています。

 誤解を恐れないで言い切るとするならば「振り切れればいかに長くとも良いわけではない。上限はある。その上限は405で充分である。」ということです。

 ロッド反発力の効率面では,軽量化されてきたとはいえ,ロッド自体にも重さがあることから,ロッドは長くなればなるほど,オモリに加えられる力がロッド自体のカエリに対しても使われるようになります。ロッドの反発力はよりオモリの押し出しに使われた方が効率がよいことになります。
 硬さの面では,同一番手のロッドで405−425を見ると,材質上の硬さは同じなのですが,長いものほど曲がりやすくなります。405で充分な曲がりを得て飛んでいる状況の中で,同じ番手の425に持ちかえて投げると,ロッドが405以上曲がる感覚はあるものの,飛距離は変わらずということなります。長くするにはより硬い番手にしないと意味がないということになります。しかし,長くすれば,今度は重量が増えますので,振りにくくなります。
 さらに,リール部からトップに至る部分にかかるモーメントやロッドへの空気抵抗を考えてみても,同様に短めのロッドの方が有利となります。特に,これらについては,スウィング・フィシングスタイルのいずれであっても,飛距離を求める投げ方は大きな振り角を必要とすることから,パワーとスピードの損失は極力小さくした方が有利です。

 したがって,効率的な反発,モーメントや空気抵抗等を考えると,長さ均衡点は405あたりになるということです。

 長めのロッドの使用の不適切さは,上記のことから,軽いオモリになればなるほど,顕著になってきます。
 例えば,18gのインランドキャスティングで使われるロッドは405までです。ナマリで5号程度の極めて軽いオモリですから,サーフキャスティングから見れば,かなり柔らかめで長いロッドならば飛びそうなイメージを持ちますが,実際には405で27〜30号負荷のロッドを使っています。インランド用と称して425のキャスティングロッドはありますが,実践結果として425は405に劣っているため,広く使われてはいません。
 これと反対の見方をすれば,体力を含めて30号以上の重いオモリを,硬いロッドで投げことができるならば425の意味もあります。しかし,あくまでもこれは一般的ではありません。

 ただし,投げ方等によっては425の必要性もあると考えます。
 スウィング等によるオモリの大きな展開ではなく,ロッドの「長さ」を使って遠心力を増加させるような投げ方には長いロッドが有利です。具体的には狭角のV字やSTですが,405よりは425の方が有利であり,とりわけSTの場合の上限はこれよりも少々長いかも知れません。

 ロッドの長さは,パワー,スピード,そしてこれらに伴う損失との均衡点を考えて選ばれるべきものなのです。

 これは,遠投のための「長さ考」であり,425ロッド自体を否定するものではありません。釣り場や釣り方を考慮すれば,当然その有用性はあります。