サンダウナー・ハテラス長期テスト

前提
 ロッド選びは,数回試投することはあっても,基本的には店頭で素振りする程度で決めてしまうものである。遠投用投げ竿選びの本質は本来飛距離であるはずなのだが,それは購入してからでないと確かめられない。しかも,ある程度投げ込まないと(体になじまないと)ロッドが持つ性能を引き出せないことが多い。

 今回は,コンベンショナルなロッドであるハテラスと新たな継ぎシステムを有するサンダウナーを長期間の使用のもとに比較しながら,短期的では分かりにくいそれぞれの真の能力を探ることとする。
 また,参考ロッドとしてキススペ405AXセンシティブを使用した。
<スペック>
  仕舞p 自重g G無しg 先径o 元径o 錘負荷
サンダウナー33-405S 164 585 448 3.2 20.5 27〜35
ハテラス33-405S 142 375 3.2 22.5 27〜35
キススペ405AX S穂先  143 410 3.3 22.2 30〜40 
  • いずれのロッドも,ガイドはローライダー6個付けとした。6個付けにした理由は特段無い。7個では抵抗が気になる程度の理由による。
  • スペック上ではキススペAXがもっとも硬い値を示しているが,この3本は,実投感覚においてほぼ同様の硬さとなっている。

重さ・重量感
 カタログスペックによれば,ハテラス<キススペ<サンダウナーの順に重くなっている。
 当然ながら,先軽感については,#3を重くしている分,サンダウナーが他を圧倒している。この先軽感は今までのロッドでは得られなかったものであり,サビキを主体とする実釣者にはロッドの扱い易さから好意的に受け止められるものと思われる。

 サンダウナーは「バランス重視」の観点から,かなりの重量感となっている。そもそもこのバランスが何を目的に考えられたのかが問題となる。単にバランスを考えるならば,ハテラス,キススペもロッドエンドにバランサーを仕組むことができるから,サンダウナーのように#3全体を重くする必要はない。
 これは,#2−#3が逆継ぎになっていることから,#3は細身にせざるを得ず,#3の強度を確保させるために,ある程度の肉厚が必要とされたに過ぎないものであろうが,コンベンショナルなロッドとは明らな差があり,持った瞬間に違和感を感じざるを得ない。

 バランスはサンダウナー,軽さはハテラスと結論づけられそうだが,だからといってハテラスのバランスが悪いということには決してならない。ハテラスはあくまでも「普通」のロッドであるが,サンダウナーのウエイト上のバランスが突出しているにすぎないからである。次元の異なるいわゆるトータルバランスでは,ハテラスが優れているといっても何ら差し支えないものと考える。


曲がり・硬さ
 「前提」にも記したが,この3本の硬さはほぼ同様である。細かく見れば,わずかな差であるがその硬さはハテラス>キススペ>サンダウナー順となっている。

 ハテラスの軽さは素晴らしいものがあり,キススペAXよりも軽くしかも若干であるが硬めなのだからなおさらである。
 ハテラス,サンダウナーの素材は基本的には同じであると思われるが,キススペはこれらとは少々異なる。キススペは明らかにカエリが素早い。カエリが早ければ良いというわけではなく,大抵の場合,投げづらくさせてしまう。キススペはそのギリギリの性質である。
 このため,ある程度のしなやかさを必要とするの一般的であり,ハテラス,サンダウナーはこの考えに沿っているといえよう。なお,S社のスピンパワーSCシリーズもキススペとは異なり若干のしなやかを有している。

 ハテラス,サンダウナーの#1に関しては全く同一のものである。取り替えて投げてみても何ら違和感を感じない。この#1は遠投用ロッドとしては柔らかめにできているのが特徴的である。遠投用=太く硬い穂先をイメージしがちだが,一般的に投げるに当たっては,先端部が柔らかめの方が投げ易く確度が増すとともに,飛距離も得やすい。これは,先を柔らかめにすることによって,オモリを展開させる段階である程度のタメを造ることができ,#2を曲げやすくするからである。また,先端部の柔らかさは,当然のごとく実釣にも有効に機能するものである。

 しかし,この2本は全体では全く性質の異なるロッドに仕上げられている。
 それは,それぞれの#2の違いよることは明らかである。
 ハテラスはサンダウナーに比べて#2のテーパーがきつくなっている。このため,ハテラスは曲げていくにしたがって,その強さがサンダウナーよりもきつく感じるようになっている。通常のロッドではオモリが完全に載った際,振り込んだ腕にこれ以上曲がらないような強い反発を感じるが,サンダウナーの場合は,曲げていく段階でこれが急にくるようなことはなく漸次的で,全体的に柔らかめに感じる。
 2本のロッドを徐々に曲げていくことを想定すると,最初は同じように曲がるが,#2が曲がる段階にはいると,ハテラスの方が次第に曲がりにくくなるということである。

 このことから,カバーできるオモリ負荷範囲はハテラスは広く,サンダウナーは狭いと言うことになる。同じ33号表記であっても,サンダウナーは15〜25号,一方のハテラスは15〜30号までカバーできてしまうことになる。
 特にハテラスは,軽さや#1の柔らかさ等,スペックからは想像しにくいほど,全体的には硬くしかもしっかりとした振りごたえのあるロッドとなっている。

 様々な海況に対応する観点では,オモリ負荷範囲が広いハテラスは有利であるが,通常の釣行において15〜30号まで取り替えることはまれであり,この点に関し実質的には,必ずしも,サンダウナーが不利になるということにはならないだろう。
 それよりも,サンダウナーの漸次的な曲がり方は,コントロール性を高くするメリットがある。ロッドにオモリを載せやすく,多少ずれてもロッドがカバーしてくれて,平均的して飛距離を得ることができるものと思われる。
 なお,キススペはハテラス,サンダウナーの間に位置し,どちらかといえばハテラス寄りとなっている。


投てき感・飛距離
 サンダウナーはとにかく投げやすく感じる。これは上述の先軽感が大きく影響しているからに他ならない。確かに重さを感じるロッドではあるが,少なくとも振り抜くことに関しは,このようなラクな感覚を受けるロッドはない。

 しかし,ちょっとした落とし穴がここにある。
 漫然として従来の感覚で投げると,期待する距離が得られない。投げやすいから飛距離もいけると思いこんでしまうが,ラインの出同等若しくはそれ以下となってしまう。一部キャスターの間で,前評判と違ってサンダウナーの飛距離に疑問を投げ掛けるコメントが見られるのは,主にこのことが原因となっているのだろう。

 これは#2の漸次的な曲がり方が影響している。
 いわゆる飛んだと言われるような場合を想定してみると,従来型ロッドであるハテラスの場合では,ロッドが大きく曲がった際に腕にグッとくるような大きな負担を感じるようなときである。一方,サンダウナーでは,同様の振り方においては,このような大きな負担は感じにくい。もう少し先まで曲げ代が残っているのである。つまり,ロッド自体はまだ曲げられる状態なのだが,身体の動きとしてはロッドを曲げ終わってしまっており,充分な反発を得られないことになっているのである。

 サンダウナーは#2の曲がり代が通常タイプよりも大きいことを想定し,少々深く構えて,しかも早めにパワーをかけることをすれば,大きく#2を曲げることができることになる。ハテラスでこのような投げ方をすると,腕に負担がかかりすぎて,耐えきれず右に抜けてしまうことになるのだが,サンダウナーでは腕にグッとくる時点が遅れることに加え,曲がりも漸次的であることから,コントロールが大幅に狂うことはなく,よりロッドを曲げられることになる。

 具体的な投げ方で見れば,瞬間的に力を加えるようなセイフティーや狭角のV字などではサンダウナーは扱いにくい。その一方で,回転やスウィング投法など思い切った深いロッド展開をとる投げ方では,充分その能力を発揮することはできる。

 「サンダウナーは実釣重視」とのコンセプトと言われるが,上述のことからキャスティング競技に不向きロッドでは決してない。サンダウナーにあった投げ方をすれば確度が高く,かつハテラス同等以上の飛距離を得ることができるものと考える。
 キススペの飛距離・投げ易さも付け加えよう。「ハテラスと同じ」と思う。


まとめ
 ハテラス,サンダウナーは材質的にはほぼ同じだと思われるが,何よりも継ぎシステムが硬さ,感触に大きな違いを生じさせている。

 サンダウナーはこれまでのコンセプトとは大きな違いがあることから,コンベンショナルなロッドで身に付いた投げ方をそのまま使うことでは,ロッドの持つ本来の性能を引き出しにくい。ある程度の調整が必要となろうが,調整がつけば(慣れれば),極めて振りやすいロッドであり,安定した飛距離が得られるものと考える。

 残念ながら,絶対的な飛距離ではハテラスとの優劣は付けにくい。
 逆説的に見れば,ハテラス自体の能力がかなり高いとの見方もできる。このような意味で,本来ハテラスは高い評価が与えられるべきロッドであり,サンダウナーがあるとしても,従前型ロッドを好むフリークにとっては,ハテラスの方がより実践的に扱えるものと思われる。サンダウナーの登場によって,ハテラスの良さが引き出されたともいえる。(ハテラスとサンダウナーの比較は面白みはあるが,ハテラスとキススペでは大きな違いを見いだせない。軽く,ある程度硬く,飛距離に差がないのだから。)

 サンダウナーが発売されてまもなく1年となろうとしているが,キャスティング大会での使用者は依然としてマイナーである。これは,上述のとおり,これまでの投げ方そのままでは,その能力を発揮できないことからによるものと思われる。絶対的な飛距離がわずかでも上回っているという確証が得られれば,多少のリスクを負っても新たな者にトライするのだが,そこまでは至っていない。

 一方,ハテラスはここのところかなり使用者が増えてきている。これは,昨年までハテラスのストリップは425のみであったが,新たに405タイプが加わったことでユーザーの扱いやすいロッドとなったことが主な原因と思われる。(425自体も悪くはないのだが,長尺でよほどの体力がなければ使いこなせない。425を購入しても振り切れない理由から,大抵の者がバット部をカットして対応していた)もちろん,RYOBIが撤退したこともある程度影響はあるだろう。

 おわりに,このインプレッションは,メーカーサイドの設計思想とは異なる表現となっているかも知れない。あくまでも独りよがりな個人的見解であることをご承知いただきたい。


おまけ サンダウナーHスペック
 2002年のダイワ投げ竿ラインナップにサンダウナーハードスペックが加わった。「サンダウナーは良いが重すぎる」と考えていた者には朗報である。
 基本形は「とにかく軽くて,硬く,カエリが速い」。それもノーマルサンダウナーを知る者にとっては驚異的とも思えるものである。
 ハードスペックの名のとおり,より硬いものとしてリリースされているが,残念ながらこれにより明らかにノーマル35−405は消え去る運命となってしまいそうである。
 硬くなったとはいえ大幅な軽量化が図られた訳だから,サンダウナーの35クラスを買おうとする者は必ずと言っていいほどハードスペックを選ぶはずである。
 ダイワは,ノーマルを殺さないでハードスペックを生かす道を選んだものと思われるが,大きな価格差を持たない限り,外見上ほとんど同じロッドは消費者にとって差別化を意識させるのは困難である。売り手である販売店でも同様に考えることであろう。
 ハードスペックはおそらく売れるであろう。これに伴って,35よりも下のグレードもハードスペック化して欲しいとの要望も当然出てくる。(どうせなら,すぺてのサンダウナーをHスペック化してくれとの大合唱が聞こえそうだ。)
 Hスペックの長期テストは行っていないが(当方の資金的余裕がない。テストを行わないが適切かもしれない),40は第6種目用で,35は第4種でもOKといったところなのだろうが,既購入者のロッドから判断すると,Hスペックは第4種目では少々硬いだろう。
 ダイワのラインナップでキャスティング適応を考えると,第6種目(サンダウナーH40−405,ハテラス40−425,35−405),第5種目(ハテラス35−405,サンダウナー35,H35),第4種目(ハテラス33−405,サンダウナー33,35)といったところではなかろうか。