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何で私が釣りインストラクター? 2004年2月14日 |
K&Tコーナーですが,Kは創作文学?,Tはエッセイと色分けされてきたようです。こうなると分かっていれば,黒沼芳太朗コーナーなどとして,仮想人物作り上げておけば良かったかも知れません。 でも,ちょっと無理があるかな。同一人物が書いたモノとは思われないでしょうね。 それでは本題の釣りインストラクターについて。 実釣の方は充分ご承知のことと思いますが,キャスティングしかしない人のために このインストラクターについて,ご説明しましょう。 「釣りの指導者」なる者をとおして,水産資源の保護培養はもちろんのこと,釣り人と漁業者との協調推進またはトラブル解消,事故の防止,水域を中心とした環境の保全,釣りの健全な発展を図ろうとするための制度です。 農水省認可の釣りの公益法人である(社)全国釣り団体協議会が事業主体となって「公認釣りインストラクター」を進めています。 H15.3末現在,全国で2400名ものインストラクターがいます。 具体的な活動は @一般の釣り人の対し,釣りの技術,釣り場でのマナーおよびルール,水産資源の保護意識の向上,環境保全,釣り場での安全等について具体的に指導する。 A各種釣り大会等により開催される講習会の講師として出席の要請があったときは,積極的に対応する。 B地方公共団体における遊漁関係事業の実施に必要であると要請があったときは,アドバイスするなど積極的に対応する。 ということになっています。 インストラクター講習会は多岐にわたる勉強をします。 漁業関係法令,気象・海象・事故及び危険防止,釣り総論,心構え,用具用品,海・内水面別知識(ルアー含む)など。そして,試験もあって。そこでは,これら講習会の内容をチェックする筆記試験,小論文,面接が行われます。 釣りインストラクターの資格があるからといって儲かるわけではなく,若干のお金(交通費+宿泊費まで加えるとかなり額になる)がかかるものですから,事前にインストラクターになることへの自覚は必須条件です。その心構えはできていましたが,インストラクター講習会を受けることは,自分にとって「釣り」というものを再考させる良い機会でもありました。 ここでちょっと,講習科目である,釣り総論・インストラクターの心得について,教科書にあることと,これらに対する私見を横槍的に述べてみたいと思います。 ちなみに,「○」の文面は限りなく試験問題に近いですから,インストラクターに興味がある方は覚えておくとオトクです。 ○釣りインストラクターは,釣り並びにそれを取り巻く自然環境の理解者であり,水産資源保護,自然環境保全等の知識をもって,節度とマナーの実践者,指導者でなければならない。 →至極当然ですね。インストラクターでなくとも上記のことは意識しなければなりません。「キャスティングばかりやっていれば,資源保護そのものだ」などと訳の分からぬことを言うつもりはありませんけれど。 ○「漁」とは魚を獲り,その魚を生活の糧にすることをいい,「釣り」とは魚を釣ることを,精神と体の技として楽しむ行為をいう。したがって,より多くの魚を獲ることが目的ではなく,釣果に至る過程,どのようにして釣ったかに目的の多くがある。 →釣り大会に出た人がこのようにいったら,それは負けを意味します。一般的に,思うように釣果が得られなかった際に使う言葉。 ○我が国の釣り技術に関する文献は,享保年間(18世紀)の「何羨録(かせんろく)」が最古のもの。欧米の釣りに関する文献は,17世紀半ばに出版された「釣魚大全」(英国・アイザックウォルトン著)が最初とされている。釣魚大全は世界の釣り人から「釣りのバイブル」として親しまれている。釣魚大全の最終章に記された言葉"Study to be quite."「静かに生きることを学べ」は全ての釣り人が心にとめておくべき印象的な言葉である。 →何羨録は知りませんでした。釣魚大全は有名です。ただし,これで釣りの何たるかを知ることはできないでしょう。小説のような書きぶりだから。"Study to be quite."は難しく考えず,素直に訳して「静かに勉強せい」とするのが無難だと思います。もう少し踏み込むならば「釣り場に行ったらご託を並べず黙して釣りに集中すべし」だと思うのですけれど。 ○欧米においては,釣りが近代スポーツの先駆けとして位置づけられ,一方,我が国では長く「道楽」の域を出ない扱いを受けてきた。 →今でも道楽でしょ。女房に言わせればスポーツキャスティングは何の役にも立たない遊びだそうですが。 ○日本の釣りの対象魚は約130種といわれており,我が国は世界に類を見ない一大釣り文明国である。 →そうだと思います。タックルも世界をリードしていますね。でも,失われた10年のもと,釣り具メーカーが減ってしまったのは残念です。選択肢が減ってしまうのはさびしい限り。 ○現在は,釣果中心の日本型の釣りと欧米型のスポーツフィッシングとの両者の考え方が,相互に影響しあう過渡的環境にあり,我が国の状況に応じた釣りに対する姿勢と,ルールの中に自然保護を盛り込んだ内容が含まれていくことが,将来釣りの世界をより奥の深いものとすると考えられる。 →「釣る」という行為だけで見れば,このような答えになるでしょう。「釣り上げた魚を食する」という日本人にとってごく普通に受け入れられる習慣を盛り込めば,食文化まで話を広げることができる。加えて,現在のストレス社会において,釣りをとおした自然との対話はメンタルヘルスケアをもカバーするものであるとするならば,釣りは真に奥深きものとなると思います。 ○戦後,ルアーやフライフィッシングなどの欧米の釣りが加わることにより同時に,欧米の釣りに対する考え方の影響も強く受けることになった。その代表が「キャッチ&リリース」。欧米の科学的・合理主義的考えに基づく,エコロジー,エコサイクル学上から,必要以上の捕獲を慎み,魚を再放流し,自然のサイクルを破壊しない考え方の現れである。 →確かに欧米のやり方は格好いいです。でも,繰り返しになりますが,彼らは食することを習慣にしない人達だから,結果的にそうなったに過ぎないと考えるべきだと思います。BSEに関して全頭検査を拒む彼らが科学的と言えるかどうか。自らが作ったルールをデファクトスタンダードにしてしまう人たちと我々は違うのです。 ○タグ&リリースは魚の生体・行動を研究する上では効果的な方法である。全釣り協としては,この動きに大きな関心を寄せている。 →各県の水産試験場や水産研究センターは,これまで漁業のためだけにありましたが,これからは違います。遊魚も一大産業なのですから。これら研究機関が正々堂々と研究課題として取り組めば,遊魚の釣りは大変革となると思います。 ところで, 「ほとんど実釣をしないTにそんなのを取る資格があるのか?意味があるのか?」 おっしゃるとおり。多くのキャスティング仲間の声が聞こえてきそうです。 本当に「陸上のキャスティングだけ」だとするならば,何の意味も持たないでしょう。 もともと私にとってキャスティングとは,投げ釣りを入り口にして始めたのですから,軸足は投げ釣りあることには変わりがありません。まったく,実釣をしないわけではなく,今は釣りとキャスティングがあれば,キャスティングを優先するという姿勢です。 釣りをするとしても,極端な釣果を求めるようなことはしません。その際には飛距離を意識します。近場の20pのサカナと遠投の20pのサカナならば遠投域のものを選びます。仕事効率から考えれば意味のないことですが,自分が到達できる最も遠いところにいるサカナを捕らえたいという気持ちが強くあります。 このような姿勢で臨むのですから,釣果は知れたものになるのは当然です。 ただし,投げ釣りにとって,飛距離は一番大切なファクターです。充分な遠投力を有することは,釣果向上にとって,極めて大切なことになります。 私は,投げるのは上手であっても,釣ることは下手なのかも知れません。釣ることへの執着心が沸いてくれば,今の飛距離を持ってして,それなりの釣果が得られると思っています。 今後,歳をとるにつれて,絶対飛距離への執着心は薄れてくるでしょう。いわゆる枯れた状態に移行してくれば,「釣る」ことへの意識も高まり,少なくとも今よりは上手に「釣る」ことができるのではないかと考えています。 だからといって,数を釣り上げることへの執着はしません。そのときの年齢で得られる最高飛距離を持って,魚とコンタクトしたいと思います。 魚族との健全な関係を志向するインストラクターにとっては,多獲に陥らないことは大切な要件とされています。この点からして,インストラクターは私にぴったりかも知れません。 さて,インストラクターになってどうするか? JOFIのアウトラインに沿った活動を行うことはもちろんですが,私としては,キャスティング分野のインストラクターとして活動したいと思います。 メインは,HPの充実でしょうか。見解の相違もあるかとは思いますが,これまでのFAQ!?だけだって,インストラクターの価値はあるのかなぁと自負しています。(※メールでのQAを加えれば,FAQは今の3倍以上はありますし。) そして,実際のキャスティング大会では,「理論は説くが,あえて勝とうとしない。負けても気にならない。」これを目標にしましょうか。すごく気が楽になるでしょうね。 このように思えるならば,インストラクター取得の意味あり,というものです。 でも, インストラクターよりも大事な資格。それは,トップキャスターズの出場権。 インストラクターよりも名誉なこと。それは,トップキャスターズでの優勝。 勝てる限りは勝つ。できる限り勝ちに行く釣りインストラクターが格好いいと思うのであります。 |