練習の話し?サケの話し?ちょっとインストラクター的に 2005年11月6日
 ここのところ試合には積極的に出場していませんが,練習については可能な範囲で極力行うようにしています。今日だって,彼方でトップキャスターズが開催されているにもかかわらず,練習です。(※「練習できるくらいならば試合に出ればいいじゃん」と言われてしまいますが,まぁまぁまぁ,すみません。)

 私の場合,練習の基本形は投げ込みです。グラウンドは試合開始直前の調整時に使う程度で,通常は川が練習場です。「川に向かって投げる」ということ。

 海の場合もそうですが,川の場合であっても,声をかけられることは多いんです。
 「今頃は何が釣れるんですかねぇ?」「何狙ってんの?」「釣れた?」等々。
 これに答えることは結構つらいものがありますが,極力正直に
 「あのぅ,釣りやってるんじゃなくて,練習です。キャスティングの。」
 分かってくれればそこから話が展開することもありますが,キャスティング競技を知らない=聞いたことがない人にとっては,「何言い訳してんだ!」てなことになってしまいます。とはいっても,この範囲ならば何ら問題ありません。
 ところが,茨城に住む者として,今の時期,内水面の漁協の人に問いかけられると,話しは困った状況に進展してしまうこともあり得るのです。千葉から西の太平洋側の人達にとっては理解しがたいことになるでしょうが。

 茨城県は,サケが河川に戻ってくる南限といわれています。生産量・品質いずれも,福島以北の道県に比べるべくもないことですが,親潮と黒潮が交錯する海域ゆえにサケの回帰を見ることができるということです。もっと南の利根川や神奈川の河川にもサケが迷いこともありますが,人工ふ化放流を行っている河川という前提条件のもとで,ある程度の群をもって茨城県より南に下ることはありません。

 サケのように,川で生まれて海に下り成長後,再び産卵のために川に戻ってくる魚を溯河性魚類といいますが,この手の魚類は水産資源保護法により,原則として河川での捕獲が認められていません。人工ふ化放流に供することを条件に河川の漁協に対して特別採捕が認められているにすぎません。

 しかしですねぇ,7〜80センチを超える見事な魚体が,群れをなして川を昇ってくる姿を見ると,心ない人はそれを密かに捕まえてしまおうなどと考えたくなってしまうらしいのです。人目のつかない夜陰に乗じて,通称ギャング針といわれる3本フックのデカイいかり針で,引っかけるのです。
 もちろんこれは明らかな法律違反であり密漁とされます。見つかれば警察のお世話になる大罪になるわけです。

 ちょっと道がそれますけれど,密漁者が使う道具は,重い魚体を一気に引っこ抜くために,ロッドの#1はセンシティブといえるようなものではなくパワー穂先で,ラインは新素材の6号以上という,ハード仕様。何となく遠投系に近いような気がしないでもありません。

 例によって,川での投げ込みを行うと,内水面漁協の人達に問いかけられる。
 純粋な練習なのですが,ロッドはごつい。太い力糸。投げた後,ガンガン巻き取る。彼らには不審に写るのでしょう。
 何の練習?投げの練習?ならば川でやる必要は無いではないか。
 何回も何回も投げる?何かを引っかけようとしているんじゃない?

 なんと言われようと大丈夫です。キャスティング用15号シンカーに,巻き取り時の抵抗を少なくするための発泡剤を仕込んで白のビニールテープで巻いた仕様。引っかけようのフックなど一切ついていませんから,違法な引っかけに当たらないし,加えて「釣り」をしていないわけですから遊漁料も支払う必要がありません。
 私の場合,タックルボックスにはキャスティング用の道具はあっても釣り針などの実釣用の道具類は全く入っていないので,持ち物検査をされても大丈夫です。
 
でも,漁協の人達にとっては,今ひとつ気に入らないところがあるみたいです。彼らには密漁者の使うごついタックルと同じに見えるらしいのですから。
 これには,語気強く反論したくなります。サケの密漁に,高級な白や,赤,青,黒の投げロッドなんて使うわけ無いじゃありませんか。サケなんか欲しくないの。必要なのは飛距離なのですから。
 「リールで6〜7万円くらいします。ロッドは鮎竿ほど高くはないけれど10〜20万円くらいかなぁ。」と標準小売価格を言わせていただいて,若干の驚きを与えたりします。

 いずれにせよ,当方(投法ではないですね)は軋轢は避けたいと考える姿勢ですので,丁寧な対応を心がけているところです。釣りインストラクターの講義の際に教わりましたから。
 遊漁者のリーダーたる釣りインストラクターは漁業関係法令に通じていなくてはならない。だからといって,法を盾にむやみに漁業者と争うことは得策ではない。遊漁者が正しいとしても釣りがしにくくなる。何よりも大切なのは相互理解であると。

 赤いゴムキャップがついた15号キャスティングシンカーに白のビニールテープ。これ,なんとなくレッドヘッドのプラグに似てませんか。少なくとも魚にはルアーに似てる?=ベイトフィッシュに似てるらしくて,練習時,過去何回か「アタリ」を感じたことがあります。どうもそれはスズキらしい。
 こんな時は,キャスティングシンカーにフック付けたくなってしまいますね。可能性は低いですが,練習しながらスズキ釣りができるなんて,最高じゃないですか。そんなことをすれば,誤解されかねないので,もちろん,そのようなことはしていませんが。
 ただし,このような方法でスズキを釣るとしても遊漁料を取られる心配はまず無いと思います。

 漁協が釣り人から遊漁料をもらうには条件があります。第5種共同漁業権の対象魚種として,アユ,コイ,フナなど具体的な魚種名をあげて指定しておかなくてはなりません。内水面の漁業は資源の管理を適切にしないと,海域に比べて枯渇しやすい性質があり,そのため,第5種共同漁業権の対象魚種は,漁協に対し増殖義務が課され,その対価として,遊漁者に遊漁料と称し,料金を徴収できるシステムになっています。
 この場合の増殖義務とは種苗放流だけではなく,河川耕耘などによる産卵場や保育場造成なども含まれるので注意が必要です。
 例えば川でのハゼ釣り。ハゼの種苗放流なんて聞いたことがないから,ハゼ釣りで遊漁料を取られるなんてことは無いなどと早合点しないことです。ハゼの住みやすい場所のために澪を造るなんてこともありますから,この場合はハゼ種苗を放流しなくても,増殖行為がなされたとされます。

 話しをスズキに戻しましょう。スズキは基本的には海にいるものですが,完全な淡水域は別として,海水と淡水が混ざり合う汽水域のところまで生息域が広がっています。
 基本的に海に住むスズキであり,このスズキに関しては汽水域で増殖行為がなされているところはほとんど無いと思います。ですから,仮に遊漁料無しでスズキを釣ったとしても誰にとがめられる訳ではありません。これ,結構大事なことです。

 キャスティングから道がそれたついでに,もう少々,川の遊漁料について言っちゃうと,河口湖のように特別な場合を除いて,通常,河川においてブラックバスが共同漁業権魚種に入っていることはありません。ということは川でブラックバス釣りをやっていて遊漁料を支払う必要は無いと言うこと。「ブラックバスは漁業権魚種を食べてしまう魚だから,間接的に遊漁料を支払うべきだ」との言い訳は全く通用しません。

 話しが二転三転しましたが,いずれにしましてもキャスティングの練習にはサケの密漁や遊漁料に全く関わり合いがないということであります。

 内水面の漁協の方々,私どもは,河川という水面でボートを漕いでいるようなスポーツ人間と同じなのでありますので,ご心配は無用であります。

 漁協の人とはバッティングしないのですが,最近はバスボート,ジェットスキーの輩とバッティングする傾向にあります。特に後者の暴走行為には,まいります。
 私たち以上に,漁協の人達のほうが困っているようです。

 水面を利用する者として,安全で楽しく,しかも生業の方に迷惑がかからないような使い方をしなくてはいけませんね。
 内水面の漁協については,別の視点から物申したいところがありますが,それは次回にということで。