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シンカーの無鉛化を急がなくてはならない 2008年2月20日 | ||||
オモリ。投げ釣りだけではなく,釣りには必須アイテムの一つとなっています。 材質はナマリPbです。 ここでちょっと疑問。ナマリとはどんなもの。安全なものなのでしょうか。 ナマリは軟らかくて加工しやすいので,ローマ帝国時代にはワインを飲むジョッキとして使われており,日本でも家庭配水用水道管として昭和まで鉛管として多用されていました。安価で比重が大きいので、釣りのオモリとして現在も最もよく使われています。 ナマリは急性毒としてはあまり強くないのですが,少量ずつの摂取でも体内に蓄積されれば慢性中毒を起こします。鉛に汚染された土壌で育った植物,それを食べた草食動物の肉や魚を食べた場合も発生。最終的には食物連鎖の頂点に立つ人間にも中毒が広がるというわけで,人体や水中の環境への影響が懸念されるナマリの使用は,世界的に制限される方向に向かっています。 時代の流れは,ナマリの使用をやめる,脱鉛化,ナマリフリー化であります。 脱鉛化が進んでいるとは言い難い「釣り」ではありますが,釣り具業界の環境意識への高まりを受け,徐々にではありますがナマリに替わる新たなオモリ素材が製品として見られるようになってきました。 例えば投げ釣りのタングステンシンカーです。この素材の素晴らしいところは比重がナマリよりも大きく体積が3割強も小さくなるというところ。ナマリに比べ空気抵抗が減り飛距離が伸びる優れものです。ナマリよりも環境に優しいものなのですが,硬くて加工が容易ではないこと,高価なことなどにより,ナマリに取って代わるところまでには至ってません。 どーでも良い話を付け加えますと,タングステンよりも比重が大きくて化学的に安定している金属があります。それはプラチナ(※Pt21.45,W19.25,Pb11.34/m3)。ナマリに比べて50%近くも体積が減るので飛距離アップ効果は抜群なのでありますが,けた外れの値段になってしまいます。2月上旬現在でグラム単価6000円+ですから単純計算でプラチナ製27号シンカーは60万円超になります。 サーフ系キャスティング競技においては,実釣を反映してナマリ製のシンカーがレギュレーションで定められてきました。競技用としてワンメイクのシンカーです。 陸上で行われることから実釣のように糸切れしたとしてもシンカーを回収する可能性は高いといえますが,海や川等での練習まで含めて考えると,ナマリシンカーが環境に悪影響を与えていることは否めません。 キャスティング競技においても脱鉛化は避けて通れない道だと考えます。実釣に比べキャスティング競技での脱鉛化は一挙に行うことが可能です。レギュレーションでナマリフリーシンカーを新たなシンカーとして決めてしまえばよろしいのですから。 その素材は何にすべきでしょうか。 一つには,実釣の脱鉛化同様にタングステンを使うことが考えられます。飛距離はナマリよりもアップして夢の250m超えの記録だって期待できます。他方,シンカーの飛行や落下時の安全性を考えてラバーなどの非金属化を導入することです。シンカーの体積は増えて飛距離が落ちることは確実です。 いずれの方向がよろしいでしょうか。 脱鉛化自体はナマリの環境への溶出を止め健康被害を防ぐことですが,キャスティング競技にとって最優先されるべきことは競技上での安全の確保であると考えます。投てき位置でのネット設置,計測時のヘルメット・防護盾利用など,現行シンカーにおいても安全対策は行っていますが,周辺のことまで考えると必ずしも充分とはいえない状況にあります。
シンカーの比重は小さくなるので飛距離減となることは否めませんが,このことは参加者にとって条件はイーブンなので何の問題もありません。競技は,絶対的な飛距離を求めているのではなく,誰が遠くへとばすことができるのかを競うものです。極端な言い方をすれば,飛距離は大会毎の定規によって測られても構わないしポイント制にしても問題ないのです。 もう一歩踏み込んで,ロッドやリールの著しい性能向上によって飛距離220m超えるレベルで優劣が競われるようになってきた状況下では,現行シンカーでは飛びすぎてしまう傾向が見られています。もちろん,実釣ならば飛びすぎることのディメリットは生じないでしょうが,陸上で飛距離を測ることを考えると,より広いグラウンドが求められることになり,昨今の競技グラウンド事情を考慮すると,あえて飛距離は落とすべきことなのだと思います。 実釣の投げ釣り大会についてはメーカー主催のものがありますが,サーフ系のキャスティング大会については協賛していただけても主催・共催となる大会はありません。その理由は,グラウンド+安全面が十分に確保・担保されていないからに過ぎません。ロッド・リールとしての機能を検証・PRするのに絶好の機会であるにもかかわらずです。逆に言えば,条件が整うならばメーカーの冠をつけたキャスティング大会を主催したいということなのです。
投げ釣りにおける脱鉛化を推進し,併せて投てき時の安全性を確保する観点から,競技用キャスティングシンカーのラバー化を進めるべきと考えます。 ナマリは鉛毒の関係から使えなくなるのは時間の問題だと考えます。さらに,投てき時の安全性,グラウンド確保のことを考えれば,ナマリの代替として金属系を陸上で使うのには危なすぎます。特に後者は起きてしまってからは取り返しのつかないことと,強く認識すべきと考えます。 環境と健康と安全をキーワードにすれば,脱鉛化は今日からすぐにでも取り組まなくてはならないことです。これからも長くスポーツとしてこの競技を続けていくために。 Do, or do not. There is no try.−やるか,やらぬか。試してみるなどない。− マスター・ヨーダの言葉は重みがある・・・ <プラチナトップガンの蛇足> クーラーボックスのシンカーホルダーに無造作に指しておくなんてできないし,根掛かりでもしようものならばアクアラングを背負いたくなるでしょう。もっとも,砂や石にこすれるだけでもったいないと思うでしょうし,高切れを考えると投げられないから実用不可といわざるを得ませんね。 ところで,ダイワSBC優勝者の副賞はプラチナ・トップガンにすればいいのに。家族とともに喜びを分かち合うには特製ロッドよりもこちらの方がよろしいのでは?! |