伯爵夫人という名のカメラ

 ZEISS IKON CONTESSA 35

 with ZEISS OPTON TESSER 45mm/F2.8


 ドイツは、ZEISS IKONのカメラで、CONTESSA35という。CONTESSAというのは、
イタリア語で伯爵夫人というそうだ。このカメラの歴史的な経歴については他の
Webサイトでいくらでも見つかると思うので、私が云々する必要もないだろう、
ということで省略。なんといっても半世紀も前のカメラなのだ。
 とにかくデザインが美しいカメラである。左右対称の形状で、ライカの丸っこ
い外観とは異なり、上から見ると12角形の形状は、曲げ部分も実にシャープで
ある。何となくおしとやかな印象のライカに対して、なんに付けても折り目正し
く、ピシピシと目下のものに命令を下すドイツ人の伯爵夫人といった感じがする。
まさに名は体を表すといわんばかりの形状ではないだろうか。
 以前からレチナと並んで、欲しいカメラの一候補であったが、結構高い値段が
付いていてなかなか縁がなかった。所詮庶民は、貴族とは結ばれぬ運命なのかと
あきらめていたのだけれど、偶然にも世界の中古カメラ市(銀座)で比較的安い
ものがいくつか出品されていた。時代とともに民主化が進み、貴族も落ちぶれて
きたのか、庶民にも手の出せるものがあるではないか。などと思いながら、安い
ものを中心に色々見せてもらった。たしかに安いものはそれなりで、必ずどこか
に安い理由がある。10台くらいいろんなお店で見せてもらったがレンズとシャ
ッターはどれも問題ないものばかり。外観と露出計の状態でほぼ値段が決まって
いるといっていい。早い話が、私の出せる金額ではコレクションには向かないが、
実用機としては何ら問題のないものばかりである。そんな中で、どれも今ひとつ
踏み切れずにいたところで、このカメラと出会った。実はこれを見つけたお店は、
一番最初に見せてもらったお店である。ただし、展示してある場所が違ったのだ。
土曜セール品の棚にあったので気が付かなかった。狙っていた価格帯よりワンラ
ンク上の値段の品が、プライスダウンでドンピシャ価格である。多少外観に傷は
あるものの、機能については店長お墨付き。迷うことなく包んでもらった。東ド
イツから亡命した貴族をかくまって、西側へ逃がしてやるような(東京から浜松
であるから文字通り西側であることは間違いない)妙な気持ちで帰りの新幹線に
乗ったのだった。
 持って帰ってしげしげ眺めてみると、外観はあちこち傷があるが、貼り皮など
は綺麗な方である。前蓋に書かれたCONTESSAの文字も読めるし、裏蓋の
made in Germany の押し文字も健在。
 前蓋を開けるとレンズが出てきて、パチンと開ききると、グラグラしていたレ
ンズはがっちりと固定される。この辺は育ちの良さ、もとい、作りの良さがうか
がい知れる。さすが昔のドイツカメラである。
 レンズは亡命者ゆえ、本家のカール・ツァイスを名乗れないため、ツァイス・
オプトンとなっているが、紛れもなくテッサーだ。シャープでコントラストのは
っきりした写りは、カラーでも問題ないTコーティング付である。ホコリもほと
んど無くかなりの美品。
 距離計は、ドレイカイル式(この詳しい説明も他Webサイトを参照して下さ
い)という特殊なものが使われている。これと、テッサーレンズ欲しさにこのカ
メラを買ったようなものである。しかし、ファインダーに結構ホコリがたまって
いる。写りには影響ないものの、気持ちのいいものではないので、トップカバー
をばらして清掃してみました。ファインダーだけでなく、結構内部もホコリがた
まっているみたいだったのでついでにクリーニングしてあげた。
 露出計も付いているけどさすがに感度は落ちているよう、2段ほどずらせば問
題無さそうだ。
 これで、彼女はコンテッサの名前とは裏腹に、わたしにこき使われることにな
るのである。いやまてよ、綺麗にしてやったり、外に連れて行ってやったりと・・・
こき使われているのは私の方?
                                          2004年2月入手 

作例

45mm/F2.8 F8 1/50
AGFA VISTA 100
45mm/F2.8 F5.6 1/250
AGFA VISTA 100
全般的にテッサーだけあってコントラストが高い。奥山しだれ梅庭園の他のカメラの写真と比較してみてください。
といっても、小さいので判らないかな?